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こっちもそっちもあっちもどっちもにっちもさっちもいかないけれどもわっちは元気です!  作者: スマイロハ
にっち編

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29話「人間関係」

 色々あった二学期も終わり、冬休みも何日か経過した頃の朝。

 私は今まで通りコトハさんの家に居候してすごす…のではなく、荷物をまとめてとある友人宅を訪れていた。

 玄関前でチャイムを鳴らして。


「来たよー。」


 と一言。


(…出ないな…?)


 彼女のことだからなんとなく状況の想像はつくが、とりあえず玄関扉のプルハンドルに手をかけ、案の定(かぎ)()いていることを確認して中に入る。

 そしてそのままリビングに向かい、炬燵に囚われ()()()の彼女を起こすのだ。


「トイトさん起きて!炬燵点けたまま寝ちゃダメだよ!」

「タイマーついてるから大丈夫…。」

「いや起きてるじゃん!」

「半分寝てる…。」

「半分起きてるじゃん!」


 ということで、冬休みはトイトさんの家にお邪魔させてもらうことになった。

 なんなら一人暮らし始めるまでずっとかもしれない。


「今日からよろしく、トイトさん。」


 炬燵から出る気配がないので、私も一緒に入れてもらってまったりさせてもらう。


「家賃は払いたまえよ。」

「それは…私に払える額でお願いしたいです…。」

「カネはいらん。駅前の限定100個販売チョコシューで手を打つ。」

「つまり“並んでこい”と。了解。明日行ってくる。…え、それだけ?」

「もっと厳しいのがいいのか?変態め。」

「なんで今日そんなあたり強いの…?」

「コトハについて行けばよかったのに。」


 トイトさんが言いたいのは、冬休みの(あいだ)祖父母のところへ行くコトハさんに、私がついて一緒に行っていれば自分はのんびり1人ですごせたのにという話。

 実際コトハさんには誘われたし、行ってもよかったんだけど、カノンさんの時と違って今の私はあれだから、あんまり“はじめまして”をしたくなくて断ってしまった。

 ちなみにスイさんは仕事、カノンさんはバイト、カナミさんはコトハさんと同じく祖父母の家に行ってて、ソラさんはなんか一人旅に行ってるらしい。

 予定がないのは私とトイトさんだけだったのでその2人で集まっているという訳だ。


「ココア入れて。」

「ほーい。」


 キッチンでココアを作り、炬燵から出たくないらしいトイトさんの前に置く。

 この人は私ができないことを大体把握してて、そういうのは要求してこない。

 これが気が楽ということなのか。


「トイトさんってチョコ好きだよね。」

「ココアはチョコじゃない。」

「そうだけどそうじゃなくてですね…。」


 トイトさんは両手で持ったマグカップに、立ち上る湯気を飛ばすように息を吹きかけてからゆっくり少しずつ傾けていく。


「…熱かった?」

「丁度いい。」


 炬燵の魔力か、この人の魔力か、こうしているだけでぼーっと心が落ち着く気がして、私は勝手に癒されていた。



 しばらくココアを楽しんだところで、無言に飽きたのかトイトさんは話しかけてくる。


「コトハたちとは上手く行ってんの?」

「結構いい感じだと思うよ?コトハさんも吸血するの慣れてきたみたいで、全然前より苦しくないし。」

「私も吸っていい?」


 ……は?


