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【第一部・完】馬鹿な女は愛せない、と離縁されましたので……!【書籍化・コミカライズ】  作者: 一分咲


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エピローグ

 まるで、この夫婦ごっこが王太子選を終わっても続くとでもいうような含みのある言い方に、レリアは翡翠色の双眸を見開き、首を傾げる。


 その反応が気に入ったのか、ウィリアムは屈託なく笑った。


「まずは、王太子妃になることだな」

「えっ?」


 あまりにも予想外すぎる言葉にぽかんと口を開けると、彼は話題を変えた。


「で、アルトワ侯爵家だが」

「あの」

「さっきも候補者の間で少し言及したが」

「いえその前の言葉の意味が」

「俺が王太子になれば、お母上の事件について再捜査が可能だ」

「!」


 ウィリアムの言葉に困惑していたレリアだったが、母親の話題に頭が切り替わった。会場を見回してみると、ルモワーヌ公爵陣営はいるものの、兄ヘクターの姿は見えないし当然アルトワ侯爵である父もいない。


 となると、生家はすでにもうこの計画から外されているのかもしれない。


(さすが判断が早いですね)


 ウィリアムは続ける。


「六年前のこととなれば証拠は隠滅されている可能性が高いが、少なくとも世間にアピールはできるはずだ。貴族は特権階級だが、一方で世論の高まりを無視できない。それに、いち貴族が捜査するのと、王太子命令での再捜査では意味が全く違ってくる」


「では、ウィリアム様は、母の死の真相解明に力を貸してくださると……?」


 さっきは、第一回投票の最中だったこともあり、突然の話題すぎて深く突っ込んで聞く余裕がなかった。しかしこうして改めて説明されると、信じられない気持ちになる。


(時間が経ちすぎていて諦めていましたが、私はお母様の無念を晴らすことができる……?)


 ふわふわとした思考をまとめようとするレリアに、ウィリアムは意味深な声音で告げるのだった。


「とにかく、せっかくエルランジェ公爵夫人なんだ。使えるものは使え。王太子妃になったら、君にできることはもっと多くなる」

「はい……って、えっ?」


 思わず顔を上げたのだが、ウィリアムは話題を変えて爽やかに微笑む。


「少し外す」


 離れた場所で候補者たちが集まっているのが見えた。あれに加わるのだろう。


(では、私も護衛としてついていかないと)


 そう思ったものの、離れた場所からこちらを見ていたイヴが、ここからは自分がつくという合図を送ってくる。見ると、置いて行かれた夫人方は反対方向に集まり、夫人方で会話を楽しんでいるようだ。


 エルランジェ公爵夫人としてここへ来ているレリアは、ウィリアムの護衛ではなくあの輪の中に加わらねばならないだろう。


 レリアはイヴに笑みで応じ、ゆっくりとそちらへ向かうことにする。けれど、実際には落ち着いた振る舞いからは想像できないほど、困惑していた。


(聞き間違いかと思いましたが、ウィリアム様は私が王太子妃になると仰いました? いえ、ウィリアム様が王太子になるのは驚きませんが……その時、私が隣にいると自然にお思いなのでしょうか?)


 これは王太子選の任務をこなすための偽の結婚が始まりだったはずだ。けれど、胸につかえるような落ち着かない感情に戸惑いを隠せない。


(これは確かに任務のはずですし、ウィリアム様は三年前、私に家をめちゃくちゃにされたお方のはずです。それなのに、どうしてあんなことを仰るの……?)





˚˙༓




 その日の深夜。


 エルランジェ公爵家に戻ったレリアの部屋を訪ねるものがあった。チームの中で最もベテランであるジスランだ。小さな音で部屋の扉がノックされる前から察していたレリアに、ジスランは淡々と言った。


「重要な報告がある。」

「今日の任務中に気になる合図を出していましたよね。ウィリアム様に関することで何か?」


 後で詳しく聞かねばと思っていたことを思い出し、問いかけるとジスランはさらに声を潜める。


「ウィリアム・エルランジェ。彼をあまり本気で守る必要ないと思う。」

「え? 護衛対象なのに?」


「彼はおそらく祝福持ちだ。」

「祝福持ち……?」


 予想しなかった方向の報告に、レリアは目を見開く。


「確かに、ウィリアム様は器用な方で魔法も鮮やかに使われますが、さすがにそれはないのでは? なぜならジスランだって知っていますよね。王国庁のリストを」


 祝福を持っている人間に関しては、王国庁が可能な限り把握している。そのリストの中にウィリアムの名前はないはずだ。


 そして王太子選に臨むにあたり、自分で祝福を持っていることを隠す理由など見当たらない。総じて、特別な能力は選挙においてプラスに働くからだ。もしウィリアムが本当に祝福持ちだったとして、それを隠す理由がわからない。


「何か確信するような出来事があったのでしょうか」


 困惑し問いかけるレリアに、ジスランは続けるのだった。


「今日、襲撃で混乱する候補者の間で彼は言った。――根拠は明かせないが、自分が今日ここで死ぬことは絶対にない。今は自分を放って犯人確保に動いてほしい、と。異様な雰囲気だった。俺たちですら命の危険を感じていたあの場でそんなことを言えるのは、特別な人間だけだ。」



《第一部・完》

ここで第一部完結です!

楽しんでいただけたら、☆☆☆☆☆から評価をいれていただけると本当に励みになります!

第二部も毎日更新でいきたいので準備に少しお時間いただきます!

【9/4の20時スタート予定】です。


その間に読んでただける新連載はじめています!

タイトルは『無敵の才女』で、強くてかっこよくて素手でりんごを潰せる自立した令嬢が主人公です。

長編ですが、随分前に書き上げ済みの作品でして、なろうでは9/4完結予定です。

よろしくお願いします!

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9/4完結予定の新作です。
無敵の才女
+注意+

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