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百夜一夜物語(短編百篇企画)  作者: 矢久 勝基


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037冥府兵団の野望:終焉のレクイエム……?

四題

不遇、塹壕、ハズレ、ハーレム

 街が燃えている。

 人々は異形の軍隊に逃げ惑い、その姿を見るだけで発狂して高所から飛び降りるものすらいた。

「フン……」

 ざまぁみろ、である。そういう部分すら、ワシの軍隊が如何に対人戦闘に優れているかの証左になる。

 ワシはその報告を聞いてなお、炭化してゆくその街に凍り付くような冷たい視線を向けていた。数千度の業火ですべてを消し去った後、さらに絶対零度の洗礼を浴びせるほどの怨嗟。

 この国の奴らはワシを侮辱した。ワシの造成した冥府兵団を侮り、ワシを異端として国から追放した。民草も報道に踊らされ、国を追われたワシの背中に石を投げるような態度だった。

 見よ。それが如何に愚かなことであったか。この景色を見れば明らかではないか。

 我が冥府兵団がどれだけ優秀か。それを身をもって味わっているであろうこの国の連中の叫びが切実であるほど、この国は取り返しがつかない状況に陥っていくという皮肉。

 しかしそれでもワシの留飲は下がらない。このやるせなさを沈めるためには、この街を破壊しつくし復讐をしつくして……そうだな……女たちを使い捨てにして……ようやく贖えるかといった心情である。

 その日がくるまであと何日かかるだろう。いや、何日もかかるまい。

 我が軍はまだまだ余力を残している。彼奴等は塹壕などという、飛び道具を前提にした防衛陣を敷いて迎え撃っていたが、なんてことはない。マジックミサイルなどではもともと死人である冥府兵団の戦意をくじくことなどはできぬのだ。

 当たり前のことだが今生きている兵よりも今まで死んだ屍人の方がはるかに多い。圧倒的な人海戦術の前に、今、人間の傲慢を絵に描いた国は瓦解しようとしていた。

 あの炎が天を焼くほどに、ワシがどれだけ不遇な扱いを受けてきたかが分かろうというもの。ワシを重用していれば、……この炎は逆に国の栄光となり、世界中を燃やし尽くしていたはずなのだ。

 頭に、ワシを陥れたすべての貴族の顔が思い浮かぶ。そのすべてを逆さ吊りにして、肥溜めのバケツに頭を突っ込ませ、窒息させなければ気がすまない。

「よいか。大臣格はすべてひっ捕らえ一つところに放り込め。他の男はすべて殺してよい。女もSクラスを除いては皆殺しだ。食うなり犯すなり好きにしろ!」

「ワラーー!」

 号令に答える冥府兵団の死人たちは、骸骨兵や屍兵ゾンビで構成されている。忠実で、恐れを知らず、不平も言わない最強軍団である。一度聞いた命令は、遂行するか死ぬまで守り抜く。そんな彼らに皆殺しを命じたのだ。もはやワシに許しを乞うても遅い。

 墓場から量産された精鋭たちは塹壕を乗り越え、街を完全に制圧し、今まさに城門を打ち砕こうとしていた。


 城内外で攻防が続いている。

 だれが勘違いしたか、死人には火が有効だと信じた馬鹿どもが節操もなく火器を用いて、逆に自分たちが燃え盛る炎に追い詰められていた。

 言っておくが冥府兵団、特に骸骨兵は炎に巻かれても何の影響もない。

 焔を背負ってパニックを起こしている人間など物の数ではなく、しかも攻撃は二十四時間止むことはない。六万騎と謳われた騎士団も、もはや馬を使って戦える状況にはなく、馬上が前提の重い装甲を脱いで戦うしかない。城門になだれ込む冥府兵団を止めるものは無きに等しい。

 心中で、ワシはすでに戦後の処理について思いを巡らせていた。王族は公開処刑……と言いたいところだが、街一つを皆殺しにしてしまうのだから、公開も何もあったものではない。陰湿な拷問にかけ、狂い死にするまで楽しんでやろうと思う。あの無能な側近どもは先ほど述べたように肥溜め風呂で窒息死である。

