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馬鹿な女は愛せない、と離縁されましたので……!  作者: 一分咲


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23/34

23.元旦那様と再婚ですか……? 1

 ウィリアムの予想は、レリアたちの想像以上に早く的中した。


 翌日、ガルシア侯爵家のキャサリンがエルランジェ公爵家を訪ねてきたのだ。


(キャサリン様、お変わりないですね)


 一階のサロンに通され、我が物顔で紅茶を啜るかつての恋敵を物陰から観察しながら、レリアはきょろきょろと周囲を見回し、この部屋の変わりように驚いていた。


 淡いピンクのベルベット生地のソファに、白で統一された家具。室内の至るところには赤とピンクの薔薇が飾られている。


 エルランジェ公爵家という、最上位の家格を持つ公爵家の顔ともいえる一階のサロンが、こんなにかわいらしい雰囲気でいいのだろうか。


(三年前はもう少し落ち着いた雰囲気だったのはずなのですが? ウィリアム様の好みが変わったのでしょうか)


 隣にいる元夫をじっと見ると、レリアが言わんとするところを察した彼は顔を引き攣らせた。


「これは違う」

「いいえ、何も言わなくて結構です。大丈夫大丈夫、問題ありませんわ」


 意外と乙女趣味だった元夫への好感度が上がりかけたところで、レリアたちがやってきたことに気がついたらしいキャサリンはふてぶてしい笑みを浮かべた。


「ウィリアム! 会いたかった!」

「君は何をしに来たんだ?」

「わかっているでしょう? あの女が現れたっていうから、心配で!」


 そして、すぐに媚びるような泣き顔に変わったキャサリンはウィリアムに駆け寄って抱きつこうとする。それをレリアの元夫はひらりと躱した。


(あら?)


 ここにいる組織の人間以外は誰も気づいていないが、ウィリアムは明らかに明確な意図を持ってキャサリンを避けた。


 仲睦まじげに見えるキャサリンとウィリアムに一部の使用人が目尻を下げている一方、ウィリアムの瞳には拒絶が浮かんでいる。この二人の関係と、それを取り巻く使用人たちの解釈にはなかなか複雑な事情がありそうだ。


 どう振る舞うか一瞬迷ったものの、レリアは三年前と同じように表情を綻ばせる。


(彼女の狙いがウィリアム様なのでしたら、こうするのが手っ取り早いですから……!)


「まあ! キャロライン様! ご無沙汰をしております」


 調子はずれな大声をあげたレリアを見て、キャサリンは馬鹿にしたように表情を引き攣らせた。ちなみに、ウィリアムも目を見開いているがレリアは気にしない。


 これは任務なのだ。王太子選を勝利へと導き、依頼者を守るための仕事なのだから、恥ずかしくない。


「私はキャサリンよ。あなた、相変わらず馬鹿ね」

「あらまあ、お名前……キャシー様だったかしら?」

「愛称で呼ぶのは許してないわ! 本当に話が噛み合わない女ね!」

「ふふふ。私たちは一緒に階段から落ちたぐらい、仲良しでしたものね。再会できてうれしいですわ」


 レリアの言動を見たキャサリンは、この馬鹿だった元恋敵が三年前と変わっていないと思ったらしい。薄い笑みと軽蔑したような目を向けた後、ウィリアムに向き直る。


「ウィリアム。この女とは三年前に離縁したはずでしょう? その後、レリア・アルトワの呪いにかかって再婚は考えられないっていう話だったじゃない! なのに、どうしてまた彼女を家に入れているのよ!」

「レリア・アルトワの呪い……」


 かつての自分による災厄は、エルランジェ公爵家内には留まらないらしい。またしても思わず復唱してしまったレリアに、ウィリアムが気まずそうな目を向けてくる。


「この通り、広く知られた呪いだ」

「心中お察しします……」

「察さんでいい」


 レリアとウィリアムのやり取りは、キャサリンのプライドを刺激したようだった。


「あなた、何でここにいるのよ? 離縁されたのに戻ってくるなんて正気? 一刻も早く出て行きなさいよ」


 そうして、この家の上級使用人である家政婦長にふてぶてしく命じる。


「これはどういうことなのかわかるように説明して」

「はい、キャサリン様。ご心労をおかけして申し訳ございません……」


 澄ました顔で進み出た彼女は、レリアの自室を荒らした張本人でほぼ確定している。そして、エルランジェ公爵家の使用人でありながら、当主の目の前でキャサリンの命令に応じるのはおかしなことだった。


 現にウィリアムは不快さを隠さない。けれど、家政婦長はキャサリンの機嫌を取ることに夢中なようで、ウィリアムの表情に気づいていないのか、鷹揚に続ける。


「昨夜お知らせした通りでございます。キャサリン様を階段から突き落として離縁されたレリア・アルトワ様が、どういうことなのか屋敷にお戻りになったため、私どもは危機感を覚えております。どうか、キャサリン様にこの屋敷の平穏を守っていただきたくお願いをした所存でございます」


「皆、怖かったでしょう? だから、急いでやってきたの。エルランジェ公爵家がまたメチャクチャにされたら大変だもの」


 キャサリンはそう言いながら、ピンクと白で彩られたサロンを見回す。それを見て、元夫が急に乙女趣味になった理由を察した。なるほど、このかわいらしいサロンは彼女の趣味を反映しているらしい。


(キャサリン様がエルランジェ公爵家に入り込んでいるのは事実のようです。ですが、当主であるウィリアム様は彼女をよく思っていない。それでも、干渉を許しているのは後ろ盾であるガルシア侯爵家との関係を気にしているから……)


 レリアが二つの家の力関係を分析していると、キャサリンは自信たっぷりにこちらを睨め付けてくる。


「どういう理由でここにいるのか知らないけれど、とにかくレリア・アルトワはここにいるべきじゃないわ。元妻がエルランジェ公爵家に出入りするなんて吐き気がする」


 そうして、唐突に言い出すのだった。


「だって私のお腹の中には、ウィリアム様の子供がいるんだもの!」


(……えっ!?)


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短編投稿しました!(2026/7/6)
はじめまして、聖女に振られた旦那様

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