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108/148

6人目の候補

第108話 六人目の候補

アステリア王国。

王都近郊。

六星同盟による合同軍事訓練。

その第二回が。

この国で行われることになった。

「……でかい」

僕は。

目の前に広がる訓練場を見て。

思わず呟いた。

セレフィアの訓練場も広かった。

でも。

ここは。

もっと。

違う。

軍隊だけのために作られた場所じゃない。

王国騎士団。

冒険者ギルド。

魔法兵。

そして。

各地から集められた。

実戦経験のある冒険者たち。

色んな人間が。

同じ場所に集まっている。

「随分」

一拍。

「騒がしいの」

隣。

ベラが言う。

「セレフィアと全然違うね」

「聖騎士どもは」

一拍.

「規律を重んじる」

「うん」

「こちらは」

ベラが。

周囲を見る。

「自由じゃ」

その言葉通りだった。

隊列を組んでいる。

王国騎士団。

その横。

談笑している。

冒険者たち。

武器。

装備。

服装。

全部。

違う。

「でも」

僕が言う。

「実戦慣れしてる感じはする」

「当然じゃ」

ベラが答える。

「冒険者は」

一拍.

「生きて帰ることが」

「……」

「そのまま実力になる」

少し先。

大きな声。

聞こえる。

「ソル!」

振り返る。

「ガルム!」

ローディア。

ギルド長。

ガルム。

こっちへ。

歩いてくる。

「久しぶりだな」

「うん」

「随分」

一拍.

「偉くなったみたいじゃねえか」

「全然」

「魔王軍と訓練して」

「……」

「聖騎士長ともやり合ったって」

「誰から聞いたの?」

「ギルド舐めんな」

「……」

情報。

早い。

ベラが。

横から笑う。

「ソルは」

一拍.

「相変わらずじゃ」

ガルム。

ベラを見る。

「ベラ様」

「うむ」

ガルムも。

もう。

驚かない。

最初。

ベラの正体を知った時とは。

全然違う。

「今回は」

僕が聞く。

「ローディアからも?」

「ああ」

ガルムが頷く。

「何人か連れてきた」

「ガルドは?」

「今回は留守番だ」

「そっか」

少し。

安心。

ガルムが。

訓練場の奥を見る。

「それより」

一拍.

「お前」

「何?」

「会わせたい奴がいる」

「誰?」

「今回」

一拍.

「ギルド側の」

「……」

「責任者だ」

僕とベラ。

顔を上げる。

ガルムが。

歩き出す。

「来い」

その後を。

ついていく。

少し進むと。

周囲の空気が。

変わった。

冒険者たちが。

一人の男へ。

道を開けている。

大きい。

でも。

ガレスほどじゃない。

年齢。

四十代くらい。

短く整えた。

黒髪。

背中。

一本の長槍。

服装は。

派手じゃない。

でも。

立っているだけで。

分かる。

強い。

「……」

僕は。

思わず。

足を止めた。

ベラも。

男を見る。

「ほう」

また。

その反応。

強い人を見た時の。

ベラ。

ガルムが。

男の前へ。

「統括」

男が。

こちらを見る。

「ガルム」

低い声。

そして。

僕へ。

視線。

止まる。

「君が」

一拍.

「ソルか」

「はい」

僕は。

頭を下げる。

「初めまして」

男。

少しだけ。

笑う。

「グレン・ヴァルハイト」

一拍.

「冒険者ギルド本部統括を務めている」

ギルド本部。

統括。

僕は。

少し。

姿勢を正す。

「よろしくお願いします」

「ああ」

ベラも。

グレンを見る。

「お主」

一拍.

「元冒険者か」

グレン。

僅かに。

目を細める。

「分かりますか」

「立ち方でな」

「さすがです」

グレンは。

自然に答えた。

僕が。

ガルムを見る。

「元冒険者って」

ガルム。

少し笑う。

「お前」

一拍.

「知らねえのか」

「何を?」

「グレン統括は」

少し。

間。

「元S級冒険者だ」

「……」

僕は。

止まる。

「S級?」

聞いたことはある。

でも。

実際に。

会うのは。

初めて。

「そんなにすごいの?」

ガルムが。

呆れた顔。

「そんなにじゃねえ」

一拍.

「とんでもなくすごい」

「……」

「S級冒険者ってのはな」

一拍.

「A級の上に」

「……」

「普通にある階級じゃねえ」

僕は。

グレンを見る。

ガルムが続ける。

「過去」

一拍.