 あとは……ヒェッヒェッヒェッ。

 ハーレム。不遇なワシを癒すため、この国の選りすぐりの美女たちでハーレムを形成し、昼夜を問わず女体で身体を洗う生活でも楽しんでやろうではないか。

「おい」ワシは一人の屍兵を呼ぶ。

「へぃボス。なんでしょう」

 生前はピース=ドルゥェンという名だったらしい。ワシの傑作の一体で、いわゆるゾンビではあるが、その脳みそはまだまだみずみずしい。

「拘束具を各種用意しておけ。捕らえた女の数だけな!」

「ウラ。えすクラスの女、接収した町牢に放り込んでいやす」

「うむ。ご苦労」

 楽しみでならない。この街にはアイドルグループ〝サイフォン55(ゴーゴー)〟がいた。

 ナオ、ユキミ、ワカナ、チグサ、カズミという名の五人組ユニットで、引け目なしにかわいらしい。その女たちの肌に触れられるのも目前なのだ。

 王妃であるリネットも超Sクラスの美貌を備えており、娘のビアンカ共に、すべてワシのものとなる。

 それらをどのように弄ぶか。ナオにはああして、ユキミにはアレをつけて……

「ふひひひひひ」

 ……考えるだけで生唾がとまらない。


 攻防は三日三晩続いた。

 逆に言えばたった三日三晩で戦いは終わった。

 その間、ワシが構えた街の郊外の本陣には、矢の一本すら飛んでくることはなかった。つまり、ワシがたった一人で創り上げた軍事力に、一大勢力であったこの国はなす術もなかったということになる。それが如何なる巨業かは言うまでもない。

