人形と狂人
ある晴れた日。冒険者ギルドに行くと、なんだかギルド内がザワザワしていた。いや、ザワザワしてるのはいつものことなんだけど、なんかワイワイガヤガヤイエーイみたいな雰囲気じゃなくて、野次馬?ってかんじ。
火事とかで、「火事ですって」「あらぁ、怖いわねぇ」「まだ1人残ってるみたいよ」「えー」みたいなかんじ。
うん。とにかく、カミラにでもきくか。
「カミラ。なんかあったの?」
「あー。なんか、北の隣国の村が1つ何者かに襲われて、全滅したみたいで、そこに邪人がいたって噂があるんだよね」
「邪人!?……え?邪人って滅んだんじゃなかったっけ」
「そのはずだよ。まあ、所詮は噂だし、気にしなくていいでしょ」
「ふーん。その村ってどこらへんにあるの?」
「え?…えっと、国境付近の村って言ってた気がする」
「そっか、ありがとう。私、その村行ってくる」
「えぇ!?なんで?」
「いや、なんとなく?ここきてから毎日冒険者やってたし、どうせならそこに行ってみようかなぁって」
「そっか。じゃ、帰ってきたらいろいろきかせてね。…でも、気を付けてよ。正直、北の隣国っていい噂きかないから」
「大丈夫!ちょっとみてくるだけだから。じゃ、早速いってきまーす」
「相変わらず行動早いね。いってらっしゃい」
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現在夕方。今私は、邪人がでたという村の近くの町にきている。飛んで来たから1日もかからずについた。
この国は、あまりいい国とは言えない。典型的な王族貴族至上主義で、まあ、正直にいうと、くそが溢れてる。王族貴族はもちろん、常に虐げられる環境で育ったせいか、平民や奴隷もあまりいい人とはいえない。暗くて、憎悪にみちたかんじの人が多い。よほど貴族が憎いんだろうね。
まあ、私にはどうすることもできない。てか他国からの旅行者ってだけでちょっといやそうな顔されるし。
そうそう、この国は200年前に初めて邪人が現れた国。その時も1つの村が襲われて全滅したんだって。そのせいか知らないけど、この国は邪獣は徹底的に滅ぼすべきだっていってて、エスペラン王国とは仲が悪い。エスペラン王国とは何もかも真逆な国だよね。
……今日、邪獣の森に泊まろうかな。
………うん!そうしよう。決定!
よし!じゃあさっさと目的の村まで行くかー。
「…うわぁ」
村についた。村は、ひどい状況だった。
ほとんどの家は潰れ、所々土が盛り上がったり、えぐれたりしていて。至るところにものが飛び散っている。
そして、茶色ばかりの色褪せた村で嫌でも目につく、“赤”
土や木が、赤をのみこみその色を変えている。
私は顔をしかめた。
「?」
ふと、赤と茶色だけの世界に、別の色が見えた気がした。
キラキラと光る、黒。いや、紺?
それはすぐに、家々の残骸の影に消えてしまった。
見間違いかも知れない。それでも、そこへ向けて歩く。
私の目の前には、無惨に壊された家。その影へ、暗闇へ、ゆっくりと足を踏み入れる。
「……!」
“人形”
その言葉が、自然と頭の中に浮かんできた。
そこには、私より少し年下だろう少女が座り込んでいた。
所々破れ、泥や血がついた服を着ている。キラキラと光る紺の髪は腰まであり、前髪は目が隠れるくらいながい。その髪の隙間からみえる目は、髪よりも暗い紺色。虚ろな瞳は、どこをみるわけでもなくただ宙をさ迷っている。
突然現れた私になんの反応もせず、一切動かない。
その瞳にはなんの感情もうつしていない。
驚くほど白い肌に、前髪の向こうにみえる整った顔。
本当に、人形のような少女。
この少女が動くところを想像できない。
ならさっき見えた紺色は、何?
ガサッ
「!」
少女の後ろの茂みから、音がきこえた。
誰か、いる?
「おねーちゃん、なにしてるの?」
茂みからでてきたのは、少女と同じくらいの年齢にみえる、少年?少女にもみえるけど、おそらく少年だろう。
少女と同じキラキラと光る紺の髪は、肩上で乱雑に切られ、前髪は目が隠れるくらいながい。その隙間からみえる目は、少女と同じ暗い紺。けれど、その瞳は年相応の純粋な輝きをもっている。肌は少女と同じく白く顔も整っているけれど、その口はにっこりと笑みを浮かべている。一見、普通の少年にみえる。しかし、その服にはべっとりと血がついており、少年の異常さがわかる。
「おねーちゃん?」
こてん。と首をかしげる。
「ねぇ、あなたたちはどうしてここにいるの?」
感情を消して問いかける。
すると、少年は1度キョトンとした顔をしたあと、にっこりと笑い言った。
「それは、答えられない質問だよ」
言う気はないらしい。
「僕、そろそろ行かなきゃ。おねーちゃん、バイバイ」
そう言い、少女の肩に手をそえる。
「待って。最後に1つだけ。この村をこうしたのは、あなた?」
「そうだよ」
少年は、当たり前のように答える。
「どうして?」
そう言うと、少年は不思議そうに首をかしげる。
「どうしてって、だって、お母さんが言ってたもん」
「お母さん?」
どういうこと?
「僕たちはいらないんだって、いつも言ってた。死ぬべきだって。お母さんも、お父さんも、村の人も、みんな。でも、僕たちがいらないってことは、同じようにお母さんもお父さんも村の人も、みーんないらないし、死ぬべきってことでしょ。だから、殺したの」
「…………」
「じゃ、バイバイ」
そう言うと、少年も少女もそこからいきなりパッと消えた。
それはあり得ないこと、でも今はどうでもいい。
私の頭は、1つの言葉で溢れていた。
“狂人”
あの少年は、狂人だ。
幼くて、純粋な、狂人。
私は、すぐにそこから飛び去った。
7歳と5.6歳の会話。ヤバッ。




