11話:うちは猫どす。
うちは猫どす、名前はありゃしまへん。
とある雨の日、恥ずかしゅうことに迷子になってしもて、さぶうおすしとある建物で雨宿りしようて一声かけたんどす。
ほんなら、大柄の男がビクビク肩揺らしながらうちの前に現れはったんよ。
あ〜、うちの命もここまでか思たんどすけど、なんや男はうちを見るなり、すぐに建物ん中に隠れてしまいはってな、
そん中から温う空気が漂うとりましたわ。雨に濡れてさぶうおすし、うちは堪らんなって入れてくれはらしまへんか? って声を掛け続けとったんどす。せやったら男も堪忍しはったらしゅうて、うちを家に招いてくれたんどす。
家ん中はうちが思った通り暖かおして、そこで一晩だけ泊まらせてもらいましたんや。
そないならなんや男有難いことに、うちみたいな野良の猫にご飯をくれはったんどす。
まあ、全然食われへんかったんどすけど、白う濁った水は、有り難うちょうだいさせてもろいましたわ。
野良っちゅうもんはほんま大変でしてな、その日、ご飯にありつけるかどうかも分からん世界なんよ。
せやから、ほんまは一晩のみの関係や思うとってんけど、恩ができてしもたなと参ったしてもうたんどす。
男はうちにあんまし構わんで、ほいほいと布を敷いて、勝手に寝はったさかい、そっからはうちの時間になったんどす。
兄弟や母は元気かと少し寂しゅうなったんやけど、野良ちゅうもんは、はぐれたら最後。もう家族とは会えんもんなんどす。せやさかいうちは一人で生きて行かなあかんなってしもうたんよ。
これからどうしよか、そう今後のこと考えとったら、急に腹がぎゅるぎゅる鳴り始めて、そっから水っぽいもんが出るわ出るわで大変な目にあわされましてん。
一瞬、恩義を感じたんやけど、あの男はうちを殺そうとしはったんちゃうか? そう気づいてももう遅はりました。気づいたら、お釈迦はんがうちを迎えに来はったんどす。




