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J-POP GOD Sustainer ー 神話の裏側に隠された若き神たちの奮闘 ー  作者: 神代針音


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第四話 ニニギ、誘われ音守処へ行く

 いつものようにあぷりを開くと一通のめっせーじが届いていた。



『ニニギ様、音守処です。本あぷりのご利用ありがとうございます。無料視聴期間があと10日ほどとなっております。つきましては継続か否かのお返事をくださいませ。継続されない場合は無料視聴期間経過後は自動であんいんすとーるいたします。』

 とある。



「ああ、そういえば言ってたな。お掃除さぶすくすればいつでも聞けるって。」



 迷わず「継続」とタップする。するとめっせーじの続きがあらわれた。



『石の狛犬を迎えに行かせました。後を追ってください』



 外に出ると一頭の石の狛犬が付いてこいと言わんばかりに首をしゃくる。



「どこに連れて行くんだ。」

「ちゃんと帰れるんだろうな。」



 何を話しかけても返事はない。

 気付けば見たこともない鳥居が目の前にあらわれた。



 ん?ここが『音守処おともりどころ』か?

 ……たぶん。



 鳥居をくぐる頃には、少し歩いただけなのに額に汗がにじんでいた。



 春の風はまだ残っている。

 けれど陽射しはもう初夏のものだった。





 ここまで案内してくれていた狛犬はもういない。どこに行ったんだ?



 山の音が、すっと遠ざかる。

 風は吹いているのに木の葉は揺れず、小鳥も鳴かない。

 静かなのに、耳の奥では誰かが鼻歌を歌っているような気もする。



 木造なのか石造りなのか見当もつかない建物。

 外見は古びている。しかし、不思議と傷んだ感じはない。

 何百年も前からあるようで、昨日建てたようでもある。



 建物の前には湧水があふれている岩とその前に小さな柄杓が置かれている。

 何も考えずに手と口を濯いだ。



 建物の前に立つと、引き戸が音もなく左右へ開いた。

 おそるおそる一歩、足を踏み入れると何もしないのに扉は勝手に閉じた。



「うわ……。」

 思わず声が漏れた。店の中は想像とはまるで違っていたのだ。

 壁一面にレコード。その隣にはCD。カセットテープもある。

 さらに、穴の開いた巻物や、つやつやした細長い木札まで並んでいる。



 それらが何なのかは知らない。

 ただ、ニニギには音を記録するところと認識できた。理由はない。本能で感じたのだ。



 そして反対側の壁には太鼓や笛と並び、見たことのない弦楽器らがある。



「これは、音を鳴らすもの?」



 おそらくそうだと思うが、見た事のない楽器に面くらう。



 近くにある「たぶれっと」にはこう書かれている。

『楽器の名前、演奏方法を調べたければ、本たぶれっとを持って楽器に触れてください』



 試しに近くにある楽器に触れてみる。

 すぐに表示される。



「バイオリン 4本の弦を弓で擦って音を奏でる」



「グランドピアノ 弦を叩くことで奏でる鍵盤楽器」



 他にも「和太鼓」「シンセサイザー」「法螺貝」数えきれないほど陳列されている。

 しかも、ちょっと目を逸らすと楽器が変わっている。

「二胡」「エレキギター」「尺八」「トランペット」



 それにしてもサイズ感がめちゃくちゃだ。この建物に収納しきれるはずがないだろう。

 きっと、ここはそういうところなんだ。

 ニニギは深く考えるのをやめた。



 奥には古びた蓄音機。レコードプレーヤー。

 見たこともない最新式っぽい機械。



 そしてなじみのない高さの卓と長い腰掛け。



 ここに座ると卓上には『たぶれっと』が置いてあり、



『ご注文はこのたぶれっとから伺います』

『当店は全てせるふさーびすになっております』



 と書かれている。



 そして、画面が変わる。



『ニニギ様

 ご来店、ありがとうございます

 喉が渇いたでしょう

 季節限定の桜すかっしゅはいかが?

 隠れ渓谷で千年かけて磨かれた天然炭酸水を使用

 桜の季節だけお出しできる、音守処自慢の一杯です』



 PR文と美味しそうな写真が目を惹く。

 このきゃっちこぴー、上手いな。ここまで歩いて汗かいたしな。つい飲みたくなる。



 たぶれっとから注文し、かうんたーに自分で商品を取りに行く。

 席に戻ると自分のすまほに新しいめっせーじがあるのに気が付いた。



『ニニギ様

 音守処おともりどころの『神掃除さぶすく』にご契約ありがとうございます。

 神掃除さぶすくは神の資格のある方々だけに授けられる特別なさぶすくです。

 四半期に一度以上のお掃除をくりあする必要があります。

 それではごゆるりと。

 落ち着きましたら本日のお掃除をお願いします。』



 もう、何も言うまい。

 おとなしく桜すかっしゅを飲んだ後、立ち上がった。



 ああ、美味かった。甘さ控えめのしゅわしゅわ感がいい。ほんのり桜の香りが鼻を抜ける。

 これはクセになりそうだ。

 さて、掃除、掃除。



 すると、音にならない音、声にならない声が直接お腹の中、肝というところだろうか、

 肝――心よりももっと奥の何かへ、言葉が直接届いた。



 ”” 音は、きれいな場所を好む ””

 ”” 掃除のイロハ、掃く・拭く・磨く ””



 そう聞こえると、壁に立て掛けられていた一本の箒が、目に入った。

 うーん、なんだか「手に取れ」と主張している。



 ……どうやら。

 初くえすとが『掃く』ということが理解できた。

 まず、『掃く』をくりあしなければいけない…らしい。

 ぱすという選択肢は、ない…らしい。





 箒を手に取る。

 思ってたより軽い。



「おお、いいね。軽くて使いやすそう。

 では、始めますか!」



 箒を思い切り振り回す。



 ぶんっ!



 ”” 違う! 埃をかき混ぜてはいかん! ””



 見れば、さっきまで澄んでいた空気が、一気に埃に乱されている。

 店中をふわふわ舞っている埃は、日の光を浴びて、やたらキラキラしている。

 そして、楽器や卓の上にふんわり落ちてゆく。



 再度、箒を振り回す。



 ぶんっ!





 ”” なっとらん!やり直し! ””



「ううっ!」

 ダメ出しを喰らった。



 もういっちょ力任せに。

 ぶんっ!



 ”” 掃除は、埃を飛ばすことではない。 ””



 何がダメなんだ?

 こんちくしょう!

 ぶんぶんっ!

「おお、ないすしょっと!」



 ”” 馬鹿者!箒はごるふくらぶでない。 ””



「……あ。」

「ですよね。」



 ”” もういい!今日はそのハタキでまき散らした埃を祓え。明日、やり直せ。 ””



 明日の出勤?が一方的に決まってしまった。



 ”” ハタキは、そーっと埃をぬぐうようにかけるんだぞ。 ””



 言われた通りにハタキで埃を落とし、中途半端ながら、ひとまず、掃除を終えた。

 床には埃がパラパラと落ちていた。



 帰宅時、とぼとぼ歩きながら思った。

 うちに帰ったらお母ちゃんに箒の仕方を習おう。



 ニニギは、一応、向上心はあるのだ。





 そして掃除日誌に記録される。



 担当:ニニギ

 評価・コメント:初の掃除とはいえひどすぎる。まるでなってない。箒はごるふくらぶでない。


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