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同世代の天才

第109話 同世代の天才

合同訓練が終わった。

王国騎士団。

聖騎士団。

魔王軍。

そして冒険者たち。

それぞれが訓練場の端へ移動し、装備を整え始める。

僕も《明星》を腰へ戻した。

「ソル」

聞き覚えのある声。

振り返る。

カイルが立っていた。

長槍を肩に担いでいる。

「……覚えてたんだ」

「当たり前だろ」

「忘れてくれててもよかったのに」

「なんでだよ」

カイルが笑う。

「約束しただろ。一戦」

「分かったよ」

僕も笑った。

正直。

僕も戦ってみたかった。

合同訓練の中で、何度もカイルを見ていた。

強い。

それは分かっていた。

でも。

どれくらい強いのか。

まだ分からない。

「やるか」

「うん」

僕たちは訓練場の中央へ向かった。

その様子に気づいたのか、周囲から視線が集まり始める。

「始めるみたいだな」

ガレス。

その隣にはレオンハルト。

グレンも少し離れた場所からこちらを見ている。

そして。

「ほう」

ベラ。

楽しそう。

「本当にやるのですね」

レオンハルトが言う。

「止めるか?」

ガレスが聞く。

「いえ」

レオンハルトは首を振った。

「私も興味があります」

「俺もだ」

ガレスが腕を組む。

「カイルって若造がどこまでやるのか」

「逆じゃろ」

ベラが笑う。

「カイルが?」

「うむ」

「どういう意味だ?」

「見ておれば分かる」

ベラが僕を見る。

「ソルがどこまで食らいつけるかじゃ」

「……そこまでか?」

ガレスの表情が変わった。

グレンは何も言わない。

訓練場中央。

僕は《明星》を抜く。

カイルも長槍を構えた。

「ルールは?」

僕が聞く。

「どっちかが降参するまで」

「危ないでしょ」

「じゃあ止められるまで」

「もっと危ないよ」

「大丈夫だって」

何が大丈夫なんだ。

でも。

カイルの目。

完全に戦う目になっている。

僕も《明星》を構えた。

まだ。

《星装》は使わない。

まずは。

剣だけ。

「準備いい?」

「ああ」

少し離れた場所からガレスが声を上げる。

「始め!」

僕は地面を蹴った。

一気に距離を詰める。

カイル。

動かない。

(まずは――)

右から。

《明星》を振る。

その瞬間。

槍。

「っ!」

ガンッ!

剣が弾かれる。

すぐに踏み込む。

左。

槍が来る。

受ける。

重い。

「くっ!」

押し返される。

なら。

懐。

槍の弱点は近距離。

一気に入れば――

「甘い」

「え?」

石突。

腹。

「ぐっ!」

ドンッ!

身体が浮いた。

地面。

転がる。

「ソル!?」

誰かの声。

すぐに起きる。

「大丈夫!」

カイル。

待っている。

追撃してこない。

「……」

強い。

もう一度。

踏み込む。

斬る。

弾かれる。

踏み込む。

槍。

避ける。

次。

もう来てる。

「っ!」

剣で受ける。

ガンッ!

身体が後ろへ流される。

そこへ。

槍。

横薙ぎ。

「うわっ!」

ギリギリ。

屈む。

頭上を槍が通過。

今。

踏み込む。

「そこ」

「――!」

石突。

胸。

ドンッ!

また。

吹き飛ばされた。

「……嘘だろ」

ガレスが呟く。

レオンハルトも黙っている。

僕は立ち上がった。

カイルは。

ほとんど。

動いていない。

僕が攻めて。

僕が弾かれて。

僕が吹き飛ばされている。

「ソル」

カイルが言う。

「何?」

「星装は?」

「……」

「使わないの?」

挑発。

じゃない。

純粋に。

聞いている。

「まだ」

「そう」

カイルが槍を構え直す。

「じゃあ」

一拍。

「使わせる」

カイルが消えた。

「――!」

初めて。

カイルから来た。

速い。

槍。

顔。

避ける。

次。

腹。

剣で弾く。

上。

横。

突き。

「っ……!」

速い。

全部。

繋がっている。

一撃を防いだ瞬間には次が来る。

剣を振る暇がない。

「くっ!」

槍を受ける。

次。

石突。

肩。

ドンッ!

「ぐっ!」

膝。

つきそうになる。

カイルが踏み込む。

槍。

真正面。

「――《星装》!」

黄金。

身体の六部位に星が灯る。

右腕。

左腕。

右脚。

左脚。

胴体。

頭部。

ガンッ!!

