レリアと祝福 1
(――!)
膨大な魔力の気配に全身が極度の緊張状態になる。レリアは瞬時に柵を飛び越え、ウィリアムの元へ直行した。ジスランもぴったりと隣にくっついて追随する。
「ウィリアム様、姿勢を低く! ジスラン!」
レリアの声で、ジスランの祝福が発動する。
彼の祝福があれば、ウィリアムに傷をつけず守り切ることは可能だ。二十年前の選挙では有力だったバロー公爵家の本邸が狙われたが、家族がいないウィリアムに関してはそこを突かれる可能性は低い。
とにかく守り切ればいい、と、膨大な魔力の気配の中、レリアは周囲の気配に神経を研ぎ澄ませる。
(この部屋は攻撃されている。部屋ごと狙われているとなると、これは――)
明確に認識すると同時に、少し離れた場所で爆発音が響く。その後で、石壁が崩れるのが見えた。
「マリアンヌ!」
「任せて!」
マリアンヌが壁に向けて魔法を放つと、石壁は魔力を帯びて元の位置に戻る。応急処置でしかないが、この部屋にいる貴族たちに大きな被害が出ることは防げるだろう。
この膨大な魔法は、ついさっき茫然自失になっていたヘクターが使おうとしているものではないのは明白だ。彼にこんな危険で強大な魔法は使えない。ならば何なのか。
「イヴ! 七大公爵家とは関係ない第三者が、王太子選に便乗してここを攻撃している可能性もあります。それを念頭に置きつつ、ウィリアム様の身の安全確保を最優先に動くこと!」
「わかった、レリア! クーデターの可能性か。最悪だな」
(ここには国の有力な家々がすべて集まっています。第三者がそれらをまとめて片付けようとするケースもありますから! とにかく、今は何も情報がありません。最悪を想定して動くべきです)
そして、候補者の間にいる貴族たちはすっかりパニック状態に陥っている。
「な、何だ⁉︎」
「退いてくれ。外へ逃げるんだ!」
「死にたくない!」
一目散に逃げ出そうとしているが、重い扉には鍵がかかっていてなかなか開かないようだ。
阿鼻叫喚が広がる部屋の中央で、レリアは立ち上がった。
(ウィリアム様にはジスランが付いているから大丈夫です。私はこの攻撃を仕掛けている人間を見つけて止めないと。標的がわからない以上、この状況を収めるには強引に叩くしかありません)
「イヴ、ジスラン! ウィリアム様をお願い。マリアンヌは私と一緒に」
「了解」
レリアはマリアンヌを伴い、浮遊魔法を使って飛び立った。一方、さっきまでレリアにしつこく絡んでいたヘクターは、蒼い顔をしてルモワーヌ公爵家の候補者の前で防御魔法を貼っていた。
冷や汗で顔がびっしょりなのは、自分の能力ではこの事態に対処できないことをわかっているのだろう。
(なんというか……哀れですね)
「一旦、避難を! それぞれに身を守れ! 落ち着いてから再開する」
「避難の許可が出た!」
「早く扉をあけてくれ!」
王国庁の管理官の言葉をきっかけにして、弾かれるように貴族たちが出口の扉へと殺到していく。
候補者はレリアたちのように異質な強さの護衛に守られているが、彼らには護衛の同伴は許されていないため、この状況は仕方がないことだろう。
またどこからか爆発音が聞こえた。会場を空中から見下ろしていたレリアは、扉に人が殺到しドミノ倒しになりそうな状況を見て、眉間に皺を寄せた。
「あれ危ない! どうして扉が開かないの?」
「王太子選だもの。午前九時を前に特別な鍵がかけられたのかもしれないわね」
「なるほど。少し行ってきます」
「レリア⁉︎」




