破らないという答え
第104話 破らないという答え
訓練場。
ガレスとレオンハルトの戦いが終わって。
しばらく。
僕は。
中央に立っていた。
「……」
目の前。
レオンハルト。
さっきまで。
ガレスと。
あれだけの戦いをしていた男。
その後ろ。
完全に破壊された。
《聖城・アイギス》の跡。
地面。
ひびだらけ。
一部。
抉れている。
僕は。
それを見る。
「……これ」
「何じゃ」
隣。
ベラ。
「本当に」
一拍。
「僕もやるの?」
「何を今更」
「いや」
僕は。
レオンハルトを見る。
「さっき」
一拍。
「あんな戦いしたばっかりだよ?」
レオンハルト。
盾。
確認している。
傷はある。
でも。
壊れてはいない。
「問題ない」
「本人が言った!」
ガレスが。
後ろで笑う。
「安心しろ、ソル」
「何?」
「多少は」
一拍。
「疲れている」
「多少!?」
「そうだ」
レオンハルトが答える。
「なら」
僕は。
ガレスを見る。
「ガレスとやればいいじゃん!」
「俺は戦った」
「僕は見てた!」
「なら次はお前だ」
「理不尽!」
ベラが。
楽しそうに笑っている。
絶対。
こうなると思ってた。
「ソル」
レオンハルトが。
僕を呼ぶ。
「はい」
「嫌なら」
一拍。
「断って構わない」
「……」
その言い方。
ずるい。
僕は。
《明星》を見る。
そして。
息を吐く。
「やります」
「よろしい」
レオンハルトが。
盾を構える。
僕も。
《明星》を抜く。
金色。
《星装》。
身体を覆う。
周囲。
僅かに。
ざわめく。
聖騎士たち。
僕の《星装》を見るのは。
初めて。
通信の向こう。
各国首脳も。
まだ残っている。
アンも。
セラも。
僕を見ている。
『ソル』
アン。
「何?」
『怪我しないでね』
「うん」
『レオンハルトも』
レオンハルトが。
通信魔法を見る。
「承知しました」
『ガレスは別にいい』
「おい」
ガレスが。
低い声。
アン。
無視。
ベラが。
腹を抱えて笑う。
「魔王に見捨てられたの!」
「ベラ様」
「何じゃ」
「後で覚えておいてください」
「何故妾まで!?」
少しだけ。
空気が緩む。
でも。
僕は。
レオンハルトを見る。
盾。
剣。
さっき。
ずっと見ていた。
ガレスとの戦い。
《聖盾》。
《返光》。
《聖閃》。
《聖壁》。
そして。
《聖城・アイギス》。
真正面から。
破る。
それは。
ガレスがやった。
だったら。
僕は。
どうする?
「双方」
アルヴィス。
再び。
中央へ。
「準備は」
一拍。
「よろしいですか」
「はい」
「ああ」
アルヴィス。
僕を見る。
レオンハルトを見る。
右手。
上げる。
「始め!」
僕は。
動かない。
レオンハルトも。
動かない。
「……」
「……」
静寂。
ガレスが。
眉をひそめる。
「何をしている」
ベラは。
笑う。
「見ておるのじゃ」
「何を?」
「互いを」
レオンハルト。
盾。
前。
剣。
後ろ。
完璧。
僕は。
《明星》を。
少し下げる。
さっき。
ガレスが見つけた。
左へ動いた時。
盾が僅かに遅れる。
でも。
「……」
違う。
もう。
遅れない。
レオンハルト。
修正してる。
たった。
数分前に。
指摘された弱点。
もう。
消している。
「すご……」
「どうした」
レオンハルトが言う。
「来ないのか」
「行きます」
地面。
蹴る。
《星装》。
脚へ。
集中。
「《彗星》!」
金光。
一気に。
距離を潰す。
《明星》。
振る。
レオンハルト。
盾。
「《聖盾》」
激突。
金。
白。
火花。
「っ!」
硬い。
予想以上。
でも。
止まらない。
僕は。
《明星》を引く。
もう一度。
右。
左。
上。
三連撃。
全部。
盾。
剣。
受けられる。
「速い」
レオンハルトが言う。
「だが」
盾。
傾く。
まずい。
「《返光》」
長剣。
盾の裏から。
走る。
でも。
見た。
さっき。
ガレスとの戦いで。
「《明星》」
剣。
触れる。
真正面から。
受けない。
力。
流す。
身体。
回転。
レオンハルトの剣が。
僕の横を通過。
その勢い。
利用。
僕の身体が。
レオンハルトの横へ。
「なに?」
《明星》。
首元へ。
でも。
盾。
戻る。
ガンッ!
