↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
101/145

聖騎士と魔王軍

第100話 聖騎士と魔王軍

アルカディアで。

聖女ルナの記録が見つかったという連絡を受けてから。

数日後。

僕とベラは。

再び。

セレフィア神聖国を訪れていた。

白い街並み。

遠くに見える。

巨大な大聖堂。

初めて来た時とは。

随分。

見え方が違う。

「また来たね」

「ああ」

ベラが。

大聖堂を見上げる。

「まさか」

一拍。

「これほど早く戻ってくるとは思わなんだ」

「僕も」

前に来た時。

僕たちは。

聖女ルナの塔へ向かった。

五百年前。

ベラと共に戦った。

聖女。

そして。

世界に。

魔王ベラトリクスは討伐された。

そういう歴史を残した人物。

でも。

今は。

知っている。

ルナが。

世界を騙した理由を。

そして。

そのルナが。

晩年。

アウレストラについて。

調べていた。

「ベラ」

「何じゃ」

「ルナって」

一拍。

「アークトゥルスから何か聞いてたと思う?」

「分からぬ」

ベラは。

少し考える。

「じゃが」

「……」

「可能性はある」

「やっぱり?」

「あやつらは」

一拍。

「妾の知らぬところでも」

「……」

「よく話しておったからの」

少し。

不満そう。

「仲間外れ?」

「違うわ!」

「でも今」

「違うと言っておる!」

僕は。

少し笑う。

そのまま。

大聖堂へ向かった。

大聖堂。

正門。

僕たちを待っていたのは。

アルヴィスだった。

「お待ちしておりました」

「久しぶり」

「お久しぶりです、ソル殿」

そして。

ベラを見る。

「ベラ様も」

「うむ」

「今回は城下町で問題を起こされていないようで安心しました」

「何故セレフィアにまで広まっておる!?」

「何の話?」

僕が聞く。

アルヴィスが。

少し笑う。

「魔族領で三日間飲み歩き、その請求をアンタレス陛下へ回したと」

「セラじゃな!」

「やっぱり本当なんだ」

「ソル!」

大聖堂の前で。

ベラの声が響く。

アルヴィスは。

何事もなかったように。

歩き出した。

「教皇がお待ちです」

僕たちは。

その後を追う。

大聖堂。

奥。

以前。

世界会談が行われた。

大広間。

その一角に。

教皇がいた。

「お待ちしておりました」

「教皇」

僕が。

頭を下げる。

ベラも。

軽く手を上げる。

「久しいの」

「はい」

教皇が。

微笑む。

「とはいえ」

一拍。

「世界会談から」

「……」

「それほど日は経っていませんが」

「最近」

僕が言う。

「色々ありすぎるんです」

「確かに」

教皇が。

少し笑った。

その横。

机の上。

一冊の。

古い本が置かれている。

僕は。

すぐに気づく。

「それが?」

教皇が。

本を見る。

「はい」

表紙。

古い。

でも。

丁寧に保存されている。

「聖女ルナが」

一拍。

「晩年に残した記録です」

ベラの表情から。

笑みが消える。

ゆっくり。

本へ近づく。

「ルナが」

「はい」

ベラは。

手を伸ばす。

でも。

触れる直前。

止めた。

「……」

僕は。

何も言わない。

五百年前。

一緒に戦った。

仲間。

最後まで生きた。

聖女。

その人が。

死ぬ前に。

何を残したのか。

ベラにとって。

僕たちとは。

意味が違う。

教皇も。

急かさない。

しばらくして。

ベラが。

本へ触れた。

「これを」

一拍。

「ルナが書いたのじゃな」

「間違いありません」

「そうか」

ベラが。

小さく笑う。

「相変わらず」

一拍。

「綺麗な字じゃ」

僕は。

その言葉に。

何も返せなかった。

教皇が。

椅子を示す。

「内容については」

一拍。

「落ち着いて確認しましょう」

「はい」

僕も。

頷く。

「かなり長い?」

「ええ」

教皇が答える。

「そして」

一拍。

「まだ」

「……」

「全てを解読できているわけではありません」

古い言葉。

暗号。

ルナ自身にしか。

分からないような記述。

それも。

いくつかあるらしい。

「じゃあ」

僕が言う。

「しばらく」

一拍。

「セレフィアにいた方がいい?」

「可能であれば」

「分かりました」

ベラも。

頷く。

「妾も残ろう」

その時。

大広間。

通信魔導具が。

光った。

アルヴィスが。

反応する。

「教皇」

「繋いでください」

「承知しました」

魔法陣。

展開。

光。

そこに。

一人の女性が映る。

赤。

そして。

黒。

アンタレス。

現魔王。

その後ろ。

セラもいる。

『聞こえる?』

「聞こえてる」

僕が答える。

『もう着いたんだ』

「さっきね」

『そう』

