シングル
「花野村」には、空家になった古民家がいくつもあり、移住者は、そこに暮らしています。
明るい声の
「おはようございます!」で始まる愛の家に芽依と実弥が、暮らしている。今朝の朝食作りは、実弥の番だが、台所で座り込んで動かないでいる。
後から起きてきた二人が、心配そうに顔をのぞき込む。
「気持ち悪いの。」と弱々しい声が返ってきた。
芽依とここに短期移住して来てもうすぐ5か月になる。
「ねぇ、最近生理無いでしょ。生理になるといつも辛そうにしていたけれど、ここに移住してから、そんな状態ないよね。」と単刀直入に芽依が聞く。
実弥が小さく頷いた。
「えっ!そうなの!」と愛が驚く。
「相手は、誰なの?」の問に芽依が
「優君でしょ?」それには、返事の無い実弥だった。
「一人で育てます。優君には、関係ないの。私だけの赤ちゃんなの。」テーブルに伏して背中が、震えている。声を上げずに泣き始めた。
そこへなつがみうを連れて出勤して来た。
泣いている実弥を見てみうがかけより頭を撫でた。いつも自分がされているから、自然と手を出したのだろう。
なつも愛も相手を知らないのでついつい芽依に質問してしまう。
目を赤くした実弥が、顔を上げぼそぼそと話し始めた。結婚するつもりで交際していた優から、
「妹が、結婚に反対するんだよ。『優兄は、ずっと独身』と決めつけるんだよ。」と言われ、諦めていたところに、このアルバイト募集を知り、将来移住もいいかもしれないと考えた。
施設で育ち親もいないので両親揃った人からは、軽蔑されている感じがした。妊娠している事に気が付かないまま心機一転やって来た。
環境を変える事で自信のある自分になり、独立心をもった強い女性になりたかった。
だから、妊娠に気づき眠れない夜が続いていた。
「中絶も考えたんだけれど。」と聞いた途端に愛が、
「諦めちゃだめよ。産んだらいいわ。ここで皆で育てていけるわ。
世の中には、生きて行きたくても、突然の災難で死んじゃう人が、いるのよ。パパもママも皆、家族皆、ずっと元気に暮らせると思っていたの。
お腹の子の命を勝手に止めちゃだめよ。」と強い口調で言った。
愛は、珍しく親の話をして、大きな深呼吸をした。
「あのね。私も過去が思い出せず、恋に後ろ向きだったの。男性に誘われてもいつも断った。
実弥ちゃんみたいに恋をしてこなかった。人をうんと愛したいって、想うのよ。
応援するから、頑張ってみたら。人生長いから一人で子供育てるのは、大変だろうけれどね。
私は、未経験だけれど、なつがいるもの。ねっ。」
なつが、ゆっくり微笑んだ。
「子供って可愛いよ。」と。
そんな中、部屋の隅で芽依がスマホを見ている。そして突然話し出した。
「お久しぶりです。芽依です。お元気ですか?
ねぇ、聞いたわよ。パパになったんですって。おめでとうございます!」
その言葉が聞こえた途端に実弥が慌てて駆け寄った。
「あら、実弥ちゃんから連絡行っていると思ったわ。とにかくおめでとうございます。
知らなかったんですか?
やだ~。内緒でした?
えっ?今どちらなんですか?
えっ〜、高知。
こちらには、いつ戻られるのかしら?
えっ? はっ?
あっ。ごめんなさい。何だか電波悪いみたいで、聞き取れないわ。
また連絡させて頂きますね。」
「やめて、やめて。」と実弥が駆け寄ったところで電話を切った。
「電波の具合なんて悪くないわよ。実弥ちゃんにかけてくるんじゃないかな。
優君にも責任ある事でしょ。実弥ちゃん一人で考えて決める事では、ないでしょ。」
「私、着信拒否してるの。」
芽依の強引な方法は、解決が早いかもしれないが、連絡は、来なかった。
「とにかく、まだ病院に行って無いんでしょ。それが先でしょ。」となつが言った。
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あなたには、愛する人がいますか?
続きは、また来週の投稿予定です。