《明星》で槍を弾いた。

カイル。

初めて。

一歩下がる。

「……」

そして。

笑った。

「それだ」

僕は息を吐く。

「やっぱり」

《明星》を構える。

「強いね」

「お前もな」

地面。

蹴る。

「《彗星》!」

爆発的な踏み込み。

一瞬で懐へ。

《明星》。

振る。

カイル。

槍。

ガンッ!!

受けた。

でも。

今度は押せる。

「っ!」

カイルが下がる。

追う。

右。

左。

剣。

槍。

火花。

「《流転》」

星。

右脚。

踏み込む。

左脚。

軌道変更。

右腕。

斬撃。

「っ!」

カイルが槍で受ける。

一歩。

下がる。

「いいな」

笑ってる。

僕も。

少し笑う。

「まだ!」

《流星》。

星を《明星》へ。

踏み込み。

斬る。

ガァン!!

衝撃。

カイルが数歩後退。

「……重っ」

初めて。

カイルの表情が変わった。

いける。

そう。

思った。

次の瞬間。

「でも」

カイルの足が止まる。

「分かった」

「え?」

槍。

消えた。

「っ!?」

肩。

衝撃。

次。

脚。

次。

腹。

「ぐっ!」

連続。

速い。

いや。

違う。

僕が動く場所。

そこに。

槍がある。

《彗星》。

止められる。

《流転》。

読まれる。

右へ。

槍。

左へ。

槍。

前。

槍。

入れない。

「……」

僕は距離を取る。

カイル。

追ってこない。

槍の間合い。

その中心。

立っている。

「何あれ」

僕が呟く。

速いだけじゃない。

僕が動いた後に対応してるんじゃない。

その前。

僕が次に行く場所へ。

槍を置いている。

「……すご」

思わず。

笑った。

通常状態では。

何もできなかった。

《星装》を纏って。

ようやく戦えるようになった。

でも。

時間が経つほど。

また。

カイルが押し始めた。

「……」

一度。

大きく距離を取る。

カイルも止まる。

僕は。

息を吐いた。

一呼吸。

目を閉じる。

「ソル?」

ベラの声。

聞こえる。

僕は《星装》を解いた。

黄金の星が消える。

「……?」

ガレス。

眉をひそめる。

「何してる?」

カイルも不思議そうに僕を見る。

「終わり?」

「いや」

僕は首を振る。

「ちょっと」

一拍。

「試したい」

息を吸う。

星。

感じる。

今まで。

身体に纏っていた星。

右腕。

一つ。

左腕。

一つ。

右脚。

左脚。

胴体。

頭部。

それで。

十分だった。

それ以上の星を使う時は。

《明星》へ集めた。

《星域》として外へ広げた。

誰かへ与えた。

でも。

ずっと。

思っていた。

なんで。

身体には。

これだけなんだろう。

《明星》には。

もっと纏わせられる。

外にも。

もっと出せる。

なら。

身体だって。

「……できる」

僕は。

目を開く。

「《星装》」

黄金。

右腕。

星。

左腕。

星。

両脚。

胴体。

頭部。

いつもの。

《星装》。

そして。

終わらない。

「……え?」

ガレス。

声。

さらに。

星。

一つ。

二つ。

三つ。

黄金の星々が。

ソルの周囲へ現れる。

それが。

身体へ。

吸い寄せられていく。

右腕。

左腕。

両脚。

胴体。

頭部。

六つの星を中心に。

さらに。

星々。

纏う。

「……」

レオンハルト。

目を見開く。

グレンも。

初めて表情を変えた。

ベラ。

黙っている。

「おい」

ガレスが言う。

「星装って」

一拍。

「あんなだったか?」

「いや」

ベラが答える。

「違う」

黄金。

濃くなる。

でも。

暴れていない。

星。

一つ一つ。

ソルの身体を巡っている。

「増やしたのか?」

ガレス。

聞く。

ベラ。

首を振る。

「元より」

一拍。

「星はあった」

「……」

「ソルが」

ベラの目が細くなる。

「纏える量を」

一拍。

「増やしたのじゃ」

カイル。

槍を構える。

笑う。

「それ」

一拍。

「さっきと違うな」

「うん」

僕は自分の手を見る。

星。

巡っている。

重くない。

むしろ。

軽い。

身体の全部が。

今までより。

はっきり分かる。

「僕も」

《明星》を構える。

「初めて使う」

「最高」

カイルが笑った。

踏み込む。

槍。

僕は。

動く。

ドンッ!!

