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”ASSASSIN”—異能組織暗殺者取締部—  作者: 深園青葉
第13章
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March Story29

新しい家の暮らしは、先の見えない未来の始まりだった───。

 新しい家での生活は、日に日に、息苦しくなっていった。


 北山から遠く離れた町───黒霧市の中心にある、マンション7階の一室───そこが、清水家の、新たな住まいだった。


 北山の家から比べると、広さは半分ほど。リビング、"父"と母の寝室、子供部屋───部屋という部屋は、それしかない。


 子供部屋で、教科書を黙読していた勇人は、顔を上げて、息を吐きだした。


 内容が、全然頭に入って来ない。このまま、学校に行けない日が続いていったら、どうなるんだろう。───その疑問は、頭が痛くなるほど、考え続けたことだった。


 この家に来たばかりの時───母は、勇人に、こう言った。


「新しい学校に、今すぐは行けないけど、いつか行けるようになる日が、絶対来るからね」


 自分を安心させるような、母の優しい笑顔に向かって、「いつかって、いつ?」と問いかけることは、できなかった。


 視線を移した先にある窓には、未だに見慣れることのない景色が映っている。


 どんなに目を凝らしても、視界を覆うのは、ビルの壁───それしか、ない。


 不意に、源新一が暮らす、あの洋風の建物から見た、ビル群の景色を思い出した。


 今、窓の外に見えるビルの壁は、あのビル群のものよりも、ずっと綺麗で、新しく見える。───なのに、勇人には、目の前に見えている景色の方が、不気味で、無機質に感じられた。


 あのビル群に、あの場所に、もう一度行きたい───そう、願う度、感じる胸の苦しさが、それがほぼ不可能であることを知らせてくる。


 ここから北山に行くまでには、電車で、2時間以上の時間がかかる。誰にも気付かれず、家を抜け出して帰ってくる───その行為をやり遂げられる自信を、勇人は持っていなかった。



 "お母さんが、絶対に、この状況、何とかするから……。勇人と蒼太のこと、絶対、幸せにするから"



 蘇るのは、あの日の───母の声だ。


 この家は、殺し屋によって支配された家。


 今、自分の人生は、"彼ら"によって、決められようとしている───。


 ───ただ、勇人は、信じていた。母の言葉を、信じていた。



 ───この状況から抜け出せる日が、きっと来る。




 ───そう願う毎日を繰り返すうち、気付けば、季節は、春へと、変わっていた───。



 ※


 不意に、目が覚めた。


 今が何時か確かめようと時計を見上げるが、部屋の中が真っ暗で、目を凝らしても時刻を確認することはできなかった。


 隣で蒼太が眠っている姿を見ると、今は、深夜の最中であるようだった。


 勇人は、天井に向かって息を吐き出し、窓の方に向けて、寝返りをうった。



 その時───カーテンの向こうで、何かが、光った。


「えっ……?」と、体を起こす。


 見間違えてしまったのだろうか───呆然と目を凝らすと、また───もう一度。火の玉のような、丸い物体───それは、確かに、勇人の視界の中を、移動した。


 勇人は、布団をはいで、窓へと近づいた。


 そっと、カーテンを捲って、ベランダを覗いてみる。


 ───そこには、何も見えなかった。


 勇人は、カーテンのすき間から手を伸ばして、窓の鍵を開け、音を立てないように、引き戸を動かす。


 念のため、能力で姿を消し、ベランダに足をかけた。


 そうして、外を覗き込んだ勇人は───衝撃のあまり、()()()()()()()()()()


 勇人が立つ反対側の壁の前で、白いワンピースが、揺れていた。


 夜空を背景に、幻想的な色をした髪の毛がなびいている。


 あの時と───初めて出会った時と同じ、驚いた表情で自分を見つめ返す少女に向かい、勇人は、呆然と、声を漏らす。


「……輝葉……?」


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