表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

第6話 後輩点検官の記者会見

嘘は、明るい場所ほど見栄えがいい。


 翌昼、東環ダンジョンの会見ホールでは、早宮ひよりが『迅速な現場判断』を語っていた。私は資料庫のモニターでその映像を見ていたが、途中から隣に小早川灯里が立った。配信記者で、崩落時の映像を誰より早く拾う女だ。


「柏木さん、顔に出てます」


「出していい立場じゃないので困っています」


 ひよりは壇上で微笑む。


『旧図面には誤差がありましたが、私が現場で誘導を修正しました』


 その背後に映るスライドは、やはり私が前夜提出した改訂導線図だった。名前だけ『早宮点検官作成』へ差し替えられている。


「露骨ですね」


 灯里が呆れたように言う。


「でももっとおかしいのは、救助開始前の時刻です。彼女、崩落の二分前にもう『修正誘導済み』って庁内チャットへ書いてます」


「二分前?」


「普通は崩れてから誘導するでしょう」


 私は背筋が冷えた。二分前に知っていたなら、ひよりは崩落そのものか、少なくとも危険な導線変更を把握していたことになる。


「会見後、映像一本送ります。非常灯の点滅順が映ってる」


 灯里は名刺を差し出した。


「私、綺麗な手柄話より、変な時系列の方が好きなんです」


 私は受け取った名刺を見た。現場で拾った違和感が、ようやく他人の言葉になった気がした。


 ひよりが笑うたび、消えた避難標識の穴が、私にはますます大きく見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