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馬鹿な女は愛せない、と離縁されましたので……!  作者: 一分咲


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15/17

15.三年前の真実 1

ウィリアム視点です。

 元妻への尋問を終えたウィリアムは、書斎の執務机に突っ伏した。


 この部屋にいるのは、信頼する家令のピエリックだけだ。そのピエリックが楽しさを隠すことなく、満面の笑みで聞いてくる。


「レリア様には久しぶりの再会でしたね。お元気そうでホッとしましたよ」

「……お前の感想はそれだけか?」


「恐縮ながら。あいかわらず、優しくて面白いお嬢さんですなぁ。三年前に聖女様を追放なさったときは、あらあらまあまあと思ったものでしたが、あれは任務に背いてでも私どもの平穏を優先してくださったからだったんですねえ。我ながら、この爺の人を見る目はさすがです」

「……」


 ついさっき、レリアから想像を超える報告を受けたばかりのウィリアムは、閉口するばかりだ。


 三年前の聖女追放は、エルランジェ公爵家を救うためだった、ということはわかった。それについては心から感謝するし、彼女がいなかったらどうなっていたことだろうと恐ろしくなる。


 しかし『馬鹿のふりをして公爵家をめちゃくちゃにする』というとんでもないミッションに関しては、腹立たしいを通り越して何の感情も湧いてこない。


 そもそも、彼女が本当に馬鹿ではないことまでいまいち信じられない。


 しかし一方で、ピエリックがレリアに好意的な感想を持っているのは、実は予想通りだった。なぜなら、三年前もピエリックはレリアに優しかったからだ。


 当時、家令の人を見る目を信頼していたウィリアムは、彼に倣い新妻を冷静に見てみることにした。その頃のことを回想する。



(あれは、彼女が嫁いできた翌日のことだったか)


 ◇


 ――三年前。


 王命によりレリア・アルトワが嫁いできた翌日。黒焦げになった書斎を呆然と見つめながら、ウィリアムは思わず声を漏らした。


「……改めてひどいな。一体、彼女はどういう人間なんだ」

「魔法ではなく、物理的な火を使って燃やしたようですね。にしても、この書斎の中の、本を燃やさず書類だけ。魔法を使っていないのだとしたら、マッチの使い方がお見事ですなあ。はっはっは」

「ふざけるんじゃない、ピエリック」


 ニコニコとした笑みを崩さない爺を睨め付けた後、ウィリアムはもう一度書斎の惨状に目を戻す。


 そこには、炭の塊になったかつて紙だったものがあり、ウィリアムのため息に合わせてかけらがふわりと浮き、地面に落ちたはずみによりくしゃりと砕けた。焦げ臭さが鼻をつく。普段とはまるで違う様子に、悪夢を見ているようだ。


「なぜこんなことになったんだ?」

「奥様曰く、『こんなにたくさんの書類に火をつけたらどうなるのか知りたかった』らしいですよ」

「なんだそれは……」


 何の情報も得られず、ますます困惑を強めたウィリアムはあることに思い至り、顔色を変えた。


(! そうだ。あの書類はどこだ)


 ウィリアムはすぐに窓の前に置かれた執務机へ足早に駆け寄ると、机上にあるはずの書類を探し始めた。火事の影響で黒い煤を被った机の上の荷物を手で退かし、目的のものを探す。


(記憶では、他の書類に紛れさせた上でここに置いたはずなんだが)


 しかし、見るからにここにないのは明らかだ。諦め切れず執務机の引き出しにも手をかけた。ガタガタと音を立てて書類を探し続ける。


 やはりない。


 その様子を見ていたピエリックが首を傾げる。


「何をお探しで?」

「レリア・アルトワに関する調査結果をまとめた書類がないんだ」


「坊ちゃん、書斎にはいつも鍵をかけておいでですよね。誰かが持ち去った可能性は低うございます。もっと落ち着いて探されては」


 穏やかな言葉を聞いても、全く安堵はできなかった。なぜなら。


(あの調査結果にはとんでもないことが書いてある。しかも、この書斎を燃やしたのは調査対象のレリア・アルトワ本人だ。彼女が自分で見てしまった可能性が)


 焦りで背中を冷たい汗が流れた。


================

ウィリアム・エルランジェ(25歳)

金髪、青い瞳。地位も名誉も才能もなにもかももっているけど、女運だけがない

たぶん、私がこれまでに書いた作品の中で最もヒロインに振り回されてかわいそうなヒーロー

でもまんざらではない様子


================


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短編投稿しました!(2026/7/6)
はじめまして、聖女に振られた旦那様

― 新着の感想 ―
そもそもの任務内容が無茶振りなのは元奥様の責任じゃ無いような
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