弾かれる。
僕は。
距離を取る。
「……惜しい」
レオンハルトが。
僕を見る。
「今のは?」
「受け流し」
「なるほど」
レオンハルト。
少し。
笑う。
「ガレスとは」
一拍。
「随分違う」
後ろ。
ガレス。
腕を組む。
「当然だ」
「なんでガレスが答えるの?」
「俺が鍛えた」
「ベラにもアルデバランにも習ったから!」
「魔王軍でも鍛えただろう」
「それはそうだけど!」
「戦闘中じゃぞ!」
ベラに怒られた。
僕は。
慌てて。
前を見る。
レオンハルト。
もう。
目の前。
「え」
「余所見は」
盾。
迫る。
「感心しない」
「うわっ!」
盾撃。
僕は。
《明星》。
間へ。
でも。
重い。
吹き飛ばされる。
空中。
体勢。
崩れる。
レオンハルト。
追う。
速い。
「《聖閃》」
三連撃。
一。
《明星》。
流す。
二。
身体。
捻る。
避ける。
三。
間に合わない。
「《流転》!」
星装。
流れる。
肩。
腕。
《明星》。
金色。
剣と。
ぶつかる。
衝撃。
殺さない。
受け止めない。
流す。
レオンハルトの剣。
地面へ。
逸れる。
僕は。
着地。
そのまま。
懐へ。
「《流星》!」
一閃。
レオンハルト。
盾。
間に合う。
でも。
「っ!」
今度は。
レオンハルトが。
一歩。
下がった。
聖騎士たち。
ざわめく。
僕も。
少し驚く。
下がった。
レオンハルトが。
初めて。
僕の攻撃で。
「……見事」
盾の表面。
金色の傷。
薄く。
残っている。
「だが」
レオンハルト。
一歩。
戻る。
「まだ軽い」
「分かってます」
僕は。
《明星》を構える。
力なら。
勝てない。
ガレスみたいに。
《聖城》を。
真正面から壊す。
無理。
だったら。
違う方法。
レオンハルト。
僕を見る。
「ソル」
「はい」
「君の戦い方は」
一拍。
「面白い」
「ありがとうございます」
「だが」
盾。
構える。
「受け流すだけでは」
一拍。
「私には勝てない」
「……」
「私が」
一拍。
「動かなければいい」
僕は。
目を見開く。
レオンハルト。
盾。
前。
剣。
後ろ。
完全な。
防御。
攻めてこない。
僕が。
攻めるしかない。
「なるほど……」
ガレスが。
呟く。
ベラも。
目を細める。
「ソル」
でも。
助言は。
来ない。
自分で。
考えろ。
そういうこと。
僕は。
息を吐く。
《明星》。
握る。
真正面。
行く。
「《彗星》!」
加速。
盾。
「《聖盾》」
ぶつかる。
弾かれる。
もう一度。
左。
盾。
完璧。
右。
剣。
防がれる。
上。
盾。
無理。
隙がない。
「くっ……」
距離。
取る。
レオンハルト。
追わない。
「どうした」
「考えてます」
「戦場では」
一拍。
「待ってくれないぞ」
「今」
一拍。
「待ってくれてるじゃないですか」
一瞬。
静かになる。
後ろ。
ガレスが。
吹き出した。
「はっ!」
ベラも。
笑う。
レオンハルト。
少し黙る。
「……確かに」
「ですよね?」
「では」
レオンハルト。
一歩。
出る。
「待つのは」
一拍。
「やめよう」
「え」
しまった。
レオンハルト。
突進。
盾。
「ちょっ!」
僕。
横へ。
避ける。
剣。
来る。
《明星》。
流す。
盾。
また来る。
受け流せない。
身体。
吹き飛ぶ。
「ぐっ!」
地面。
転がる。
立つ。
レオンハルト。
もう。
来ている。
「休ませて!」
「戦場では待たない」
「僕が言ったけど!」
剣。
盾。
連続。
防ぐ。
流す。
避ける。
でも。
少しずつ。
追い込まれる。
強い。
攻めても。
強い。
「ソル!」
ガレスの声。
「足元を見ろ!」
「え?」
レオンハルト。
踏み込む。
右足。
その瞬間。
分かった。
盾。
剣。
上半身。
完璧。
でも。
踏み込む時。
重心。
一瞬。
前へ。
僕は。
《明星》を。
下げる。
「《流転》!」
レオンハルトの剣。
流す。
でも。
今度は。
身体じゃない。
力。
方向。
下へ。
レオンハルトの重心。
さらに。
前へ。
「っ!」
崩れた。
ほんの。
一瞬。
僕は。
動く。
《彗星》。
横。
盾の外。
レオンハルト。
戻そうとする。
間に合う。
なら。
「《明星》!」
盾。
正面から。
押さない。
触れる。
流す。
外へ。
盾が。
僅かに。
開く。
「なに……!」
初めて。
見えた。
レオンハルトの。
胸。
僕は。
踏み込む。
「《流星》!」
金色。
一直線。
でも。
寸前。
盾。
戻ってくる。
速い。
間に合わない。
「だったら!」
《流星》。
止める。
星装。
脚へ。
