表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

第18話 線を引き直す理由

私が線にうるさいのは、仕事だからだけじゃない。


 真夜中の資料庫で、鷹城が古い避難図の束を見ていた。私は一番下にある、初期開業時の紙地図をそっと引き抜く。


「兄が、最初期の崩落で死んだんです」


 口にしたのは久しぶりだった。十九歳のとき、まだ整備の甘かった旧東環ダンジョンで、非常灯の方向違いが重なって起きた事故。兄は出口まで三十メートルの位置で、逆向きの導線へ流されて戻れなかった。


「それで監査官に?」


「ええ。間違った線で死ぬ人を見たくなくて」


 鷹城は黙って聞いた。余計な慰めを挟まないところが、彼らしい。


「でも今日、少しだけ分かりました」


「何が」


「私は事故を恐れて線を引いていたけれど、本当は人を帰したくて引いていたんです」


 兄のために始めた仕事が、いつの間にか私自身の仕事になっていた。だから真鍋に人生を再計算される筋合いも、ひよりの見栄えに消される理由もない。


 鷹城は古い紙地図を私へ返した。


「なら最後まで引け。今度は誰のためでもなく、お前の線として」


 その言葉で、胸の中の迷いが一本きれいに揃った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