アンの視線が。

少し動く。

『ベラもいる』

「おるぞ」

『問題起こしてない?』

「お主らは妾を何だと思っておる!」

『ベラ』

セラが。

静かに言う。

『滞在初日です』

「セラまで!」

僕は。

吹き出す。

教皇も。

口元を僅かに緩めている。

でも。

アンは。

すぐに表情を変えた。

『教皇』

「はい」

『少し』

一拍。

『相談したいことがあります』

教皇も。

その変化に気づく。

「伺いましょう」

アンが。

一度。

セラを見る。

セラが。

頷く。

『今回の』

一拍。

『六星同盟についてです』

「……」

『世界会談で』

「……」

『人間と魔族』

一拍。

『各国が協力することは決まった』

教皇が。

頷く。

「はい」

『でも』

アンが続ける。

『それだけじゃ』

一拍。

『足りないと思ってる』

「足りない?」

僕が聞く。

アンが。

僕を見る。

『もし』

一拍。

『明日』

「……」

『天使が大軍で現れたら』

大広間。

静かになる。

『アステリアの軍』

『セレフィアの軍』

『ヴァルガルドの軍』

『アルカディアの軍』

『それに』

一拍。

『魔王軍』

アンが。

一つずつ。

挙げていく。

『一緒に』

一拍。

『戦える?』

誰も。

すぐには答えなかった。

『私は』

「……」

『無理だと思う』

教皇の目が。

細くなる。

『弱いって意味じゃない』

「……」

『むしろ』

一拍。

『どの国にも』

「……」

『強い兵士はいる』

アンの後ろ。

セラが。

静かに聞いている。

『でも』

一拍。

『戦い方が違う』

『指揮の方法も違う』

『魔法も違う』

『常識も違う』

そして。

『人間と魔族なんて』

一拍。

『五百年間』

「……」

『軍として一緒に戦ってない』

ベラの表情が。

変わる。

五百年前。

最後に。

人間と魔族が。

共に戦った時代。

『天使が来てから』

アンが言う。

『初めまして』

一拍。

『今日から一緒に戦いましょう』

「……」

『それじゃ』

一拍。

『遅い』

教皇は。

何も言わない。

ただ。

アンを見ている。

『だから』

一拍。

『提案があります』

「何でしょう」

『合同訓練』

僕は。

顔を上げる。

『魔王軍と』

一拍。

『人間の軍隊を』

「……」

『一緒に訓練させたい』

「合同訓練……」

僕が。

呟く。

『うん』

アンが頷く。

『最初から』

一拍。

『全部の国を集める必要はない』

「……」

『少しずつでいい』

そして。

『まず』

アンが。

教皇を見る。

『セレフィアで』

一拍。

『やらせてもらえませんか』

教皇が。

僅かに目を見開く。

僕も。

アンを見る。

「ここで?」

『ソルたちもいるし』

「それが理由?」

『それだけじゃない』

アンが答える。

『セレフィアには』

一拍。

『聖騎士団がある』

その言葉に。

アルヴィスが。

僅かに反応する。

『魔王軍とは』

「……」

『かなり戦い方が違うはず』

「なるほど」

ベラが。

面白そうに笑う。

「魔族の軍と」

一拍。

「聖騎士か」

嫌な予感。

「ベラ」

「何じゃ」

「なんで嬉しそうなの?」

「別に?」

「絶対なんか考えてる」

「考えておらぬ」

アンが。

無視して続ける。

『まず』

一拍。

『お互いの戦い方を知る』

『それから』

「……」

『一緒に部隊を組ませる』

『問題点を探す』

『直す』

そして。

『天使との戦いを』

一拍。

『想定した訓練をする』

教皇が。

ゆっくり。

目を閉じる。

考えている。

大聖堂。

静寂。

少しして。

教皇が。

目を開いた。

「アンタレス陛下」

『はい』

「一つ」

一拍。

「確認しても?」

『もちろん』

「これは」

「……」

「魔王軍の力を」

一拍。

「我々へ示すためのものですか?」

アンは。

少しも迷わなかった。

『違います』

「……」

『お互いの力を』

一拍。

『お互いに見せるためです』

教皇が。

アンを見る。

『魔王軍も』

「……」

『人間の戦い方を知らない』

一拍。

『だから』

「……」

『私たちも』

一拍。

『学ばせてもらう』

教皇の表情が。

僅かに緩む。

「分かりました」

一拍。

「許可します」

僕が。

教皇を見る。

「いいんですか?」

「はい」

教皇が頷く。

「六星同盟は」

一拍。

「戦争を避けるためだけに」

「……」

「結ばれたものではありません」

そして。

「これから起こるかもしれない」

一拍。

「戦いに」

「……」

「共に備えるための同盟でもあります」

アンが。

頷く。

『ありがとう』

「ただし」

教皇が続ける。

『何?』

「我が国からも」

一拍。

「相応の戦力を」

「……」

