繋がる歴史
第99話 繋がる歴史
魔族領から。
報告を受けた。
翌日。
アルカディア。
古代記録室。
僕とベラは。
机の前に座っていた。
机の上。
太陽宮から。
持ち出すことを許された。
記録の写し。
アークトゥルスの。
研究資料。
そして。
魔族領から送られてきた。
石板の転写。
三つ。
並んでいる。
「……これ」
僕は。
魔族側の資料を見る。
「本当に」
一拍。
「僕の祖先なのかな」
「可能性は高い」
ベラが答える。
「太陽宮で見た」
「……」
「赤ん坊」
「うん」
「アウレストラが滅びた日」
「うん」
「魔族側に残る」
一拍。
「人間の子を連れて逃げたという話」
「時代も同じ」
「ああ」
偶然にしては。
重なりすぎている。
僕は。
椅子へ。
深く座る。
「なんか」
「……」
「変な感じ」
「何がじゃ」
「僕の家族って」
少し。
考える。
「ずっと」
一拍。
「普通だったから」
王族。
太陽。
天使。
千百年前。
そんな話とは。
何も。
関係ないと思っていた。
「それで」
一拍。
「よかったのじゃろう」
ベラが言う。
「え?」
「アステリオンは」
「……」
「王族であることすら」
一拍。
「伝えるなと言ったのであろう」
「うん」
「なら」
ベラが。
僕を見る。
「お主の家族が」
「……」
「普通に生きてきたことこそ」
一拍。
「アウレストラが」
「……」
「王統を逃がすことに」
一拍。
「成功した証拠じゃ」
僕は。
黙る。
王族として。
生き残るんじゃない。
普通の人として。
天使にも。
世界にも。
見つからず。
血だけを。
繋いでいく。
それを。
千百年間。
僕の祖先たちは。
続けてきた。
「……そっか」
少しだけ。
胸が。
軽くなる。
その時。
扉が。
開いた。
「ソル殿」
アルカディアの研究者。
大量の資料を。
抱えている。
「何か見つかった?」
「はい」
机へ。
資料が置かれる。
「アークトゥルスの」
一拍。
「研究室を再調査していました」
僕とベラが。
見る。
「これを」
一冊の。
古い手記。
表紙。
アークトゥルスの印。
「今まで」
「……」
「見つかってなかった?」
「存在自体は」
「……」
「知られていました」
研究者が答える。
「ですが」
手記を開く。
「内容の大半が」
一拍。
「意味不明とされていたのです」
「意味不明?」
「はい」
僕は。
覗き込む。
星の位置。
魔法陣。
古代文字。
計算式。
そして。
「……」
一つ。
読める。
『アウレストラ』
僕の表情が。
変わる。
「これ」
「はい」
研究者が。
頷く。
「ソル殿から得た情報を元に」
「……」
「読み直したところ」
一拍。
「アークトゥルスは」
「……」
「五百年前の時点で」
研究者が。
手記を見る。
「アウレストラ帝国について」
一拍。
「調べていたことが分かりました」
ベラが。
手記を取る。
「何故」
一拍。
「妾に言わなかった」
誰も。
答えられない。
「アークトゥルス」
ベラが。
小さく呟く。
五百年前。
共に戦った。
仲間。
「どこまで」
一拍。
「知っておった」
僕は。
ページをめくる。
そして。
一文。
目に入る。
「ベラ」
「何じゃ」
「ここ」
指す。
古代文字。
僕には。
読める。
「何と書いてある」
僕は。
読む。
「天より来たる者」
一拍。
「奴らは」
「……」
「五百年前に」
一拍。
「初めて現れたのではない」
ベラの表情が。
止まる。
僕も。
続きを読む。
「かつて」
「……」
「この世界は」
一拍。
「同じ敵と」
「……」
「戦っている」
静寂。
アークトゥルス。
知っていた。
五百年前に。
既に。
千百年前の戦いまで。
辿り着いていた。
ベラが。
手記を見る。
「そこまで」
一拍。
「辿り着いておったか」
さらに。
ページをめくる。
天使。
裂け目。
星。
古代帝国。
大量の。
研究記録。
そして。
最後。
一つの文章。
『もし』
一拍。
『この推測が正しいなら』
僕は。
読む。
『五百年前の災厄は』
「……」
『終わりではない』
ベラの拳が。
握られる。
『再び』
一拍。
『奴らは来る』
その下。
もう一文。
『その時』
「……」
『我らの時代には』
一拍。
『存在しなかった』
僕の胸。
《天核》。
熱を持つ。
『太陽が』
一拍。
『再び世界に現れることを願う』
誰も。
話さない。
僕は。
手記を見つめる。
「アークトゥルス」
五百年前。
分かってた。
完全にじゃない。
でも。
気づいていた。
自分たちが戦った。
天使。
それが。
初めてじゃないこと。
そして。
いつか。
また来ること。
ベラが。
椅子へ座る。
「馬鹿者が」
「ベラ?」
「一人で」
手記を見る。
「こんなものを」
一拍。
「調べておったのか」
怒っているような。
でも。
少し違う。
「言えば」
一拍。
「よかったのに」
僕が言う。
「ああ」
ベラが。
小さく笑う。
「そういう奴じゃった」
しばらく。
誰も。
話さない。
その時。
通信魔導具。
光る。
「今度は?」
研究者が。
起動する。
映ったのは。
セレフィア神聖国。
教皇。
そして。
アルヴィス。
『ソル殿』
「はい」
教皇の表情。
いつもより。
真剣。
『こちらでも』
一拍。
『見つかりました』
僕とベラ。
顔を見合わせる。
「何が?」
教皇が。
一冊の。
古い本を見せる。
『聖女ルナが』
一拍。
『晩年に残した』
「……」
『未公開の記録です』
ベラが。
立ち上がる。
「ルナの?」
『はい』
教皇が。
頷く。
『そして』
少し。
間を置く。
『そこには』
一拍。
『アウレストラという名が』
「……」
『記されています』
僕の胸が。
鳴る。
アークトゥルス。
ルナ。
五百年前。
二人とも。
千百年前の。
アウレストラへ。
辿り着いていた。
僕は。
ベラを見る。
「行こう」
「ああ」
次に。
向かう場所は。
決まった。
セレフィア神聖国。
聖女ルナが。
死ぬ前に残した。
最後の記録。
千百年前。
アウレストラ。
五百年前。
六英雄。
そして。
今を生きる。
僕たち。
離れていた。
三つの時代が。
少しずつ。
一本の歴史へ。
繋がり始めていた。




