20話:金之助、吾輩と散歩に行くのである!
そう言えば、金之助は暇さえあれば窓の外を眺めるようになった。
そんなに外が恋しいのだろうか? そう思うが、近所のおばはんからきつく猫を外に出すなと忠告を受けている身。出して良いものであろうか?
いやしかし、金之助は外に出たがっている。吾輩もぺっとしょっぷなる場所と近所のおばはんの家を往来するのみで、外界に出ることがめっぽう減ってしまった。
たまには外の空気を吸うのも良かろう。それに吾輩も一緒である。
烏などの天敵も、人間と一緒の猫などに手を出すまい。吾輩はそう考え、おばはんの忠告を無視して金之助と外界へ散歩にまいった。
外の空気は思った以上に澄んでおり、心地が良いものである。
息を吸う度に奇麗な空気が体内の黒ずんだ息と交換され、気分が少し楽になるというもの。
金之助というと、家の外を出た時は、外界への恐怖からか、足が竦んでおったが、意を決して一歩踏み出したところ、思ったよりも何も無い。そう理解したのか、興味を持ったものに全力で飛び掛っている。
鳥に花に昆虫に、金之助にはどれも目新しく、知らぬものばかりだったのだろう。目を輝かせじゃれ合っていた。
風が金之助のサビ色の毛を撫で、太陽光がべっこうのように照らす。
お前もやはり外が良いのであるな。
そう呟くも、このまま金之助が何処かへ行ってしまいそうな心細さが吾輩を襲う。
しかし、それもまた一興である。猫とはいえ、吾輩などに縛り付けるなどしてはならぬ。
だがしかし──金之助や、もう少し吾輩の側にいてはくれぬか? 吾輩は、金之助の背を見つめそう問うた。
しかし、金之助は吾輩の言葉など何一つ分からぬ。ミャ〜オ、ミャ〜オ! と元気よく鳴くだけである。
これは参った、参った。お前の言葉が理解出来れば良いというもの。吾輩もまだまだ若輩者なのである。
長い、長い散歩の末、吾輩と金之助は家へ戻ったのは良いものの、金之助は何処か名残惜しそうに何度も外を振り返る。
そんなに外が良かったのか? また今度、一緒に散歩へまいろうぞ。
吾輩は金之助とそんな約束を取り付け、家へと戻ったのである。




