第3章:石像の覚醒と盗まれた秘密
ナイト・ストーカーの群れの咆哮が岩壁に反響し、背筋も凍るような音波となって押し寄せる。レイ=Tとエレナは、ひび割れた渓谷の最奥部へと追い詰められていた。ここのミアズマの霧はどろりと濃密で、硫黄と乾いた血の臭いが漂っている。外縁部とは異なり、禁域の奥へ進めば進むほどミアズマの霧の濃度は増し、それと同時にコア区画の奥深くから発せられる謎の「量子異常場」が立ち込めていた。この量子異常場は、ヴァンガードのあらゆる最新機械設備を狂わせ、破壊してしまうのだ。それこそが、人類最高峰の兵器を誇るヴァンガードにとってさえ、ここが足を踏み入れることのできない禁域となっている最大の理由だった。
だが今回、二人に退路はなく、禁域の奥深くにわずかな生存の望みを探すしかなかった。そうして禁域の深部へと突き進んでいくと、二人の目の前に突然、木の根と棘だらけの蔦が幾重にも絡みついた、錆びついた巨大な鋼鉄の扉が現れた。必死の思いでレイ=Tが短剣の刃を振るって蔦を斬り払い、扉を力任せに押し開けると、二人は広大で薄暗い空間へと転がり落ちた。
二人が狭い扉の隙間をすり抜けたまさにその瞬間、すぐ背後まで迫っていた一匹のナイト・ストーカーが飛びかかり、鋼鉄の扉の縁をかすめるように鉤爪を振るった。
骨の髄まで染み込んだ「仲間を守る反射神経」に従い、二人が体勢を崩して中の冷たい石の階段へと転がり落ちる最中、エレナは空中で不意に身を捻った。彼女はレイ=Tが鋭い石の角に頭をぶつけないよう、戦術アーマーを纏った自分の背中をクッションにして彼を受け止めると同時に、脚を振り上げて何トンもある鋼鉄の扉を思い切り蹴りつけ、閉め切ったのだ。
ガァン!
鋼鉄の扉は凶獣の群れの鼻先で激しく閉まり、外の狂乱した咆哮を遮断した。レイ=Tは慌てて転がり起き上がると、渾身の力を振り絞って、太ももほどもある巨大な合金製のかんぬきを引き、扉のロックにしっかりと掛けた。
濃密な暗闇と、肌が粟立つほど冷え切った静寂が、密閉された空間を瞬く間に包み込んだ。二人は示し合わせたかのように息を潜め、石壁に背中をぴったりと押し付けて、扉の向こう側の金属表面をギリギリと引っ掻く鉤爪の音に耳を澄ませた。
「くっ……うぅ……」
固く噛みしめた唇の奥から押し殺したようなごく小さな呻き声が、レイ=Tのすぐ隣で漏れた。
扉の隙間から光が漏れて怪物を刺激するのを恐れ、まだライトを点けていない暗闇の中で、レイ=Tはエレナの呼吸が異常に震えていることに鋭く気づいた。石段に落ちる際に彼を庇って身を捻った衝撃と、先ほど鋼鉄の扉を蹴り閉めた反動によって、彼女の右足首は重度の脱臼を起こしており、さらに脇腹の軽装アーマーは怪物の鉤爪に引き裂かれて鮮血がぐっしょりと滲み出ていたのだ。
「怪我してるじゃないか!」レイ=Tは声を潜めて囁き、暗闇の中で即座に彼女の隣へと跪いた。
「平気よ……少し足を捻っただけ、衝撃の大半はアーマーが防いでくれたわ」エレナは冷静な声を保とうとしたが、いざ足を動かそうとした瞬間、焼けるような激痛が走り、額に冷たい汗がどっと噴き出した。禁域のコア区画に立ち込める高濃度の量子異常場の影響で、彼女のヴァンガード製アーマーに搭載された生体アシストシステムは完全に麻痺しており、装甲は傷口にのしかかるただの重い金属塊と化していた。
レイ=Tはそれ以上何も言わず、暗闇の中で手探りしながら、エレナの右足の戦術ブーツのロックピンを極めて慎重に外した。
エレナはハッとして、本能的に足をわずかに引っ込めた。「あ、あなた……何をするの?」