「――!?」

カイル。

目。

見開く。

僕自身も。

驚いた。

速い。

でも。

見える。

《彗星》。

一瞬。

カイルの懐。

「っ!」

槍。

間に合う。

ガンッ!!

カイル。

吹き飛ぶ。

「うおっ!?」

着地。

滑る。

止まる。

「……はは」

笑った。

「何だよ、それ」

僕は。

もう。

動いている。

《流転》。

星々。

脚。

腕。

胴体。

今までとは。

量が違う。

カイル。

槍。

僕。

避ける。

横。

《明星》。

ガンッ!

カイル。

受ける。

次。

《彗星》。

背後。

「っ!」

カイル。

振り返る。

《流星》。

ガァァン!!

衝撃。

カイルが大きく後退。

今度は。

僕が押す。

完全に。

流れが変わった。

「……すげえ」

ガレスが笑う。

「さっきまでと別人じゃねえか」

レオンハルト。

僕を見ている。

「身体能力だけではありません」

「何?」

「制御です」

星。

大量。

それを。

同時に。

動かしている。

「星装そのものの」

一拍。

「扱える量が増えている」

ベラ。

小さく笑う。

「ようやく」

「知ってたのか?」

ガレスが聞く。

「いや」

ベラは首を振る。

「じゃが」

僕を見る。

「星を剣へ纏わせ」

「……」

「他者へ与え」

「……」

「戦場へ広げることまで覚えた者が」

一拍。

「己の身体だけ」

「……」

「いつまでも同じ量で満足するとは思っておらなんだ」

戦い。

続く。

僕が押す。

カイルが受ける。

でも。

倒れない。

「《彗星》!」

カイル。

槍。

弾く。

「《流転》!」

方向。

変える。

カイル。

追う。

それでも。

僕の方が速い。

「《流星》!」

激突。

カイルが下がる。

「っ……!」

それでも。

笑ってる。

「やば」

息。

荒い。

でも。

目。

楽しそう。

「お前」

「何?」

「めちゃくちゃだな」

「カイルに言われたくない」

「俺は普通」

「どこが!」

僕も。

息。

荒くなっている。

星。

大量に纏う。

思った以上に。

負担がある。

まだ。

長くは使えない。

カイルも。

気づいた。

「そろそろ」

槍。

構える。

「終わらせる?」

「……」

僕も。

《明星》を見る。

「そうだね」

空気。

変わる。

ガレス。

腕を解く。

レオンハルト。

僅かに前へ出る。

グレンも。

息子を見る。

ベラ。

僕を見る。

「……」

カイル。

槍を引く。

今までとは。

違う構え。

低い。

穂先。

僕へ。

真っ直ぐ。

魔力。

槍へ集まっていく。

「親父」

カイルが言う。

「これなら」

グレン。

答えない。

でも。

止めない。

カイル。

笑う。

「いくぞ、ソル」

「うん」

僕は。

《明星》を。

鞘へ納めた。

「……?」

カイル。

見る。

ベラの目が。

僅かに変わる。

その構え。

知っている。

「ソル」

僕は。

腰を落とす。

「前に」

一拍。

「教えてもらったんだ」

頭に浮かぶ。

シリウス。

剣聖。

その居合。

一拍すら。

相手へ与えない。

抜刀。

《無拍》。

僕は。

それを。

そのまま使おうとは思わなかった。

僕には。

僕の。

戦い方がある。

星。

一つ。

カイルの横。

浮かぶ。

「……?」

二つ。

背後。

三つ。

上。

四つ。

反対側。

黄金の星々。

カイルを囲む。

「何だ?」

ガレスが呟く。

ベラ。

目を見開く。

「……ほう」

カイルも。

周囲を見る。

星。

攻撃してこない。

ただ。

浮かんでいる。

カイル。

指。

僅かに動く。

星。

感じる。

右脚。

重心。

魔力。

槍を握る。

腕。

呼吸。

全部。

星から。

僕へ。

伝わる。

「……見える」

僕は呟く。

カイルが。

槍へ。

魔力を叩き込む。

同時。

地面。

踏み抜く。

「――《天穿》!!」

槍。

一直線。

凄まじい魔力。

空気そのものを貫きながら。

僕へ。

来る。

でも。

その前から。

分かっていた。

どこへ。

いつ。

どれほどの速度で。

来るのか。

星が。

全部。

教えてくれている。

だから。

僕は。

一拍。

早く。

動ける。

右脚。

