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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第14章
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Stars Story3

春休み明け最初の活動日と同時に来た特殊な依頼───それは、翌日の夜中に殺し屋を捕まえてほしい、というものだった。

 春休み明けの、"ASSASSIN"最初の活動日。


 優樹菜は、そんな中、早速来た、"特殊な依頼"に、頭を悩ませていた。


 この依頼を、受けるか否か───。


 受けたくないとは、思わない。いや───むしろ、受けるべきだと思う。


 だが───気掛かりなのは、この依頼の内容を説明した際の、メンバーの反応だった。


 明日───4月10日。金曜日の11時50分頃。町中の人気のない路地に出没する予定の、二人組の殺し屋を捕まえてほしいという依頼。


 その内容を、オフィスに揃った5人に説明すると、


「夜に仕事しに行くのっ!?なにそれ!めっちゃ楽しそうじゃんっ!」


 案の定、葵が手を叩いて飛び跳ね、


「何でそんな夜中に働かないといけねぇんだよ」


 案の定、勇人に、うんざりしたような目を向けられた。


「説明は、最後まで聞いて」


 優樹菜は、冷静な口調を返した。


「別に、強制された仕事じゃない。断ってくれてもいいって、お母さんは言ってくれた……でも、わかるでしょ?今、特別組織対策室が、大変なこと」


 優樹菜は、主に、勇人を見つめて言った。


 北山警察署特別組織対策室は、2日前に東市で発生した、殺し屋によるものとみられる殺人事件に、捜査協力を行っている。


 殺し屋による関与が疑われているということがあり、より迅速かつ慎重な捜査が必要とされ、舞香は連日、朝から東市に向かい、夜遅くに家に帰ってきて、また朝になったら東市に……という生活サイクルを送っている。


 ただ、その中で、通常の業務も並行して行え、という指示が、対策室を管理している人間からあったらしく、舞香は捜査協力を行いながら、能力を使って、殺し屋の情報がに載った名簿を見つめ、翌日に北山町内に出没する予定の殺し屋の調査を行った。


 そして───結果、見つかったのが、今回、依頼された殺し屋2人組だった。


「亮助さんは、署に残りながら、資料やデータを用いた捜査協力と、通常業務、それから、この春から配属されることになった新人さんの指導を行ってるっていう話は、知ってるでしょ?」


 優樹菜が勇人に問いかけると、葵の隣に座っていた蒼太が、こくりと頷いた。優樹菜は、蒼太が知っているということは、勇人も同じ話を聞いているということだと判断する。


「その亮助さんがやっている仕事だって、定時退勤で済むような仕事量じゃないはず。たしかに、いつもと動く時間が違って、ちょっと大変なことにはなるだろうけど、でも、私たちが、そのちょっとを頑張れば、お母さんたちの力になれる。口だけ言って、お前は何もしないんだろって思うかもしれないけど───私もその日は、現場に一緒に行って、協力するから」


「えっ!?優樹菜が来てくれるの!?」


 葵が、目を見開いた。


「葵や矢橋くんはともかく、光ちゃんは、夜中に出掛けることになったら、親御さんへの説明に困っちゃうでしょ。光ちゃんの代わりになれるかは分からないけど……私が行って、サポートする」


 優樹菜が答えると、葵は、珍しく、「うーん……」と首を傾けた。


「たしかに、そうかもだけど……でも、今回、殺し屋、2人いるんだよね?」


 確認するように優樹菜を見つめた葵に続き、翼が口を開いた。


「あおちゃん一人で、2人を同時に相手するのは……少し、厳しいかもしれないですね」


 その発言に、優樹菜は、「ああ……」と、自分の考えが甘かったことに気付き、唇を噛んだ。


 解決班の仕事は、葵と光が殺し屋の確保を担当し、勇人2人が把握しきれない殺し屋の動きをナビする、という方法で行われる。


 優樹菜は、想像した。光の代わりに自分が現場に行ったとしても───自分は、殺し屋と戦えない。


 葵や光のような運動神経や能力の汎用性が、自分にはないのだ。


「あたしが夜に、瞬間移動で光の家まで光を迎えに行って、こっそり抜け出すのは?」


 葵が提案すると、光は、申し訳なさそうに顔を上げた。


「そうしてくれようとする気持ちは、有り難いんだけど……うちの親、いつも、寝るのが、11時より遅くて、たまに、寝る前に、私の部屋をこっそり覗いていることがあるの。自分たちが寝る前に、私が寝てる姿を見たいっていう理由からなんだろうと思う。前に、夜中に目が覚めた時に、部屋のドアがちょっとだけ開いて、その奥から、お父さんとお母さんが、こっそり話してる声がして……それで、分かったんだけど……」