「へぃボス。処理、終わりましたぜ」

 ワシの忠実なるしもべ、屍兵の総長であるピースは、その蒼ざめた顔でこちらに歩いてきて、言った。

「謁見の間に行けば王族と行政官がいやす」

「ご苦労」

 これこの通りだ。

 生きた人間などおらずとも何の支障もない。兵は屍の数だけ増やしていけるし、それでいて大兵力となっても兵站の心配をする必要もない。

 これほど優れた軍団を、見た目や倫理観で遠ざけた男を、ワシは冷ややかな目で見降ろした。

「どうですか。王。軽んじたワシの冥府兵団に、あっけなく国を破壊された気分は」

 その男は縄でぐるぐる巻きにされ、無様な姿で突っ伏している。優越感が、コツと小さく蹴りを入れる動作となり、ワシはそのままかがむこともなく見下ろした。

「優秀でしょう? 冷酷にして忠実。恐れもなければ命令を確実にこなします。……人間などという不完全な兵器に国の命運を賭ける愚かさが身に沁みたことでしょうな」

「グレンダよ……」王は負け惜しみも甚だしい眼光をワシに向け、

「やはり貴様を追放した余の判断に間違いはなかったようじゃ。貴様のような狂気に目が眩んだ男に国は任せられぬ」

「ほう……」

 ワシは平然とした表情とは裏腹に最大限の憎しみをもって王の鼻を蹴り上げた。そして己の血で顔を染めた王を嘲笑う。

「お主の軽率で、ワシのおもちゃにされるビアンカも不憫よのう」

「な……」

 あからさまに表情をゆがめる王。

「ビアンカには手を出すな!」

「ビアンカだけではないぞ。あの美しいリネット王妃も、ワシのハーレムで死ぬまで慰み者となるのだよ。もっとも、あの二人にはちぃとキツいお仕置きをせんといかんがなぁ」

「やめろ!」

「おっと、何をされるか不安かのう。心配せんでも、お主の目の前で堕ちてゆく姿をたっぷりと見せてやるわ」

 王妃と王女……彼奴等はワシをいつも蔑んだ目で見ておった。あの目を思い出すたびに虫唾が走る。きっちり仕置きをしなければ気がすまない。

 ワシはいくつもの拷問具を頭に思い浮かべ、口角を上げると目の前でイモムシと化している王とその側近たちに白い歯を見せる。

「さて、お主たちは、どのような死に方をするのか、な……?」

 そんなワシの背中で、肉の削げ落ちた骸骨兵の空虚な眼窩が、無慈悲な死神の如く、謁見の間に闇を吐き出していた。


 ワシはその場で、側近数名の〝処刑〟を楽しんだ。一人一人……次の死は自分であることを覚悟させるための見せしめに……である。

 さて次は……

 ワシは脇に控えていたピースを手招きをした。

「王妃を、地下牢から連れてまいれ」

 王妃リネットである。側近を殺された王は眉間にしわを寄せて震えていたが、聞こえよがしなその声に目を覚ましたらしい。

「な、何をするつもりじゃ……!」

「なぁに、殺しはせんよ……」

 あの女はどんな声で鳴くだろう……思いながら、王の前でほくそ笑む。

「お主の知らぬ妻の素顔を見せてやるだけよ」

「ひどいことはやめるのじゃ!」

 そうそうその顔。悲痛に歪むその顔が、ワシの不遇への慰めになるのだよ。

 ワシはその様を嘲笑い、一度身を翻す。それで気づいた。

「……ん?」

 ピースがまだその場から動いていなかったのだ。ワシは怪訝な目を向け、

「どうした。早く王妃を連れてこい」

「へぃボス」

「どうした」

「オーヒってのがどのオンナを指すのか、ちょっと分かりかねます」

「見たことないのか」

「へぇ」

 確かにそれはやむを得ないことかもしれん。王妃というものはおいそれと顔を出すものではないから、庶民が彼女の顔を知らないのも無理はなかった。

「地下牢に放り込んだ女どもの服とかは脱がしてないな?」

「へぇ。指示にありやせんでしたんで」

「では、王妃は青を好んだ。王族の紋章のついている、青いドレスを着ている金髪のロングヘアの女を連れてこい」

「ウラー」

 ウラーは了承を表す。そしてようやく動き出すピース。

 王女ビアンカも金髪のロングヘアだから、今日着ていた服装によっては彼女を連れてくるかもしれないが、この際どちらでも構わない。このワシを軽んじた男の前で、この男の愛する女を羞恥と屈辱のどん底に陥れてやるのだ。

 王は震えながらも、気丈に言い放つ。

「余のことはどのようにしても構わん。妃には慈悲を!!」

「慈悲を与えてやろうではないか。たっぷり……のう」

「貴様は悪魔か!」

「ワシを悪魔にしたのは、お主なのだぞ」

 さぁ後悔するがいい。忠言を無視したばかりかワシを追放した罪の重さを、蹂躙される妻の姿を見ながら絶望するがいい!

 ……ワシは王の必死の懇願に心地よい優越感を感じながら、ピースが戻ってくるのを待った。


 そしてその時がやってきた。

「戻りやした」のその声にワシは年甲斐もなく心を躍らせ、サディスティックな欲望をむき出しにして謁見の間の入口へと振り向く。

 が、その期待は一瞬にして砕かれた。

「それはリネットではない!」

 確かにその女は青を基調とした服装に身を包んでいる。金髪のロングヘアーではある。しかしその女はリネットでもビアンカでもない。

 期待していただけに、落胆もでかいワシは、怯えている女の服を指さして言った。

「これはドレスではないだろう」

「これはドレスではないんですね」

「お主……どういうものがドレスだか分かっておるか?」

「これがドレスでないということは分かりやした」

「……」

 一抹の心配がよぎるワシだが、今ここで自分で連れてくるのも何となくかっこ悪い。

 配下に連れられ、ボロ雑巾のようにこのステージに投げつけられるのが、なんというか……これから始める謝肉祭の理想なのだ。

 ……その時の王妃の屈辱と絶望に満ちた表情を見下ろしながら、言葉でプライドをズタズタに引き裂き、王の目の前でゆっくりと、彼奴にも見せたことがないであろう痴態をさらさせる……。

 ワシは口の端からこぼれそうになるよだれをぬぐうと、「もう一回行ってまいれ」と指示して、再び王の方へと向き直った。

「楽しみよのう」

「くっ……!!」

「お主は妻であった女のどのような鳴き声が聞きたい?」

「貴様のような下衆はいつか必ず報いを受ける! 今に見ておれ!」

「それはそれは……楽しみだのう」

 皮肉で王の首を絞めながらピースを待つ。三十路を越えてもなお突き抜けた美貌の持ち主であるリネットだ。王室に仕えていた頃から、どう料理すれば自分の思い通りに汚せるかと思いを巡らせていた。