 突然すぎて固まる私とは裏腹に、トイトさんはココアをまた一口飲んでから。


「私も吸血鬼なんだよね。」


 と言って、口を開けて牙を見せてきた。


「……めちゃくちゃクオリティの高いコスプレ…?」

「本物。」

「マジか。」

「マジ。」


 どうやらマジでマジらしい。


「…いやでも、なんかごめん…。あんま驚かなかった…。5人目だし…。…うちのクラス吸血鬼多いよね?もっと少ないものだと思ってた。」

「まぁ、自分から言いふらすやつはいない。あと吸血鬼は優秀なのが多いから必然的に。」

「なるほど。…あ、吸いたいなら吸っていいよ?」

「いやダメだろ。」

「え!?吸いたいって言ったのそっちじゃん!」

「ヅキは吸血行為を甘く捉えてる。言葉を選ばずに言えば、あれはえっちな行為。簡単にやるな。」

「えっちって言っても、ちゅーぐらいでしょ?」

「キスがえっちじゃないと思ってんの…?」


 ……言われてみれば…。


「本気で付き合ってるならコトハたちを大切にしろ。1人でも泣かせたら許さない。」

「肝に銘じておきます…!」


 一番友達のことを考えているのはこの人なのかもしれない。

 私はつくづく友人に恵まれていると思う。


「…あれ、でもさ。結局トイトさんは血、吸わなくて大丈夫なの?」

「あー…。いや、私は血は吸わなくて平気。」

「え、なんで?」

「…私はコトハたちとは違う。吸血鬼の要素はほとんどメリットしか受け継いでない。血を吸わなくてもなんにもならない。」

「ふーん…。…それ――。」


 『みんなもそうだったらよかったのに』と、私は言おうとしてしまい、トイトさんに人差し指を唇に当てられて()められた。


「コトハたちの前では言うな。」

「…ごめん。…考えなしだった。」


 こういうところが私のよくないところだ。

 不器用なのは個性として付き合っていくとしても、直感的な言動は、今後は改めていかなければならない。

 4人全員、幸せにするんだから。


「…で?上手く行ってんの?」

「うーん…。」


 みんな真っ直ぐ好意を向けてくれる。まだまだ上手く応えられてはいないけど、それでもできる限りのことはやっているつもりではある。

 そう考えれば。


「私にしては頑張っている(ほう)なのではないでしょうか…?」

「ふむ…。…まぁいいでしょう。合格とします。」

「ありがとうございます先生。」


 なんとか合格点に達したらしい。よかった。



 ぼーっと雑談しながら午前中をすごして、昼。

 昼食は話し合いの結果一方的に『ピザを頼む』ということに決まったので、私がキッチンに立たせてもらえる日はまだ先のようです。

 ということでピザを頂きながら。


「トイトさんってチョコもだけど、それ以上にパン好きだよね。理由あるの?」

「いや…別に…。好きだから好きなだけ…。」

「そりゃそうか…。」

「…一応、簡単に食べられるからっていうのはある。」

「なるほど。」

「ヅキは?好きな食べ物あんの?」

「…毒じゃなければなんでも好きかも…?」

「そんなんでよく好きな理由聞けたな。」

「えへへ。」

「家追い出すぞ。」


 追い出される前に食べ終わってしまいしょう。



 昼食のあとは課題を進めます。

 一気にさっさと終わらせてしまって構わないんですが、こういう課題は内容がちゃんとしてるので学力を維持するために毎日コツコツ進めることにしています。

 というのは嘘で、普通にヒマつぶしに一気にやってます。

 だって休みの日は遊びたいし…。


「トイトさんってスイさんソラさんに次ぐなんばー3じゃん?いや、ソラさんとの差はそんなにないんだろうけど。」

「それが(なに)?」

「『めっちゃ勉強してる!』ってイメージはないのに、よくあの2人について行けるなーと思って。」

「お前が言うな。」

「なんでよ!?言っとくけど、私はもう勉強大嫌いなんだからね?二学期の期末試験も普通だったし、勉強してないとどんどん学力落ちるタイプだよ?私は。」


 休み明けの試験も多分ぜんぜん点数は低くなる。問題を読むのがまず嫌いだし。

 なので赤点はとらないけど平均点もとらないかな。



 課題をある程度終わらせたので、ここからはのんびりとトイトさんのゲーム相手になります。

 アクションゲーム…は、素人じゃ勝てるワケない。

 ならパズルゲーム…は、入力遅いんだから勝てない。

 相手にとって不足しかない…。申し訳ない…。


「対戦ゲームじゃなくて協力ゲームにしない…?」

「ヅキをいたぶるのが楽しいのに。」

「家に居させてもらってる手前なんにも言えないんだからそういう冗談やめてよ…。」

「なぜ冗談だと…?」

「…え、冗談なんだよね…?」

「……うん。」

「え、(こわ)この人。」


 仲良く協力ゲームで遊びました。



 そんなことをしていたら、気付けば陽も落ちてそろそろ夕食の時間。

 降り始めた雪が街灯に照らされて、普段通りの道も知らない様相を見せる刻。


「私に作らせる気がないなら(そと)食べ行こうよ。」

「雪降ってるのに…。」

「だからこそでしょ。あったかい…焼うどんとかどう?鉄板焼きの。」

「まぁいいけど。」

「決まりね。ほら着替えて!そのままじゃ凍えちゃうよ!」

「雪降ってるから…。」


 渋々ダウンに袖を通しながら、トイトさんは気怠そうに玄関を出る。

 先に準備して外で待っていた私は、その間に調べたお店を見せてここでいいか聞いた。

 トイトさんは気怠そうだけど嫌そうではなかったので、そのまま私が先導する形でお店へ向かって歩き出す。


 帰る頃には、雪が少し積もっているかもしれない。

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