 光は、両親の行動を、どこか恥ずかしそうに語った。


「まあ……光ちゃんのご両親は、光ちゃんのことが可愛くてやってる、親心だと思うけどね」


 優樹菜は、光の言葉をフォローし、「けど……」と、腕を組んだ。


「それだと、やっぱり、葵がこっそり迎えに行く方法でもまずいね……。光ちゃんがいないことがご両親に見つかったら、大変なことになっちゃう」


「僕があおちゃんに迎えに来てもらって……っていう方法でも、親に見つからないリスクは、ゼロじゃないかもしれないしな……」


 翼が、呟くように言った。


 翼の能力なら、防御などの方法で、殺し屋との戦闘の役に立ちそうだが───ということだろう。


「あの……ぼくは……?」


 蒼太が、控え目に手を上げた。


「お前が来たところで、見てるだけだろ」


 勇人が、蒼太に目を向ける。


「そういう意地悪言うんなら、自分は絶対に来なさいよ」


 優樹菜は、勇人を睨んだ。


「あー!!」


 葵が唐突に、大声を上げた。


「わかったー!!明日さっ、学校からまっすぐ本拠地に来て、夜に仕事して、そのまま本拠地に泊まっていけばいいんじゃないっ?」


 ※


「泊まり……?」


 優樹菜が聞き返すと、勇人が息を吐きだした。


「何でわざわざ面倒なこと増やそうとすんだよ」


「ちょっと勇人!勘違いしないで!あたし、それでみんなと遊ぶつもりじゃないよ!仕事のため!夜に家抜け出すのはダメでも、最初から、泊まりに行くってことにしたら、光たちも、きっと本拠地に来れるでしょっ?明後日土曜日で、学校ないし!」


「たしかに……私は、友達の家に泊まりに行くって話したら、親は許してくれそうだけど……」


 光が答えるも、勇人は、葵から視線を背けた。


「たかだか30分足らずで終わることに、そんな手間かけんなよ」


「じゃあ、勇人!家から歩いて現場に行くのと、本拠地から現場に行くの、どっちがいいか考えて!」


 葵が、ぐいと勇人に詰め寄る。


「大して距離変わんねぇよ」


 しかし、端的に、正論が返される。


 葵は、「うっ……!」と僅かにダメージを食らったような声を漏らしたが、すぐさま、「あーあ!」と天井を見上げた。


「夜中に優樹菜と一緒に現場まで行って、誰かに襲われたらどうしよう!不審者うろついてたらどうしよう!本拠地からみんなで一緒に行けたら、きっと安全なのになー!」


 白々しい口調に、勇人が冷めた目を向ける。


「だったら、お前の力使えばいいだろ」


 たしかに、葵の能力を使えば、現場には10秒足らずで着く。


 葵は、ついに返す言葉をなくしたのか───「ねーえ!!」と、突然叫びだした。


「お願いお願い!みんなと一緒に本拠地泊まりたい!!お願いお願いお願い!」


 その場で駄々をこねながら飛び跳ね始めた葵を、優樹菜は、「ちょっと、やめなさいよ」と宥めようとして、その手を、ぴくりと止めた。



 不意に───茜の声が蘇った。



 "何事も、永遠に続くものって、ないんだよね"



 みんなと過ごせる時間は、永遠じゃない───。


 本拠地に泊まる───計画しないと、起きえないこと。


 決して、遊びではない。でも、きっとそれは、6人に共通した思い出になるはずだ。


 ───それを、幻想にしてしまって、いいのか?


「……葵」


 優樹菜は、葵の背中に手を触れた。


「分かったから、そんなに騒がないで」


 優樹菜は、そっと息を吐きだし、5人を見つめた。


「こんな依頼がくる気配も、めったにないし、やってみる?」


 5人の視線が、自分に集まった。


「そうしたらいつもと同じように、依頼解決、解決班3人にお願いできそうだし、解決した後、早ければ、土曜日、日曜日には取り調べの依頼がきたり、資料の制作でのために本拠地に集まることになる。本拠地に泊まって、次の日、そのままいる状態だったら、行き来しなくてよくて、楽なんじゃない?」


 その提案に対する、最初の反応は、蒼太の、「たしかに……」という呟きだった。


「それじゃあ……金曜日から、2泊3日で本拠地に泊まることができたら、一番いい形になりますかね……?」


 続いて、光が首を傾けた。


 優樹菜は、その言葉に、「そう───だね」と頷く。


「もちろん、みんながよければの話だけど。───どう?それで、いい?」


 優樹菜は、5人の姿を見つめた。


 そもそもの提案の元である葵はともかく───蒼太と光は、先程の反応からみて、賛成してくれているようだつた。


 問題は───「いい?」と聞いて、「いい」と答えが返ってくることが、まずない男なのだが───


 優樹菜は、反論を覚悟して、勇人に視線を向けた。


 ───しかし、勇人は、優樹菜の想像と、違う反応を見せた。


(……え……?)


 勇人は、じっと、優樹菜のことを見つめていた。


 その瞳の中に映るものが何なのか優樹菜が確かめようとする直前に───勇人は、すっと、その目を逸して、優樹菜たちがいない方向に視線を向けた。


 優樹菜は、出そうと用意していた言葉を、見失った。


 これは───これ以上、何を言っても無駄だという意思表示なのだろうか……?



 若干の違和感を覚えつつ、優樹菜も勇人から、視線を移す。


「……翼くんは?それでも、大丈夫?」


 正面に座っている翼を見つめると、彼は、ふっと視線を上げて、


「───はい」


 と、口元を微笑ませて、頷いた。


 その反応に、葵が、「わー!!」と、歓声を上げて、手を叩く。


「やったーっ!!やろうよっ!みんなで合宿!」

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