06話 国を救ってみたかった
「あぅぅぅ。もう、らめぇぇぇ……」
アリスは脱力しきっている。ちょっと刺激が強すぎたかもな。
俺は宣言通りに、アリスにお仕置きを決行した。王宮を出た後、街にある酒場兼宿屋まで赴いたのだ。
店主や宿泊客は俺の姿を見て、一目散に逃げて行った。なのでこの建物というか、ここら一帯は貸し切りとなっている。
それにしても昨日はすごかった。創生スキルで、振動するこけしを生み出したんだ。それを突っ込んだだけなんだけど、まあ反応がすごかった。
アリスはだらしない声を上げて、よがりまくっていた。どうやら初めてだったみたいで、その証拠にベッドには赤いシミがついている。
だが素養があったらしく、アリスは辛そうどころか、一晩中幸せそうだった。この世界にこんな道具はないと思うし、全世界で初めて体験したことになるだろう。
ただちょっとやりすぎたと思ったのが、こけしを突っ込んでいる所の断面図を、創生スキルで投影したときのことだ。アリスに見せつけるようにして、大画面で映し出した。これにはアリスも、かなり恥ずかしそうに嫌嫌と首を振っていた。
あくまでお仕置きなので、そのまま続けたのだが、途中からそれも興奮に変わっていったようだった。汗とか、よくわからない液体とかで、部屋には水たまりが出来ていたほどだ。アリスにはやはり素養があると思う。
けっこう、いい拾い物をしたかもしれない。
■□■□■
俺は創生スキルで翼を生やして、空の旅を楽しんでいる。さっきの街では正体がバレてしまったために、十分に異世界を見物することが出来なかった。できれば人々にまぎれて、ゆっくり観光したいものだ。
ちなみにアリスは宿に置いてきた。創生スキルで作った振動するカプセルを数十個つけて、椅子に固定させているので、今頃は一人で愉しんでいるだろう。放置プレイという奴だ。
空を飛びながら地上に目をやる。
そこには奇妙な建造物があった。万里の長城みたいなそれは、地平線の端から端まで伸びていた。
さらに長時間飛行を続ける。そこには街があって、広場に多くの人が集まっていた。
数万人はいると思う。どうやら、王様が演説をしているらしい。
俺は高度を落として、演説を聞くことにした。
「この私、トラヌプは、悪化する移民問題を解決するために、隣国との境界にトラヌプウォールを完成させることを決めた!」
何とかウォールというのが、先ほどの万里の長城みたいなものの名前らしい。演説を聞いている人は、喜びの声を上げる人と、不満を口にする人とで二分していた。
「移民を締め出すことによって、トラヌプ国民の土地と職が、移民たちに奪われている現状を打破するのだ!」
この国に移民が流れているらしい。移民のせいでこの国が不利益を被っているという事か。
「ふざけるな! 俺たちの国は貧乏で、殺人が横行してるんだ! あんなところに戻れるか!」
「死ぬ思いで逃げ出して、やっとこの国に来れたと思ったのに……」
移民の人たちにも言い分はあるらしい。演説に不満を持っているのは移民側ってことか。
「全ては、強いトラヌプ国を実現するためだ! さあ、みんなで移民たちを追い出そう!」
この国を追い出されたら、移民たちは劣悪な環境に戻されてしまう。それをわかっていながら、この王様は移民を締め出そうとしているらしい。
いくら土地と職が奪われるからといって、杓子定規に考えなくてもいいと思う。もっとやりようはないのだろうか。
俺は王様の話を聞いて、前世での生活指導の先生を思い出した。融通も利かず、一方的に決めつける態度が気に入らなかった。この王様は、あの生活指導の先生と同じだ。
……気にくわない。
俺は空から、王様の近くに降り立つ。突然のことに、王様も、その警護についていた奴らも、すぐには反応できなかったようだ。
俺は王様に向かって、レーザーを放つ。一瞬で死んだ。
あまりの出来事に、演説を聞いていた人たちはしばらく固まっていた。そして何が起きたかを、ゆっくりと理解し始めた。
「きゃああああああ!」
「悪魔だ! 悪魔が来たぞー!」
逃げ散る市民達。国民も移民も、関係なく悲鳴を上げる。いきなり国のトップが死んだら、そりゃあパニックになる。
阿鼻叫喚に包まれた広場で、俺は達成感を感じていた。頭の固い王様が死に、この国はいい方向へと進んでいくことだろう。
そう思っていた俺の耳に、ある言葉が入り込んできた。移民同士で会話しているようだ。
「なんか知らねえが、トラヌプがくたばりやがったぜ!」
「これで、移民の締め出しは白紙だ! まだまだ麻薬を売り捌けるぞ!」
「密輸で大儲けだ! あの悪魔さまさまだな! あっはっはっは!」
……は?
麻薬?
密輸?
こいつらそんなことのために、移住してきたってこと?
俺はお前らのためを思って、王様を殺したわけだが。国を追い出されたら、劣悪な環境に逆戻りになるから、と思って。
でも、そんな必要はなかったわけだ。
俺はこんな奴らのために行動したことがバカらしくなった。そして、せっかくの親切心を踏みにじる奴は許さん。
俺はさきほど麻薬とか密輸とかほざいていた奴らのもとに行った。悲鳴を上げる暇も与えずに、そいつらの頭を握り潰した。
もう、ここに用はない。俺は空を飛んで、アリスのいる宿に戻った。




