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第10話 大手クランの安全証明
安全証明は、通すための判子じゃない。
翌日、灯里が持ち込んだ内部資料に、私は目を疑った。大手クラン《蒼塔フロンティア》の見学企画に対し、東環ダンジョン安全監査室が『問題なし』と出した証明書がある。署名欄には真鍋の名、その下に補助確認者として早宮ひより。
「この荷重計算、全部おかしい」
私は数字を追う。第五搬路の想定人数が通常探索時より少なく設定されているうえ、見学用照明と搬入機材の重量が計上されていない。
「しかも参考図面、私が三週間前に却下した旧版です」
鷹城が書類を受け取った。
「柏木の却下後に、別ルートで通したってことか」
「はい。多分、私を外すために」
真鍋は最初から決めていたのだ。私が安全証明へ判を押さないなら、私の図を奪い、私の却下をなかったことにして、最後に事故の責任だけ被せる。
灯里が静かに聞く。
「これ、出したらかなり燃えますよ」
「燃やすためじゃなく、止めるために使いたいんです」
私は証明書を閉じた。
「崩落の件だけじゃない。今も同じやり方で別の搬路が開けられているなら、次は本当に死人が出ます」
私は安全監査官だ。手柄のために数字を見るんじゃない。誰かが帰るために見る。
奪われた功績より、その事実が私を立たせた。