「参加させます」

アンが。

少し笑う。

『そのつもり』

教皇が。

アルヴィスを見る。

「聖騎士団へ連絡を」

「承知しました」

「団長にも」

一拍。

「直接」

「はい」

僕は。

教皇を見る。

「聖騎士長?」

「セレフィア聖騎士団を」

一拍。

「預かる者です」

ベラが。

反応する。

「強いのか?」

「ベラ」

「何じゃ」

「やっぱり戦うことしか考えてない」

「聞いただけじゃ!」

教皇が。

少し笑う。

「強いですよ」

ベラの目が。

輝く。

「ほう」

「ベラ!」

「何も言っておらぬではないか!」

通信の向こう。

アンが。

ため息をつく。

『それと』

「まだあるの?」

僕が聞く。

『ソル』

「僕?」

『参加して』

「え?」

『合同訓練』

一拍。

『ソルも』

「もちろんいいけど」

『魔王軍とは』

「……」

『もう何度も訓練してるでしょ』

ガレス。

魔王軍。

魔族領で。

何度も。

戦った。

『でも』

アンが続ける。

『人間の正規軍とは』

一拍。

『ほとんど戦ったことない』

「確かに」

冒険者。

英雄。

魔族。

天使。

色々な相手と。

戦ってきた。

でも。

軍隊として。

完成された。

人間の兵士。

その中でも。

セレフィアの。

聖騎士。

僕は。

ほとんど知らない。

『いい経験になると思う』

「分かった」

僕は。

頷く。

「やる」

ベラが。

僕を見る。

「ソル」

「何?」

「油断するでないぞ」

さっきまで。

ふざけていた声と。

違う。

「聖騎士とは」

一拍。

「個人の強さだけを」

「……」

「求める者たちではない」

「知ってるの?」

「五百年前にも」

一拍。

「似た戦い方をする者たちはおった」

ベラが。

腕を組む。

「守り」

「……」

「連携し」

一拍。

「仲間を生かす」

そして。

「そういう者は」

一拍。

「一対一でも」

「……」

「存外」

一拍。

「厄介じゃ」

僕は。

少し笑う。

「楽しみになってきた」

「そうでなくてはの」

アンが。

通信の向こうから。

僕たちを見る。

『じゃあ』

一拍。

『決まり』

魔王軍。

セレフィア聖騎士団。

初めての。

合同訓練。

日程は。

三日後。

参加する魔王軍は。

少数精鋭。

その指揮を執る者。

『ガレスを送る』

アンが言った。

僕は。

少し驚く。

「ガレスが?」

『うん』

魔王軍。

軍隊長。

僕が。

魔族領で。

何度も戦った男。

圧倒的な。

力。

そして。

それだけじゃない。

軍を。

まとめる力。

『ガレスには』

一拍。

『もう話してある』

「早くない?」

『断ると思う?』

「思わない」

『でしょ』

アンが。

少し笑う。

『多分』

一拍。

『本人も楽しみにしてる』

僕は。

以前。

ガレスと戦った時を思い出す。

抑えていた。

魔力。

それが。

一瞬。

解放された時。

僕は。

吹き飛ばされた。

そのまま。

会議室へ。

突っ込んだ。

「……」

『ソル?』

「なんでもない」

『何その顔』

「ちょっと」

一拍。

「嫌な記憶が」

ベラが。

笑い出す。

「会議室へ飛び込んできた時か!」

「言わなくていい!」

教皇と。

アルヴィス。

二人とも。

不思議そうにしている。

説明したくない。

『それじゃ』

アンが言う。

『三日後』

「うん」

『魔王軍を』

一拍。

『セレフィアへ向かわせる』

通信が。

切れる。

魔法陣。

消える。

大広間に。

静けさが戻る。

教皇が。

アルヴィスを見る。

「準備をお願いします」

「承知しました」

アルヴィスが。

一礼する。

その時。

僕は。

何となく。

窓の外を見る。

セレフィア。

大聖堂。

その向こう。

街。

五百年前。

人間と魔族は。

共に戦った。

でも。

その事実は。

歴史から消えた。

そして。

五百年後。

今度は。

隠すためじゃない。

世界中が。

知った上で。

人間と魔族が。

並ぼうとしている。

「ソル」

ベラが。

僕を呼ぶ。

「何?」

「三日ある」

「うん」

「ルナの記録を」

一拍。

「読もう」

僕は。

机の上を見る。

古い本。

聖女ルナ。

晩年の記録。

「そうだね」

僕は。

その本へ。

手を伸ばした。

三日後。

この国に。

魔王軍が来る。

五百年前なら。

考えられなかったこと。

魔族が。

人間の聖地へ。

軍として入り。

聖騎士たちと。

共に剣を取る。

そして。

その先に。

何が生まれるのか。

まだ。

誰にも分からない。

ただ。

この時。

世界は。

また一つ。

変わろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。