第6話 後輩点検官の記者会見
嘘は、明るい場所ほど見栄えがいい。
翌昼、東環ダンジョンの会見ホールでは、早宮ひよりが『迅速な現場判断』を語っていた。私は資料庫のモニターでその映像を見ていたが、途中から隣に小早川灯里が立った。配信記者で、崩落時の映像を誰より早く拾う女だ。
「柏木さん、顔に出てます」
「出していい立場じゃないので困っています」
ひよりは壇上で微笑む。
『旧図面には誤差がありましたが、私が現場で誘導を修正しました』
その背後に映るスライドは、やはり私が前夜提出した改訂導線図だった。名前だけ『早宮点検官作成』へ差し替えられている。
「露骨ですね」
灯里が呆れたように言う。
「でももっとおかしいのは、救助開始前の時刻です。彼女、崩落の二分前にもう『修正誘導済み』って庁内チャットへ書いてます」
「二分前?」
「普通は崩れてから誘導するでしょう」
私は背筋が冷えた。二分前に知っていたなら、ひよりは崩落そのものか、少なくとも危険な導線変更を把握していたことになる。
「会見後、映像一本送ります。非常灯の点滅順が映ってる」
灯里は名刺を差し出した。
「私、綺麗な手柄話より、変な時系列の方が好きなんです」
私は受け取った名刺を見た。現場で拾った違和感が、ようやく他人の言葉になった気がした。
ひよりが笑うたび、消えた避難標識の穴が、私にはますます大きく見えた。




