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馬鹿な女は愛せない、と離縁されましたので……!  作者: 一分咲


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21.元旦那様との作戦会議 2

 一通り混乱し、ひとまず今のところは違和感を飲み込めるぐらいまで頭痛が回復したウィリアムは、この屋敷の主人としての顔に戻る。


「まあいい。いや全然良くないが……君に一つ頼みがある」

「何なりとお申し付けくださいませ」


 膝を折ると、ウィリアムは間を置いて、少し申し訳なさそうに切り出した。


「実は、屋敷の使用人たちにはまだ三年前の真実を知らせていない。可能なら、ずっとこのままで行きたいと思っている」

「つまり、私が三年前にエルランジェ公爵家をボロボロにして潰すため、馬鹿を演じていたことを秘密にしたいと……?」


「そうだ。君には申し訳ないが、長い目で見れば君もその方が動きやすいのではと思う」

「なるほど。一理ありますね」


 確かにその通りではある。三年前のあの大惨事の数々が、家を潰すために狙って引き起こされたものだと知られたら、部屋を荒らされる程度では済まないはずだ。


 それに、万一そうなった場合、立場が危なくなるのはレリアだけではない。


 わざと公爵家をボロボロにされたことを知ったにもかかわらず、実行犯のレリアを許した当主ウィリアムの立場も危うくなることだろう。


(これは、家を支えてくださる使用人の方や領民に限った話ではありません。王太子選に際して、エルランジェ公爵家を支持してくださる貴族の方々も、失望する可能性が高いのではないでしょうか)


 ウィリアムが言うことは完全に筋が通っているし、三年前の真実が明かされない方がレリアにとって動きやすいというのもまた事実だった。納得したレリアは、胸に手をあてて承諾する。


「かしこまりました。では『なぜか出戻った元妻』が大事な王太子選の最中に周辺をうろついている、という謎な構図を維持するということで大丈夫でしょうか」

「頼む。その理由については……一晩考えたんだが、よりを戻した、以外に思い浮かばなかった」

「はい?」


元夫がとんでもないことを言い出してしまった、とレリアは目を瞠る。


「またまたご冗談を。嘘ですよね?」

「こんなつまらない冗談を言うタイプじゃない」


 そう応じるウィリアムの横顔には苦労が滲んでいた。この顔をさせているのは間違いなく自分だ。結論が見えたところで、レリアは遠い目をする。


「その、あれは、本人にも結構ストレスがかかるんですよ……」

「何か勘違いをしているようだが、別にとんでもない馬鹿を演じてほしいというわけじゃない」


「あ、よかったです。でしたら、手っ取り早く実力行使で三年前の私のことを忘れていただきます? 多少強引な魔法を使うことにはなりますが、できなくはない気がします」

「……君はうちの大事な使用人たちに一体何をする気だ???」


 ウィリアムはドン引きしてこちらを見てくる。一方、二人の会話を興味津々に見つめていたイヴがおずおずと申し出た。


「そういえば、レリアの過去の任務にも関わって、ウィリアム様に一つご報告しておきたいことがあります。ここにいるレリア・アルトワですが、彼女はアルトワ侯爵家の人間で間違いありません」

「それは知っているが」


 ウィリアムに視線を向けられて、レリアはまた小さくなった。他のことはだいたい嘘だったが、本当のことはそれぐらいしかない。


 三年前に書斎で見た極秘調査書類のことを考えると、ウィリアムはその件については疑いを持っていないはずだった。けれど、そのことを知る由もないイヴは続ける。


「実は昨夜、他の家の動向に探りを入れたところ、アルトワ侯爵家がルモワーヌ公爵家の護衛につくという話を入手しました。ですが、ここにいるレリアはそのこととは全く関係ありませんし、情報を流すこともしません。その部分に関しては信用していただきたく」


(私の生家がですか?)


 生家、アルトワ侯爵家はどこかの護衛につくと思っていた。けれど、まさか前国王の出身であるルモワーヌ公爵家と組むとは想像していなかった事態だ。


(そもそも、『馬鹿を演じてエルランジェ公爵家の内部をめちゃくちゃにしてこい』という指令は亡くなられた前の国王陛下が出したものだったはずです。裏を返せば、それは前国王のご出身であるルモワーヌ公爵家の意向とも言えますよね……)


 そんな大物とアルトワ侯爵家が組むとは。そんな分不相応すぎる依頼を受けて、実家は本当に大丈夫なのだろうか。そして、脳裏に『家に帰って来い』という手紙が蘇る。


(これは偶然でしょうか……? いえ、そんなはずはないです。アルトワ侯爵家が何も考えていなかったとしても、ルモワーヌ公爵家側には何か狙いがある可能性も否定できません)


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七大公爵家

エルランジェ公爵家、バロー公爵家、シュヴァリエ公爵家、ルモワーヌ公爵家、

ロズベルグ公爵家、カーヴェルナ公爵家、リュミエール公爵家

読みやすさ重視で本文中から省いています。

出てくるたびにあとがきで注釈つけていこうと思います!

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短編投稿しました!(2026/7/6)
はじめまして、聖女に振られた旦那様

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