10話:猫の名前を決めたのである!
あれから猫の名前はまだ決まっておらぬ。
おばはんから、そろそろ真面目に名前を考えてやれと、軽く叱責されたのだが、如何せん名前とやらは非常に難しいのである。
“サビ公”やら“べっ公”はダメだと言われれば、吾輩も悩んでしまう。
しかし、名前とは大切なものらしい。吾輩はおっさんという名前にも拘らず、この猫にはそれ以上に良い名前をつけろというのは鬼畜の所業なまであるのではなかろうか?
「何を言っているんだい、あんたには夏目銀次郎という名前があるだろ? 何がおっさんなんだい! 何が!」
おばはんの鋭いツッコミが吾輩に“くりてぃかるひっと”を与えた瞬間である。
何も、吾輩の名前を公にする必要などなかったのではなかろうか? そう思うがバレたものは仕方ない。それでも今まで通り、吾輩はおっさんで通すのだからこの際どうでも良い話である。
猫の名前をつけるために、今一度猫との暮らしを思い返してみようと思う。
猫はかなり悪戯な基質を持っているが、それだけでは無い。吾輩の心を揺さぶり暖かくしてくれるのである。
それに、気まぐれかと思えば吾輩を選んだ立派な“男”である。
そんなことを考えていると、猫が急に吾輩の膝に乗り、大きな欠伸をした後、体を丸め寝息を立て始めた。
そんな猫の背を優しく撫でていると、ふと頭にとある言葉が浮かび上がったのである。
それは、猫の名前が脳裏に浮かんだ瞬間である。
おばはん、猫の名前を決めたのである!
吾輩がそう声をはりあげた瞬間、猫はその声に驚き、毛を逆立て逃げてしまった。
参った、参った。年甲斐もなく声を張上げるものでは無かった。
男たるもの、どんな時も冷静に、一歩前を進むべきもの。その教訓を忘れてしまっていたのである。
「ほんと、あんたは変なところで抜けているよね」
おばはんはそう言い嘆息するが、そこに怒りの色は見えぬ。
そんなおばはんを横目に、吾輩は猫の名前を“金之助”とつけることを告げた。
おばはんは、一瞬呆気にとられた顔をしていたが、吾輩が悩みに悩んでつけた名前だと知るや否や、「まあそれでいいんじゃないのかい?」と、ようやく猫の名前に許可が降りた。
しかし、なぜおばはんが呆気にとられていたのか今は知る由もない。
吾輩が、猫の性別が雌であるという事実を知るのはまだまだ先の話である。
次回のわが猫は、11/10に更新予定である!
次回からは何やら、金之助目線が始まるらしいのである!
楽しみにして待っているのである!