「動くな。スラム街メガ7じゃ、壁を登って鉄屑を拾うチビどもがしょっちゅう足首を脱臼するからな、関節を戻すのには手慣れてるんだ」レイ=Tは静かに答えた。その声は不思議と温かく、確かな落ち着きがあった。「今すぐ固定し直さなきゃ、あとでまた走った時に足首の骨が粉々に砕けちまうぞ。少し痛いが我慢しろよ」。
少年の手が、エレナの華奢な足首に添えられた。
薄いソックス越しに、エレナは彼の指先のゴツゴツとしたタコや乾きかけた血の感触をはっきりと感じた。にもかかわらず、レイ=Tの手つきはまるで壊れやすい磁器に触れるかのように優しく、丁寧だった。迷いのない正確な手首の返し一つで、コキッという小さな音が響き、外れていた関節が正しい位置へと収まった。
予備の医療包帯はもう残っていなかったため、レイ=Tは躊躇なくコートの中に手を入れると、一番清潔な内側のインナーシャツの裾から長い布切れをビリリと引き裂き、エレナの足首に八の字を描くようにきつく巻きつけて関節を固定してから、戦術ブーツを履き直させてやった。
古代遺跡の暗く凍てつく空間の中で、二人の距離は、エレナにレイ=Tの力強い心音がはっきりと聞こえ、彼の温かい吐息が自分の膝頭をそっと撫でるのを感じ取れるほど近かった。ヴァンガードの冷え切った中央タワーで生きてきた十八年間、常に上官たちの値踏みするような視線に晒され、周囲の人間が名誉や利益のためだけに近づいてくる環境の中で、こんなふうに何の打算もない純粋な誠実さで、自分の服を裂き、地面に跪いて傷の手当てをしてくれた人間は、彼が初めてだった。
不思議な温もりが足首から胸の奥へと真っ直ぐに広がり、ミアズマの霧の骨まで凍るような冷たさを追い払っていく。
レイ=Tが最後の結び目を縛り終え、荒い息を整えるために彼女の隣の壁際に背中を預けて座り込んだとき、彼は先ほどの関節整復の激痛でエレナの呼吸がまだ浅く、顔色が青ざめていることに気づいた。
少年は一瞬だけためらうと、コートの内側の小さなポケットに手を入れた。静まり返った暗闇の中、崖を登ったせいで血が滲むレイ=Tの無骨な手が不意に伸び、固く握りしめられていたエレナの手のひらをそっと開くと、そこにひんやりとした小さな物を乗せた。
エレナはハッとして、驚いたように視線を落とした。
鋼鉄の扉の隙間から差し込むわずかな薄明かりの下、彼女の手のひらの真ん中に乗っていたのは、セロハンの包み紙の上で綺麗に半分に割られた、透き通ったハッカ飴の片割れだった。
「やるよ。舐めてれば少しはめまいが収まる」暗闇の中でレイ=Tの低く温かい声が響き、彼は残りの半分を自分の口に放り込むと、潜在意識に深く刻み込まれた癖のように小さく付け加えた。「昔、俺にとってすごく大切だった人が言ってたんだ……暗闇に閉じ込められた時は、ハッカの味が頭をすっきりさせてくれるってな」。
エレナは自分の手のひらに乗った小さな飴の半分を見つめ、それから引っ込められたばかりの、古傷と新しい傷が幾重にも刻まれた少年の指先を見上げた。彼女はゆっくりと飴の片割れを口へと運んだ。ハッカ特有の清涼感あふれる爽やかな甘みが舌の上で瞬く間に溶け出し、喉元にこびりついていた生臭い血の匂いと息苦しい硫黄の臭気を優しく打ち消していく。
だが、墨のように黒い空間にハッカの香りが広がり、先ほどのレイ=Tの言葉が耳元で反響したまさにその瞬間、エレナの全身に微かな衝撃が走った。
稲妻のように短い一瞬の間、どこか遠い記憶の彼方から、ぼんやりと途切れ途切れになった情景が彼女の脳裏を不意によぎったのだ――同じように血の匂いと骨まで凍る冷気に満ちた濃密な暗闇、同じように擦り傷と血にまみれた両手がハッカ飴を半分に割って彼女の手に乗せ、そしてまったく同じ響きの声が……。
過去の映像は煙のようにあまりにも速く曖昧に通り過ぎたため、エレナにはどうしてもはっきりと掴むことができなかった。だが、胸の中の心臓が突然ドクンと一拍跳ね、見知らぬはずなのに息が詰まるほど懐かしい、激しい動悸を打ち始めた。
