15/20
第15話 私が引き直した救助ルート
正しい線は、引いた瞬間より使われた瞬間に価値が出る。
翌晩、閉鎖区画北端で魔力ガス漏れが起きた。監査室はまだ第五搬路を正式封鎖していない。次の事故が来る前に結果を出せと言ったのは、鷹城だ。
「柏木、引き直せるか」
「できます」
私は最新図へ、補助扉を封鎖した前提の救助ルートを書き込んだ。主通路は細いが、安全灯の配列を戻せば十分通せる。さらにガス流の逆向きを【逆算】で追い、三分後に危険になる区画も赤で囲った。
「ここを三分以内に抜ければ、二次崩落は避けられます」
鷹城はその図を一目見て、通信へ流した。
「新導線へ切り替え。柏木ルート採用」
救助は成功した。閉鎖区画にいた保守員二人と作業員一人が、全員無事に出てきた。表のロビーでは、管理局の職員たちがざわついている。
「誰が引いた図だ」
「資料庫へ飛ばされた柏木だって」
私はその声を背に聞いた。ようやく、結果が私の名で現場へ戻ってきた気がした。
鷹城がヘルメットを外して言う。
「見たか、上の連中」
「まだ足りません」
「分かってる」
彼は短く笑った。
「だから次は、逃げ場のない場所で見せる」




