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【第一部・完】馬鹿な女は愛せない、と離縁されましたので……!【書籍化・コミカライズ】  作者: 一分咲


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パーティーの夜に

 国王陛下主催の祝賀会は、簡単の一言では片付けられないほどに華やかな会だった。候補者はそれぞれの配偶者をエスコートしていて、傍目に見ればただのパーティーと勘違いしてしまいそうである。


 レリアも慌ただしくドレスに着替え、ウィリアムの肘に手を置いてエスコートされていた。煌びやかな大広間、第一回の投票を通過した四家の候補者が中央に集い、周囲を護衛たちに囲まれている。


 もちろん、この場でも何があるかわからないことには変わりない。しかし、参加している人数が限られていることから、歴史上どの王太子選の記録を見ても、この会は束の間の平穏だったと記されているのだった。


 レリアも周囲を警戒はしているものの、違うことを考える余裕がある。


(ちゃんと結婚していた頃ですら、こんな場面はなかったですね……?)


 斜め上を見上げると、正装の夫がいる。ちなみにさっき、ウィリアムは豪華なドレスを身につけたまま転ばずに歩くレリアを見て「普通に歩けたのか」と漏らした。


 明らかにうっかり漏れ出た心の声の類だったが、レリアは聞き逃さなかった。


 これまでそういった場に出る機会がなかったのは、自分が馬鹿すぎたせいだと理解していたはずだ。しかし、もしかしてそれ以前の問題で、まともに歩けるのか心配されていた可能性が浮上してしまった。


 三年前にそこまで思い至り、先回りして全てを封じた夫の機転や心労には同情するし、それを全く悟らせなかった優しさと有能さに感謝したい。


(馬鹿を演じていた私を優しく受け入れ、今は護衛として接してくれている。しかも全てを好意的に受け止めてくださっているし……ウィリアム様って考えが柔軟というか、面白い方ですよね)


 自分は彼と再婚したことになっているが、この先、またこんな風にパーティーに出ることはあるのだろうか。


 いや、レリア・アルトワは王太子選の期間を埋めるための、仮初の妻にすぎない。きっとこの修羅場を乗り越えた後、彼はきちんとした妻を迎えるのだろう。


 いくらウィリアムが自分に好意を示してくれているとはいえ、貴族や王族の結婚とはそういうものだ。家の繁栄と釣り合う家格が最も大事なことはわかりきっているのに、ふとそんなことを考えてしまった自分に驚く。

 

(とにかく、この国を変えるかもしれないお方の王太子選で、護衛を務めつつ妻の立場まで務めさせていただくなんて……僥倖ですね)


 柄にもなく、任務と自分をうまく切り離せなかったことに気がついたレリアは、ウィリアムの視線がこちらに向けられていることにも気がついた。


「……なんでしょう?」

「ああ、綺麗だと思って」

「え?」


 あまりにも聞きなれない言葉にレリアはぽかんとしてしまったのだが、ウィリアムはさして気に留めていない様子だった。ワイングラスを手にさらりと繰り返す。


「君は元々美しかった。姿勢も所作も洗練されている。三年前だって、どこからどう見ても、きちんとした貴族令嬢だったんだよな。にもかかわらず、中身……いや言動にばかり気を取られていた俺たちはどうかしていた」


(しっかり褒めてくださるのは上流階級の人間として模範的な振る舞いです……)


 けれど、普通こういう場で女性を褒める時には、花や星や宝石など美しいものに例えるのが一般的だしマナーとされている。兄のヘクターは詩人のような言葉を死ぬほど覚えさせられていたし、任務で使うことがあるイヴもジスランもお手のものだ。


 だから、レリアも形ばかりの褒め言葉をもらうのなら、動揺せずに応じられる。けれど、ウィリアムのこれは、あまりにも具体的で率直な褒め方すぎる。


 お礼を言えばいいのか、それとも正直に笑ってもいいものなのか困惑してしまった。


「褒められるのは慣れないですね?」


 すると、ウィリアムはふっと笑うのだった。


「だろうな。これからは思ったことを言う。どうやら君には荒療治が必要らしいからな」

「いや、それはなんのために……?」


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9/4完結予定の新作です。
無敵の才女
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