「五百年」

「……」

「S級へ認定された冒険者は」

指。

五本。

「五人だけだ」

「……五人?」

少ない。

あまりにも。

「強けりゃ」

一拍.

「上がれるわけじゃねえ」

ガルムが言う。

「実力」

一つ。

「功績」

一つ。

「信頼」

一つ。

「全部」

一拍.

「揃った奴だけ」

僕は。

もう一度。

グレンを見る。

この人が。

その五人の。

一人。

「ちなみに」

ガルムが続ける。

「勇者レグルスは」

僕。

反応。

「冒険者だったの?」

「今の制度とは」

一拍.

「時代が違う」

「……」

「だから」

一拍.

「S級五人には入ってねえ」

そして。

「死後」

一拍.

「功績を称えられて」

「……」

「ギルド殿堂入りしてる」

「殿堂入り……」

レグルス。

勇者。

五百年前。

ベラと共に。

戦った人。

今も。

冒険者たちの中で。

名前が残っている。

「まあ」

グレンが口を開く。

「私の話は」

一拍.

「そのくらいでいい」

ガルム。

少し笑う。

「相変わらずですね」

「昔の肩書きを」

一拍.

「いつまでも出しても仕方ない」

その時。

後ろ。

声。

「親父」

僕。

振り返る。

若い。

男。

歩いてくる。

年齢。

僕より。

少し上。

十八。

それくらい。

濃い茶髪。

少し。

無造作。

背中には。

長槍。

グレンより。

細身。

でも。

一目で。

分かる。

身体。

軽い。

隙が。

少ない。

そして。

目。

僕を見ている。

まっすぐ。

「遅い」

グレンが言う。

「まだ時間前だろ」

「時間前に」

一拍.

「準備を終えるのが」

「……」

「普通だ」

「はいはい」

全然。

気にしてない。

僕は。

ガルムを見る。

「この人は?」

ガルム。

少し。

口元を上げる。

「グレン統括の」

一拍.

「一人息子」

若い男。

僕の前へ。

来る。

「カイル」

一拍.

「カイル・ヴァルハイト」

手。

出す。

「よろしく」

僕も。

手。

出す。

「ソル」

握手。

普通。

少なくとも。

最初は。

「階級は?」

僕が聞く。

「A級」

「A級?」

思ったより。

高い。

でも。

父親。

元S級。

なら。

不思議じゃない。

僕が。

そう考えたのを。

ガルム。

気づいたらしい。

「ソル」

「何?」

「階級だけ見て」

一拍.

「判断すんなよ」

「え?」

ガルムが。

カイルを見る。

「こいつは」

一拍.

「今」

「……」

「一番」

少し。

間。

「S級に近い」

僕。

目を見開く。

カイルは。

特に。

反応しない。

「六人目の?」

「ああ」

ガルムが。

頷く。

「ギルドの中じゃ」

一拍.

「そう見てる奴も多い」

グレンの表情。

変わらない。

「まだ早い」

カイル。

ため息。

「またそれ?」

「ああ」

「親父」

一拍.

「俺のこと」

「……」

「評価低すぎない?」

「実力の話はしていない」

グレンが答える。

「じゃあ何」

「S級は」

一拍.

「強いだけでは」

「……」

「なれない」

カイル。

黙る。

「何度も言っている」

「分かってるって」

「なら」

一拍.

「口でなく」

「……」

「行動で示せ」

カイル。

少し。

面倒そうに。

頭を掻く。

「厳しいね」

僕が言う。

「だろ?」

カイルが。

すぐ。

こっちを見る。

「親父」

一拍.

「昔からこれ」

グレン。

何も言わない。

ガルムが。

小さく笑う。

「まあ」

一拍.

「才能だけなら」

僕。

見る。

「こいつは」

一拍.

「親父以上だ」

「……」

僕は。

カイルを見る。

グレン。

元S級。

過去五百年。

五人しかいない。

その人より。

才能が。

上。

「ガルム」

グレンが言う。

「余計なことを」

「本人も知ってるでしょ」

「それと」

一拍.

「言いふらすのは別だ」

カイル。

全然。

気にしてない。

むしろ。

僕を。

じっと。

見ている。

「何?」

僕が聞く。

「いや」

一拍.

「思ってたより」

「……」

「普通だなって」

「何それ」

「だって」

カイルが言う。

「魔王軍軍隊長と」

一拍.

「何回も戦って」

「……」

「聖騎士長とも」

「……」

「やり合ったんだろ?」

「まあ」

「もっと」

一拍.

