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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第14章
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Stars Story2

友人たちと過ごす放課後───親友の言葉が優樹菜の心に、ある気付きを与え───?

 放課後。


 優樹菜は、茜から、「お昼ご飯、どこかに食べに行かない?」と誘われた。


 優樹菜は、それを了承しつつ、「あっ」と、教室を出て行こうとしていた花園奈穂を呼び止めた。


 奈穂とは席が前後だったこともあり、朝教室に来てから何度か言葉を交わし、優樹菜のもとにやってきた茜も、持ち前のコミュニケーション能力と優しさで、奈穂に話しかけていた。


 奈穂は最初、茜の派手な見た目に圧倒されるような様子を見せたが、徐々に、茜に心を開き、「今から茜とご飯食べにいくんだけど、奈穂ちゃんも一緒に行かない?」という誘いにも、嬉しそうに頷いてくれた。


 3人は、学校からバスに乗って、北山駅に向かった。駅の周辺には、飲食店が多い。


「奈穂ちゃん、ハンバーガーって、好き?」


 バスを降りて歩きながら、茜が奈穂を振り返る。


「うん。あんまり、お店には入ったことないんだけど……たまに、親が買って来てくれる」


 奈穂は、僅かに照れくさそうに答えた。


 茜は、奈穂の答えに「そっか」と何気ない頷きを返し、


「じゃあ、あそこ、入らない?」


 そう、ある場所を指さした。


 それは、有名チェーンのハンバーガーショップであり、優樹菜と茜が、1年生の時、何度か訪れたことのある場所だった。



 優樹菜も、奈穂と同様、ハンバーガーのようなファストフードを食べる機会を、あまり持たない。


 以前、茜とこの店を訪れたのはどれも、今日のような始業式や終業式、テスト期間などで学校が早く終わった時たまにしかない日のことであり、家族で外食するとしても、その機会が滅多にないからか、このような形式の店は、選ばれることがない。


 3人でテーブルを囲みながら、各々が頼んだものを食べる。


 周りには、自分たちのような制服を着た学生グループが何組かいるが、優樹菜は、自分が今、目の前にいる茜と奈穂との3人だけの世界にいるような気がした。友達と、学校ではない場所で同じ時間を過ごしているという感覚は、優樹菜の心に、特別な感情を抱かせた。


「今日、バイトなくてよかったなぁ」


 ストローで吸い込んだ飲み物の容器を置き、茜が呟いた。


「茜ちゃん……バイトしてるの?」


 奈穂が、茜に尋ねた。


「うん。家の近くにある、お弁当屋さんでね。いつもは、学校帰りの2時間と日曜日に」


 茜が答える言葉を聞きながら、優樹菜は、去年の冬、初めて茜のバイト先を訪れた日のことを思い出した。


 学校からバスに乗って、15分。バス停を下りてすぐの場所にある、「おかえり亭」という名の弁当屋は、50代の夫婦が営む、小さな店だった。


 働いているのは、岡谷という名の店主夫妻と、アルバイトの茜の3人だけ。


 岡谷夫妻は、どちらも、明るく、人がいい人たちだった。3人の子どもの親だというが、3人とも自立して家を出た後で、茜を娘同然のように思っているのだと、優樹菜に教えてくれた。


 家族の晩ご飯のつもりで購入させてもらった弁当は、とても美味しかった。


「バイトは楽しいし、岡谷さんたちには、本当にお世話になりっぱなしだから、その恩返しをしたい気持ちは尽きないんだけど」


 茜は、ストローを指先で回しながら、口を開いた。


「でも、こういう時、友達と遊べる時間って、大事だなぁって。高校の3年間って、あっという間だって聞いたことはあったけど、終わってみたら、1年が過ぎるの、本当に早くてさ、あの速さで残りの2年が終わっていくのかなって考えたら、あたし、高校生でしかできないこと、ちゃんと取りこぼさずにいたいって、思った。こうやって、放課後に、何気ない話する時間とか、休みの日にどこか行く予定とかーーーゆきとは、去年あんまり、できなかった分、奈穂ちゃんとは、これから新しく、つくっていきたい」


 優樹菜と奈穂は、淡々と言葉を語る茜の姿を、ただじっと、見つめていた。


「何事も、永遠に続くものって、ないんだよね」


 茜が、ふっと、視線を上げた。


 優樹菜は、目が合って、ドキリとした。


「だから───今しかできないことを、今、ちゃんとやる。いつかじゃなくて、やろうと思ったその時に。これが、あたしの、高校2年の目標」


 茜は、そう言って、すっと背筋を伸ばした。


 優樹菜は、その姿から、目を逸らすことができなかった。


 いつも一緒にいる───これから先も、ずっとそうだと信じている、親友の姿。


 その、見慣れたはずの親友の瞳が、今、とても、大人びて見えた。



 私は───茜と同じこと、思えてたかな?



 ぽつりと、空っぽな頭に、そんな言葉が浮かんだ。


 自身の心に問いかけて───目の奥に浮かんだのは、茜や、奈穂ではなく───あの、5人の顔だった。


 いつも一緒にいる───これから先も、ずっとそうだと信じてる。


 これから先も、ずっと───それは、本当?


 高校生活は、残り、2年。


 高校を卒業して、大学に行ったり、就職したり───そうなっても、私は、”ASSASSIN”にいる?みんなは、”ASSASSIN”にいる?



 ───わからない。



 先のことなんて───未来のことは、きっと、誰にも、わからない。


 このまま、放課後に本拠地に行って、依頼を引き受けて、それを解決して、また次の日も、それを繰り返して───いつか、その日の終わりが来るのかもしれない。


 その未来を想像した瞬間───目の前にある景色が、空っぽになった。


「───優樹菜ちゃん?」


 すぐ隣でした声に、優樹菜は、はっと肩を揺らした。


 見ると、奈穂が、眼鏡の下の瞳に不思議そうな色を浮かべていた。


「ゆき、大丈夫?いきなり、黙りこんじゃって。何か、あった?」


 向かいに座る茜が、心配そうな目で自分の顔を覗きこんでくる。


「う───ううん。大丈夫。ごめんね、ちょっと、ぼーっとしちゃってた」


 優樹菜は咄嗟に笑顔をつくり、手を振って、誤魔化した。

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