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第11話 行政監査室の沈黙
黙るのもまた、加担の一つだ。
私たちは証拠を揃えて行政監査室へ上げた。複製鍵の傷、改ざんされた札、非常灯の逆流、虚偽の安全証明。けれど返ってきたのは、驚くほど薄い回答だった。
『本件は広報案件を含むため、関係各所との調整を優先する』
つまり、止めないということだ。
「今週末の都市連携イベントを潰したくないんでしょう」
灯里が鼻で笑う。
「蒼塔フロンティア、スポンサー多いですから」
「人の流れを玩具にしてるのに」
私は机を握った。監査室の返信には、真鍋の転送メモまで付いている。『柏木の私怨混じりの訴えに引きずられぬよう留意』。私怨。便利な言葉だ。被害を受けた側の声を、小さく見せるのにちょうどいい。
鷹城は沈黙のあと、言った。
「表から止まらないなら、次の事故を止めて証明するしかない」
「現場で?」
「ああ。上が欲しがるのは、反論できない結果だ」
私は息を吐いた。悔しいが、彼の言う通りだった。紙だけでは動かない人間に対しては、紙と現場の両方で塞ぐしかない。
行政監査室が黙るなら、私は黙らない。
その決意だけが、資料庫の冷気より先に胸を熱くした。