「ごつい奴かと」

僕は。

自分を見る。

「僕」

一拍.

「十五歳なんだけど」

「知ってる」

「じゃあ」

一拍.

「なんでごついと思ったの?」

「なんとなく」

「適当だなあ」

カイル。

笑う。

「でも」

一拍.

「いいや」

「何が?」

「戦えば」

一拍.

「分かる」

「……」

嫌な。

予感。

「何が?」

カイル。

長槍。

肩へ。

担ぐ。

「強さ」

「……」

僕は。

黙る。

ベラ。

笑い始める。

「またじゃ」

「何が?」

「最近」

一拍.

「お主」

「……」

「会う者会う者に」

「……」

「戦いを挑まれておらぬか?」

「僕も」

一拍.

「そう思ってた」

カイル。

楽しそう。

「ガレスとやったんだろ?」

「うん」

「聖騎士長とも?」

「うん」

「じゃあ」

一拍.

「俺ともやろうぜ」

「なんで!?」

即答。

周囲。

何人か。

笑う。

グレン。

眉間。

押さえる。

「カイル」

「何?」

「まず」

一拍.

「合同訓練だ」

「分かってる」

「なら」

「その中でやればいいだろ」

「……」

グレン。

黙る。

カイル。

勝ち誇った顔。

「ほら」

「ほらではない」

ベラ。

大笑い。

僕は。

ため息。

「カイル」

「何?」

「僕」

一拍.

「昨日まで」

「……」

「家で休んでたんだけど」

「ちょうどいいじゃん」

「何が?」

「体力」

「そういう問題じゃない!」

でも。

少し。

嬉しい。

何故か。

分からない。

ガレス。

レオンハルト。

ベラ。

アン。

みんな。

僕より。

ずっと経験がある。

強い。

大人。

でも。

カイルは。

違う。

僕と。

それほど。

歳が離れていない。

なのに。

A級。

それも。

史上六人目の。

S級候補。

同じ時代。

同じ世代。

こんな人が。

いる。

「……」

僕は。

カイルの長槍を見る。

「槍?」

「ああ」

「得意なの?」

「やれば分かる」

また。

それ。

「そればっかり」

「楽だろ」

「説明する気ないじゃん」

「戦った方が」

一拍.

「早い」

カイル。

笑う。

「ソル」

「何?」

「俺」

一拍.

「結構」

「……」

「強いぞ」

「そうみたいだね」

「怖い?」

僕も。

少し。

笑う。

「全然」

カイルの目が。

変わった。

一瞬。

楽しそうに。

「いいね」

その時。

訓練場。

奥。

大きな鐘。

鳴る。

合同訓練。

開始を知らせる。

王国騎士団。

冒険者。

一斉に。

動き始める。

遠く。

見覚えのある。

人影。

ガレス。

そして。

その隣。

「レオンハルトも来てる」

「当然じゃ」

ベラが言う。

「前回」

一拍.

「セレフィアと魔族だけで」

「……」

「終わらせぬと決めたからの」

魔王軍。

聖騎士団。

王国騎士団。

冒険者。

前より。

さらに。

大きくなった。

合同訓練。

そして。

僕の隣。

カイル。

長槍。

背負う。

「なあ」

「何?」

「訓練終わったら」

一拍.

「一戦」

「まだ言う?」

「もちろん」

「……」

僕は。

少しだけ。

笑う。

「分かった」

カイル。

目を。

輝かせる。

「本当か?」

「うん」

《明星》。

腰。

触れる。

「僕も」

一拍.

「ちょっと」

「……」

「興味出てきた」

カイル。

笑う。

「決まり」

ベラが。

僕たちを。

交互に見る。

そして。

小さく。

笑った。

「……」

「ベラ?」

「何でもない」

「今」

一拍.

「何か考えたでしょ」

「考えておらぬ」

「絶対嘘」

「早く行くぞ」

「誤魔化した」

僕と。

カイル。

並んで。

訓練場へ。

歩いていく。

この時。

僕は。

まだ知らなかった。

目の前にいる。

槍使い。

カイル・ヴァルハイト。

ギルド本部統括。

元S級冒険者。

グレン・ヴァルハイトの。

一人息子。

父を超える。

才能を持つ。

若き。

A級冒険者。

この出会いが。

ただの。

合同訓練で終わらないことを。

そして。

やがて。

天使との戦いの中で。

僕が。

何度も。

背中を預けることになる。

最初の。

仲間との出会いだった。


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