 ワシは骸骨兵に、壺やら棒やらペンチやらと、さまざまなアイテムを注文した。その使用法を想像したか、王の表情がまた歪む。

「ワシが報いを受ける前に、王妃でたっぷり報われようぞ」

 ……ワシにとって最高のステージであった。


 そしてついに、ピースが戻ってくる。謁見の間に放り込まれた女。その女は……

「違うわーーー!!」

 ワシ、思わず先ほどよりも強い口調でたしなめる。

「分からんのか! 王妃だぞ! こんな年増のババァじゃなくて、この国でもっとも高貴な命と名高い女だ!」

 繰り返すが、期待度の分、ストレスもひとしおだ。

 しかし、改めてドレスの説明をしようとしても、これを言葉で説明するのが難しい。しかも、今日、リネットがどのようなドレスを着ていたかも知らないのだ。何とも言えない部分があった。

「もっと華やかなヤツ! 仰々しい服を着ているヤツを連れてまいれ!」

「ウラー」

 分かってんのかホントに……。

 一抹の不安が隠し切れないが、ワシが王を見下ろしたまま、そのステージに投げ込まれる王妃……というシチュエーションにこだわりたくて、あくまでピースを頼みにする。

 そんな忠実な下僕はまた行って、また戻ってきた。

 が、今度は〝リネット〟というより〝ネットリ〟という感じの女を連れてきて、溜めてたよだれを吹き出す。

「違いすぎて草生えない!!」

「ではこれは……」

「ハズレすぎて草ーーーー!!」

「じゃあコイツ」

「お主はドレスというものが分からんのか!!」

「すませんボス……」ピースが、腐った顔で申し訳なさそうにする。

「そうすると、あっしにはオーヒという女が分かりやせん」

「……」

 オーヒオーヒと言っているが、ここをリネットと正せば分かるのか?……いや。

 王妃で分からない時点で、リネットと言っても分からない気がする。

 そもそも青でなくてもよほどのことがない限り、ドレスを着ているはずである。何でもいいからドレスを連れてくればいいものを、それが分からないということは、この屍人にはドレスというものの認識がないのか。それとも、まさか何が仰々しくてなにがそうでないかも分からないのか。

「スマセン。お役に立てず……」

「むぅ……」

 困った。

 うん。

 ……

 ……困ったのだが……。

 ……

 ……しかし、ワシの違和感は、もっと別なところにある気がしてきた。

 何となくの違和感……。しかし、そこには、背筋が凍り付くような決定的な違和感が芽生え、ワシは呼吸を浅くする。

「骸骨兵。しばらくここを見張っておれ」

 王や側近をそのままに、踵を返す。

「ピース、ワシと来い」

 そして謁見の間をでれば、血で薄汚れてはいるが大理石の質感の荘厳な廊下が伸びている。

 向かうべきは……地下牢であった。


 階段を下りてゆくワシの足はせわしない。

 嫌な予感がしたのだ。隣についてくるこの屍人は、なぜ青いドレスの女を見つけられないのか。偏見かもしれないが、あれほど目立てばドレスと指定しなくても分かりそうなものだ。

