第3話 風の使い魔ノルムと魔物の森バァグーガへ
裏庭の研究棟から人目を忍んで村外れの空き地にやって来たセトと風の使い魔ノルムは、人目につかないよう細心の注意を払って、風の使い魔ノルムの風魔法で魔物の森バァグーガへ飛び立とうとしていた。
ヒョーデル村から魔物の森バァグーガまでは馬を走らせ30分程度で着く距離だ。
目を閉じてノルムは風魔法の呪文を詠唱する。
二人の体をフワッと風が纏わり宙に浮いた。
「しっかと吾輩に付いて来るのだぞ」
「魔法すげなぁ。浮いてる。高くて結構怖いね」
「話を聞いてるかセト。吾輩の背中を見るのだぞ」
「背中ね。わかった」
先頭に位置したノルムがセトを先導し飛び立った二人は、魔物の森バァグーガへ向けて大空を滑空した。
「セト。今気付いたのだが、おぬし黒髪赤目の忌子かにゃ」
「そうだけど。それがなにか」
「それがなにかっておぬし、よくこの国で生き延びてきたな。本当は赤子の内に殺されている筈だにゃ」
「えっ、そうなの」
「何も知らないまま生きてきたのか。まっそれはそれで幸せだにゃ」
「忌子って」
「この国でのお主のような黒髪赤目で生まれてきた子を忌子を言うてな、その黒髪と赤目は世界全てを破壊し尽くした魔神アビゼビュートの特徴だから皆に忌み嫌われ、魔神の子と呼ばれているのだにゃ」
「なぜ忌子が魔神の子として殺されなきゃならないの」
「セトおぬし何も知らないんだな。学校には行ってないのか」
「行ってない。赤ん坊時から父さんと魔物狩りしてた」
「なるほど。マキシュナとヨハンはおぬしを守るためにそうしたのだろう。本当はおぬしは殺されていたのだにゃ」
「殺されていた?」
「それはだなにゃ、何せヒョーデル村がある神聖エストラント公国は、創造神メヨーテセシュルを崇拝するリムラ教が国家政治の実権を握る神聖王権国家でな、大司教である女王様の言うことは絶対で、女王様の言ったことがリムラ教の教典になっていると謂われて、そのリムラ教の掟にある”魔神アビゼビュートと同じ黒髪と赤目を持つ人種族の子が誕生したならば、生誕した赤子のまま魔神アビゼビュートが創りし魔物の森バァグーガに帰せ”とあり、教会で洗礼を受ける際に処分される決まりになっているのだにゃ」
「魔神アビゼビュートはそんなに凄かったから、俺のような黒髪赤目で生まれてきたら殺されるくらい忌み嫌われて、みんなは怖がっているのか」
「そう、今から行く魔物の森バァグーガはだな、神聖エストラント公国のほぼ中央に位置して、周囲10キロメートルと広大な窪地の中に、魔素の瘴気が渦巻く濃い霧に覆われた魔物が棲む森としてエルフ種族は恐れ、人種族だけが立ち入る事ができる魔物の森なのだにゃ」
「そんで」
「だがにゃ、地形的に人種族が誰しも入る事を拒む深さ1000メートルがあろう断崖絶壁が、周囲10キロメートルにわたって広大な窪地を形成してな。その広大で断崖絶壁な窪地は太古の神と魔神との大戦で出来たといわれているだにゃ」
「へぇそんで」
「そんでなにゃ、リムラ教の伝承記によると、創造神メヨーテセシュルが魔神アビゼビュートを力づくで大地に押さえつけて動きを封じた時に、広大な大地が深く窪んだと言い伝えられているのだにゃ」
「すげえ戦いがあったんだね」
「ああすげえ戦いだったんだにゃ。そんでその魔神アビゼビュートが打倒され朽ちた魔神アビゼビュートの体が、いつしか魔素の瘴気が渦巻く濃い霧に覆われた森となり魔物が生まれ人々から魔物の森バァグーガと呼ばれるようになったとリムラ教の教典にあるのだにゃ」
「着いたよノルム」
「人の話聞いてたか」
二人は深い崖の底に辿り着き魔物の森バァグーガに降り立った。
不気味に鬱蒼とした瘴気漂う魔物の森バァグーガは、いつもの通りの魔物の森バァグーガだ。
忌子だの魔神の子だのって、俺をどこまでも理不尽な境遇を与えやがる神め。
母が12の年に来るなって言っていた魔物の森バァグーガに来てやったぞ。
さぁ、もっと俺に理不尽な境遇を与えてみやがれ神よ。
ざまぁしてやる。
百瀬琉人はそう強く思いを胸に、力強い味方である風の使い魔ノルムと共に魔物の森バァグーガの奥へと分け入っていった。
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