「さっき渓谷の入り口で……戻って私を引っ張ってくれて、ありがとう」エレナは一瞬の放心から立ち直ると、静かに声を上げた。その澄んだ声からは、最初に出会った時の軍人としての冷徹な響きがすっかり消え失せていた。
「いいってことよ。あんただって、俺が石に頭をぶつけないように背中で受け止めてくれただろ」レイ=Tは暗闇の中で小さく微笑んだ。自分の何気ない習慣からの行動が、隣の少女の心の奥底に秘められた波紋を揺り動かしたことなど露知らず。「ま、これでおあいこってことでいいよな。俺の名前はレイ=Tだ」。
エレナは暗闇の中で煌めく深い蒼色の瞳を上げ、彼の琥珀色の瞳を真っ直ぐに見つめ返すと、いつもは固く結ばれている口端を無意識のうちにわずかに綻ばせ、ごく淡い笑みを浮かべた。「私はエレナよ」。
この死の大地のただ中で、異なる二つの階層に属する二人の人間が、正式に互いの名前を交わした。二人の呼吸が落ち着くのを待ってから、エレナは背後の脱出口を調べるため、肩のアーマーにある近距離照明ライトのスイッチに手を伸ばした。
エレナが肩のヘッドライトを点けると、光が部屋を一掃し、壮大な光景を浮かび上がらせた。この禁域の奥深くに、無数の淡いエネルギーの鎖によって封印された科学者の石像が堂々とそびえ立っていたのだ。石像は軽装アーマーの上に白衣を羽織った男性の姿を象っており、誇り高く顔を上げ、その手には「星辰儀」を固く握りしめていた。石像からは時折、禁域の障壁とまったく同じ量子波の奔流が放たれている。
だが、レイ=Tにそれを見惚れている時間はなかった。背後の鋼鉄の扉が紙切れのように引き裂かれたのだ。通常のナイト・ストーカーの三倍はあろうかという巨大な怪物が、ぬっと中へ踏み込んできた。その目は赤く燃え上がり、石の床に腐食性の唾液を滴らせている。
少年は怪物と対峙し、短剣を振るい、路地裏で培ったあらゆるサバイバル技術を駆使して何とか生き延びようと足掻いた。エレナも量子異常場によって無力化されたエネルギー弾を懸命に怪物へと撃ち込んだが、何の効果もない。あらゆる抵抗の試みは虚しく、怪物はエレナを乱暴に薙ぎ払って壁に頭を打ちつけさせ、意識を奪うと、続けて巨大な尻尾を振り回してレイ=Tの胸板を直撃した。
彼は数十メートルも吹き飛ばされ、謎めいた石像の台座に背中を激しく打ちつけた。口端から血が噴き出し、全身の骨が砕け散ったかのようだ。レイ=Tの視界が次第に霞んでいく。凶獣は勝ち誇ったように歩み寄り、おぞましい顎を大きく開いてトドメの一撃を繰り出そうとした。
彼が怪物に殺されかけ、石像の足元で死の淵へと追い詰められたまさにその時、天地を揺るがす出来事が起きた。
レイ=Tの血が石の台座に染み込み、ジュッ……という微かな音を立てたのだ。石像を縛りつけていたエネルギーの鎖が突然プツリと千切れ飛んだ。大気がビリビリと震え上がる。あの偉大なる科学者の石像の封印が、正式に解かれたのだ。冷たい石の内側から、石像は眩い黄金の光の波となって膨大なエネルギーを解き放った。エネルギーの波が一掃すると、怪物を幾百万もの光の粒子へと粉々に砕き散らし、瞬く間に怪物を打ち倒して、血だまりの中で虫の息だった少年の命を救った。
レイ=Tは、その光の奔流が自分の体内に流れ込んでくるのを感じた。それは決して焼けつくように熱いものではなく、不思議と温かく、包み込むようで、奇妙なほど懐かしかった。彼の体の傷口がみるみるうちに塞がっていく。一つ一つの細胞に奇跡の血清が注入されたかのように、力が滾々と湧き上がってきた。
だが、その奇跡は長くは続かなかった。その力の爆発の後、驚愕に見開かれたレイ=Tの目の前で、石像は次第に灰となって崩れ落ち、台座から完全に消え失せた。それに伴い、幾重にも張り巡らされていた量子異常場も消滅していった。