「《彗星》!」
さらに。
加速。
盾の横。
抜ける。
レオンハルトの目が。
見開く。
僕は。
背後。
取った。
《明星》。
首筋へ。
「……」
届く。
そう思った。
瞬間。
レオンハルト。
身体を。
沈める。
盾。
捨てた。
「え?」
長剣。
逆手。
僕の腹。
寸前。
止まる。
同時。
僕の《明星》。
レオンハルトの首筋。
あと。
数センチ。
届いていない。
静寂。
僕は。
動けない。
レオンハルトが。
言う。
「そこまで」
僕は。
《明星》を見る。
届かなかった。
あと。
少し。
「……負けた」
レオンハルトが。
剣を引く。
僕も。
《明星》を下ろす。
アルヴィス。
宣言。
「勝者」
一拍。
「レオンハルト」
聖騎士団。
歓声。
僕は。
大きく。
息を吐く。
「強い……」
レオンハルトが。
盾を拾う。
「君もな」
「でも」
「負けは負けです」
「ああ」
即答。
「そこは否定しないんですね」
「勝敗は」
一拍。
「曖昧にするものではない」
やっぱり。
真面目。
ガレスが。
歩いてくる。
「だが」
僕を見る。
「最後は」
一拍。
「悪くなかった」
「ガレス」
「俺なら」
一拍。
「もう一歩早い」
「今それ言う?」
「事実だ」
「この人たち……」
ベラも。
やってくる。
「ソル」
「何?」
「何故」
一拍。
「最後」
「……」
「《流星》を止めた」
僕は。
少し考える。
「盾が」
一拍。
「戻ってきたから」
「それだけか?」
「……」
違う。
僕は。
思い出す。
《流星》。
真正面。
威力。
ぶつける。
でも。
レオンハルトの守り。
そこへ。
わざわざ。
力をぶつける必要。
ない。
「壊す必要が」
一拍。
「ないと思った」
ベラ。
少し。
笑う。
「そうじゃ」
僕は。
レオンハルトを見る。
「ガレスは」
一拍。
「《聖城》を」
「……」
「真正面から壊した」
「うむ」
「でも」
盾。
見る。
「僕が」
一拍。
「同じことをする必要はない」
「その通り」
ベラが。
僕の頭を。
軽く叩く。
「力で勝てぬなら」
一拍。
「別の答えを探せ」
僕は。
頷く。
レオンハルトが。
こちらを見ている。
「ソル」
「はい」
「最後の動き」
「……」
「あれは」
一拍。
「誰に教わった」
「色んな人です」
「色んな?」
僕は。
《明星》を見る。
「アルデバランに」
一拍。
「守ることと」
「……」
「受け流すことを」
「ガレスには」
一拍。
「戦い方を」
「ベラには」
「妾は?」
「いっぱい」
「雑じゃな!?」
少し。
笑う。
そして。
「色んな人から」
一拍。
「教えてもらいました」
レオンハルトが。
頷く。
「なら」
一拍。
「まだ強くなる」
「……」
「君は」
僕は。
顔を上げる。
「次は」
レオンハルト。
盾を持ち直す。
「今日ほど」
一拍。
「簡単には勝てないかもしれないな」
「今日も」
一拍。
「簡単じゃなかったですよね?」
「……」
ガレスが。
また笑う。
レオンハルト。
僅かに。
眉を寄せる。
「よく喋る少年だ」
「誰かさんに」
一拍。
「似てきたんじゃないか?」
ガレスが。
ベラを見る。
「誰のことじゃ」
「ベラ様です」
「ガレス!」
僕は。
笑う。
でも。
その時。
通信の向こう。
アンが。
口を開いた。
『面白い』
全員。
見る。
『ガレス』
「はい」
『レオンハルト』
「はい」
『ソル』
「僕も?」
『うん』
アンが。
三人を見る。
『三人とも』
一拍。
『戦い方が』
「……」
『全然違う』
ガレス。
突破する。
レオンハルト。
守る。
僕。
流す。
『だったら』
アンが言う。
『次は』
嫌な予感。
『一対一じゃなくて』
一拍。
『一緒に戦ってみよう』
僕は。
アンを見る。
「一緒に?」
『そう』
アンが。
少し笑う。
『魔王軍と』
一拍。
『聖騎士団』
「……」
『混ぜる』
周囲。
ざわつく。
魔族。
人間。
別々に。
戦うんじゃない。
同じ部隊。
同じ仲間として。
『だって』
アンが。
当然のように言う。
『そのための』
一拍。
『合同訓練でしょ』
誰も。
否定できなかった。
僕は。
ガレスを見る。
レオンハルトを見る。
二人も。
互いを見る。
さっきまで。
剣を交えていた。
二人。
今度は。
同じ側。
ベラが。
笑う。
「ようやく」
一拍。
「本番じゃな」
五百年。
別々に。
歩いてきた。
人間と魔族。
互いの強さは。
分かった。
次に。
必要なのは。
その力を。
一つにすること。
魔王軍。
そして。
聖騎士団。
初めての。
混成訓練が。
始まろうとしていた。




