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第14話 助かった探索者の証言
助かった人の記憶は、報告書よりずっとまっすぐだ。
灯里の伝手で、崩落時に救助された探索者の一人と会えた。大学生の相沢涼太。まだ腕を吊っているが、話す気力は残っていた。
「最初、案内は青矢印で左だったんです。でも途中で非常灯が反対に流れて、係の人が『こっちが見学ルートです』って」
「係の人?」
「若い女の人でした。名札、青かった」
ひよりのストラップだ。私は息を整え、次を促す。
「そのあと崩れた?」
「いや、一度引き返そうとしたんです。でも立入禁止の札が外れてて、開いてるなら行けると思った」
相沢は悔しそうに笑った。
「安全ツアーって言ってたから、信用しました」
私は記録を取る手を止めた。信じた側が悪いわけじゃない。安全と言われた導線を、人は信じて当然だ。だからこそ監査官は、そこへ嘘を混ぜてはいけない。
帰り際、相沢がぽつりと言った。
「あのとき、最後に助けてくれた隊長、あなたの名前呼んでました。柏木さんの線で行くって」
現場ではもう、私の線で動いた人がいる。
なら私は、自分の仕事を自分で小さく見るのをやめるべきだと思った。