 懸念の通り、死人だけに一部の知的感覚が壊死してしまっている可能性はなくはない。

 いや……しかし、それもそうなのだが、もっと気になることがある。

 それはピースに聞けばいいのかもしれない。しかし……

 とにかく、自分の目で確かめるのが早い。ワシは運動不足の肺を励まし、肩で浅く息をしながら、石造りの通路を横切って地下牢へと急いだ。

 そして……

 ワシは、愕然となった。

「ピース」

「へぇ」

「なんだこれは」

「なんだこれはと申されますと?」

 ワシは、たいまつの灯りだけが頼りなく揺らめく格子戸の前に立ち尽くしている。

「なんでこんなババァたちがワシのハーレムの対象になっとるんだと聞いとるんだ!」

 目の前でうごめいている女たちは、SクラスどころかAクラスを見つけるのも……いや、それ以前に、年齢とかも含め、いろんな意味でヤバい女たちの群れであったのだ。

「リネット! リネットはいるか!?」

 呼べども呼べども返事はない。まぁ旧秩序を考えればワシが呼び捨てにして答えるはずもないのだが、きっとそういうことではない。

「おいピース。リネットはどこだ」

「いや、ですから、あっしにはどれがオーヒだか……」

 ワシの中で、だんだん〝嫌な予感〟が現実味を帯びてくる。

 つまり……ここにはリネットはいない。

 それがどういうことか。……背筋が凍り付くような推測が、ワシの次の言葉を震えさせた。

「ワシは、Sクラスの女だけを残しておけと言ったはずだが」

「へぇ」

「なぜ、この牢の中の顔面偏差値はこんなに低いのだ」

「へぇ?」

 たいまつが揺れる。この、悪びれもしない顔が何かを言い出すのが、怖い。

「お主……まさかババ専か……?」

「ババ専……?」

「この中の女は、お主の趣味で選出したのかと聞いとる」

「いやぁ……一度死んでみたら女の良さがとんと分からなくなりやして……」

「どう選んだのか、早く言わんか」

「実はですね」

 蒼白い顔は、やや首をかしげて言った。

「Sクラスがよく分からなかったんですよ」

「なら聞けよ……」

「一度聞いた命令は遂行するか死ぬまで有効なんで、聞くとかじゃなく、やりきらにゃならんのです」

「……」

 嫌な予感しかしない。

「……それで? Sクラスが分からないからどうした」

「仕方ないんで、名前聞いて決めやした」

「名前……?」

「おい」

 おもむろに、ピースは鉄格子の向こうの女たちに話しかけた。

「左から三人……お前とお前とお前。名前言ってみろ」

「佐藤です」

「鈴木です」

「桜井です」

「ま、このようにSから始まる女を地下牢に……」

「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ワシは年甲斐もなく怒鳴る。

「Sクラスと言ったら、クラスで一位二位を争う奴ら、みたいな意味にきまっておるだろ!」

「いや、そうならそう言ってくれれば……」

「待て。そうすると他の女はどうした!」

「いや、ですから、ご命令通りにすべて殺して冥府兵団に……」

「ちょっと待て!! そうするとビアンカとリネットは!?」

 ああそっか。リネットってのがオーヒなんですね。とか悪びれない死人は表情も変えずに言った。

「BとLじゃ、そりゃ生きられませんぜ。多分みんなで食ったと思いやす」

「……ガ、ガビーーン!!」

 へたり込むワシ。しかし狂ったようにバッと立ち上がると、

「待て! 町牢の担当もお主か!!」

「そらもちろんです。総長ですから」

「ナオは? ユキミは? ワカナは? チグサは? カズミは?」

「なんですかそれ」

「サイフォン55を知らんのか!」

「知りやせんて」

「彼奴らはかわいかったろ!? かわいかったよな!?」

「いやぁ……死んでからってもの、かわいいとかホント分からなくなりやして……」

 ただ、言えることがありやす……と胸を張ったピース=ドルゥェン。

「N,Y,W,T,Kなんか、みんな食いやした」

「うきーーーーーーーーーーーー!!!」

 ワシはひきつけを起こして倒れる。

 不遇であったワシに訪れた千載一遇のハーレム計画が!! ハーレム計画がぁぁ!!

 しばらく痙攣して泡を吹いていたワシはしかし、ほとんど腰も膝も伸ばしたまま漫画のように立ち上がる。

「ピース!! 我が冥府兵団はただちに隣国、サフェルトを攻める!」

「ウラー!」

「いいか! 次は間違うな!! 男は皆殺し。女はクラスで一位二位を争う奴らだけ残すんだぞ!!」

「くらすでにちいやにーですね!?」

「おうともさ! いくぞ!!」

 ……そして、ワシの世界征服が始まった。


 いや……世界征服の必要はなかったはずなんだが、ピースの奴はサフェルトでも勘違いをした。その次のオーンフッドでも勘違いした。

 やっぱちょっとは人間の配下も必要かもしれぬ……と思いが至った頃、ワシの率いる冥府兵団は、もはや世界全部を敵に回していたのだった……。

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