幕間3 ―西宮 美桜
話を終えて、少し息をつく。
感情が乗りすぎて松葉杖を落としたまま話をしていたのだけれど、普通に痛すぎる。この状態であれだけ話せるあたり、痛みに対する耐性がついてきているのだろうな、と、ちょっと思う。
――実は、話の中に、少しだけ嘘を混ぜたのだけれど、バレていないかな。どうだろう?
まあ、もう分かっていると思うけれど。私は、人の温かさなんて、全然知らない。
多分、他のみんなは知っているのだろうけれど、でも私は、知らない。
だって、そうでしょう?
小学校のときには見捨てられて、良いように他人に使われて脅されて搾取されて、もらえるお金は100円あれば良い方。高校に入ってからは何故かいじめっ子に目をつけられていじめられる。しかも両親は、全くの赤の他人に、特に理由もなく殺されている。これで他人を信じろっていうほうが無理だ。
だけど、それを亮に言う必要はない。私の話をする必要はない。
幸い、その効果は絶大だったみたいだ。目の前で亮は涙を流しながら俯いている。結構効いている。
これで、もとの亮に戻ってくれるといいのだけれど。
どうかな、亮?
急に、身体がピクッと跳ねた。
――え?
口元から、生温かい、どろっとしたものが噴き出る。同時に、胸元に強烈な違和感を感じた。
「西宮……?」
ゆっくりと、胸元に目を遣る。
そこからは、銀色のなにかが、生えていた。
……あ、これ、見たことあるかも。
そういえば、ついこの前、同じものが右手から生えているのを見た気がする。何なんだろう、これ?
我に返った。
生えてるんじゃなく、刺さってるんだ。
――そして、それを認識すると同時に、胸元に激痛が走った。
ナイフが引き抜かれる。血が一気に噴き出て、それで私は、やけにゆっくりと、仰向けに倒れた。
「……西宮っ!?」
亮が駆け寄ってくるのが見える。意識が薄れていく。
ぼんやりとした視界の中で、どうにか首を回し、殺人者の顔を見る。
そこで不敵に笑う彼を見て、私は自分の想像が正しかったことを確信した。
――でも、少し遅かった。
「……りょ、う」
やっとのことで、言葉を紡ぐ。
「お、とうさ、じゃ、……ない」
「はっ!?」
言えた。どうにか言えた。
後は、あの人が、どうにかしてくれるだろう。
私は、少し……休みたい。
「西宮、西宮っ!」
ああ。……やっと他人のために必死になれる、そんな、もとの亮に、戻ったのね……。
よ、かっ……。