星々。

集中。

《彗星》。

踏み込み。

《明星》。

星。

集まる。

大量。

全身の星装。

《流転》。

脚。

腰。

腕。

剣。

一瞬で。

繋ぐ。

シリウスから受け継いだ。

居合。

そこへ。

僕の星装を。

重ねる。

「《無拍》」

抜刀。

その瞬間。

「馬鹿者!!」

ベラの声。

「止めろ!!」

ガレスが叫ぶ。

「間に合いません!」

レオンハルト。

走る。

二つの必殺技。

ぶつかる。

その。

直前。

「ガレス!!」

「分かってる!!」

ガレス。

魔力。

解放。

一気に。

二人の間へ。

「ぬぅぅぅぅ!!」

大剣。

振り下ろす。

同時。

レオンハルト。

盾。

展開。

「《聖壁》!!」

巨大な光の壁。

そして。

ベラ。

二人の後ろ。

魔力。

叩き込む。

「二人とも!!」

ドォォォォォォォン!!!!

爆発。

訓練場。

揺れる。

砂煙。

巻き上がる。

「……」

静寂。

砂煙。

晴れる。

「……え」

僕は。

《明星》。

抜いた状態。

止まっている。

カイルも。

槍。

突き出したまま。

止まっている。

その間。

ガレス。

大剣。

二人の攻撃を。

無理やり。

上へ逸らしている。

レオンハルトの《聖壁》。

半分。

砕けている。

そして。

ベラ。

僕たちを見る。

「……」

怖い。

ものすごく。

怖い。

「お主ら」

「……」

「模擬戦の意味を」

一拍。

「理解しておるか?」

「……」

僕。

カイル。

顔。

見合わせる。

「……ごめんなさい」

「……すみません」

「特にソル!!」

「僕!?」

「初めて使う技を最大出力で撃つ馬鹿がどこにおる!!」

「いや、でも」

「でもではない!!」

カイル。

笑い。

堪えている。

「カイル!」

グレン。

声。

「はい」

一瞬で。

真顔。

「お前もだ」

「……はい」

ガレス。

大剣を下ろす。

「ったく……」

腕。

少し。

震えている。

「洒落になってねえぞ」

レオンハルトも。

盾を見る。

大きな亀裂。

「模擬戦で」

一拍。

「《聖壁》をここまで破損させられるとは思いませんでした」

「……」

僕と。

カイル。

もう一度。

顔を見る。

「……」

カイル。

笑う。

「引き分け?」

「たぶん」

「次は」

「やらん!!」

ベラ。

即答。

「まだ何も言ってない!」

「言わんでも分かるわ!!」

周囲。

笑い声。

広がる。

僕も。

笑った。

カイルも。

笑っている。

勝敗。

つかなかった。

でも。

分かった。

強い。

同じ時代。

僕と。

ほとんど変わらない歳で。

ここまで。

強い人がいる。

カイルが。

手を出す。

「ソル」

「何?」

「次は」

一拍。

「絶対勝つ」

僕も。

その手。

握る。

「僕も」

「真似すんなよ」

「カイルが先に言っただけでしょ」

「じゃあ」

一拍。

「どっちが先にS級になるか勝負な」

「僕、冒険者の階級そんな高くないんだけど」

「……あ」

「忘れてた?」

「忘れてた」

「適当だなあ」

また。

笑う。

少し離れた場所。

グレンが。

僕たちを見る。

ガレス。

レオンハルト。

そして。

ベラ。

ベラだけは。

笑っていなかった。

僕を見る。

正確には。

僕の身体から。

少しずつ消えていく。

大量の星を。

見ていた。

「……」

「ベラ?」

「何じゃ」

「どうしたの?」

「いや」

ベラ。

少し。

笑う。

「面白くなってきたと思っての」

「?」

「気にするな」

僕は。

首を傾げる。

まだ。

知らなかった。

この日。

僕が初めて纏った。

大量の星。

それは。

新しい力ではない。

ずっと。

僕の中にあったもの。

《明星》へ集め。

仲間へ与え。

《星域》として広げてきた。

数え切れないほどの星々。

変わったのは。

星じゃない。

僕自身だった。

今までより多くの星を。

同時に。

自分の身体へ纏い。

制御できるようになった。

ただ。

それだけ。

けれど。

その「ただそれだけ」が。

《星装》という力を。

次の段階へ。

押し上げようとしていた。


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