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第7話 立入禁止札の改ざん
立入禁止札は、貼るためより剥がすために人を選ぶ。
灯里から送られた動画を見たあと、私は閉鎖区画の入口札を一枚ずつ調べた。紙の色、穴の位置、紐の摩耗。すると第五搬路だけ、今月の管理番号なのに去年の保存箱へ入っている札が見つかった。
「差し替えです」
私は鷹城へ見せた。
「正規の札を外して、別の札を貼り直してる。しかも立入禁止の文字が、上から薄く溶剤で削られています」
「見学会用に見栄えを整えたか」
「それだけなら管理規程違反で済みます。でも崩落と時期が重なりすぎる」
札の裏へ触れると、また白い線が走る。細い指が札を剥がし、別の紐で結び直す。近くで誰かが言う。
『見学用だから、仰々しい札は外しておいて』
声の主は見えない。ただ、同じ場に真鍋の靴音らしき重さがあった。
「柏木?」
「上の指示です。現場判断じゃない」
私は息を整えた。
「隊長、第五搬路は崩落前から『見せるための導線』に変えられていました。安全のためじゃなく、スポンサー向けの見学や配信のために」
「救助現場を飾りつけたってことか」
「はい」
鷹城の表情が初めてはっきりと険しくなった。
「俺は、そういう連中が一番嫌いだ」
その一言だけで、私は少しだけ安心した。怒るべき場所を、彼は間違えない。