目の前の危機は去り、エレナの応急処置を終えた後、レイ=Tが次に考えなければならなかったのは、どうやって禁域のコア区画から安全に脱出するかということだった。その時、ジェットエンジンの轟音が空間を引き裂いた。ヴァンガード組織の救援特殊部隊が――彼が一生のうちに出会うことすら想像もしなかった人物、ヴァンガード軍の「最高総司令官」と将官クラスの将校たちに率いられて――洞窟の天井を突き破って降下してきたのだ。しかし、空っぽになった石の台座を見た瞬間、権力者たちの顔に明らかなパニックの色が浮かんだ。石像の消失は、即座に戦隊の最高指導者層に大混乱を引き起こしたのだ。彼らの狼狽し恐怖に駆られた態度は、一つの事実を物語っていた――どうやらこの石像には、軍によって隠蔽されている途方もない秘密があるらしい。
数十ものエネルギー銃の銃口が、現場で唯一意識を保っており、その身にまだ眩い黄金の光の残滓を纏っているレイ=Tへと一斉に向けられた。
「この不法侵入者を生け捕りにしろ! ただちに現場全域を徹底的に捜索せよ!」
指揮官の将軍の一人が厳しい声で命じた。特殊部隊の兵士たちが彼を制圧しようと引き金に指をかけたその時、崩れた壁の隅で、エレナが衝撃から苦しそうに身じろぎして目を覚ました。彼女はライフルを杖代わりに支えにして立ち上がり、特殊部隊の銃口とスラム街の少年の間に懸命に立ち塞がった。
「待ってください! 武器を下ろして!」エレナはしゃがれながらも毅然とした声を上げた。彼女は振り返り、先頭に立つ威厳ある男性――ヴァンガードの最高総司令官を真っ直ぐに見据えた。「彼は闇市の犯罪者ではありません。孤児院の子どもを救う薬草を探すために禁域の外縁部に入っただけです。それに、ナイト・ストーカーの群れから私を救うために、命懸けで血路を開いてくれたのは彼なんです!」
最高総司令官は答えなかった。軍帽のつばの下に隠された彼の冷徹な瞳は、石像が消えたばかりの空っぽの台座をかすめ、それからレイ=Tのボロボロの体――最後の黄金色の光の粒子が皮膚へと溶け込んで消えたばかりの場所――に長く留まった。周囲の将校たちの手首にある放射線測定器はピピッ、ピピッと絶え間なく警告音を発しており、見知らぬ少年の血管の内に異常なエネルギー源が出現したばかりで、まだ完全には安定していないことを知らせていた。
「そいつを中央基地の外縁隔離区域へ連行しろ」最高総司令官はレイ=Tを一度も見下ろすことさえせず、低く冷酷な声で命じた。「身元調査と厳重な放射線検疫のため、隔離テントに軟禁せよ。私の命令があるまで、誰一人としてそいつに接触することも、勝手に処分することも許さん」。
二人の特殊部隊兵士が即座に歩み寄り、氷のように冷たい電磁手錠でレイ=Tの手首を固く拘束した。連行される直前、レイ=Tは懸命に首を捻って振り返り、エレナと彼女の足元に落ちている血草の入ったブリキ缶へと懇願するような視線を向けた。彼の意図を汲み取ったエレナはごくわずかに頷き、その夜のうちに密かに孤児院「星明かりの家」へ直接届けさせるため、人目につかないようブリキ缶を拾い上げて戦術ポーチへと収めた。
禁域への不法侵入の罪でその場で銃殺されたり地下牢に放り込まれたりする代わりに、スラム街の少年の運命は誰も予想だにしなかった方向へと舵を切った。薄暗い渓谷から轟音を立てて飛び立つ軍用飛空艇の拘束室へと押し込まれたレイ=Tは、小さなガラス窓越しに遥か遠くのスラム街メガ7を見つめていた。自分の胸の内で渦巻いている謎めいた力の芽が、やがて彼をこの世界全体の嵐の中心へと巻き込んでいくことになろうとは、少しも知らずに。




