05話 おもちゃを手に入れた
「はああああああっ‼」
アリスが大剣を持って気合を入れた。分身の術を使っているかのように、体が左右にブレながら突っ込んでくる。
凄まじく速い。振りかぶる大剣が、風を切る音を伴って迫ってくる。
が、俺はそれを指で受け止めた。
「は? な……っ!?」
彼女は驚きのあまり、言葉にならない声を出していた。アリスの大剣を、右手の人差し指と中指で、真剣白刃取りしただけなんだけどね。
残像が見えるくらい速かったけれど、象悪魔に比べたら大したことはない。力も、大人と子供の差くらいある。あの象悪魔は気付いたら接近していたし、俺を吹っ飛ばすくらい強かった。
アリスは必死で大剣を抜こうとしているが、俺は指に力を込めている。どれだけ頑張っても、大剣が抜けることはない。
アリスは大剣を手放し、俺から距離を取った。
「な、何者よ、あんた」
アリスは震える声でそう言った。
ソウル、って名前にしたんだったかな。せっかく考えた名前を、こいつはダサいとか、憶える気がないとか言ってコケにしやがった。許さん。
どうやって懲らしめてやろうか考えていた時だった。突如、アリスは右手を天に突き出し、詠唱を始めた。
「光の剣よ、我の求めに応じ舞い踊れ。刃の煌めきは、悪を滅し、夜明けを導く」
おお、かっこいい! アリスの体から光の粒があふれ出し、いくつもの光の剣が形成されていく。アリスは上にかざしていた右手を、俺のほうに向けた。
「永劫に眩め。エペ・ドゥ・リュミエール!」
これぞ異世界。魔法は、本当にあったんだ。よくよく考えたら、俺も似たようなことはやっていたけどさ。
光の剣が俺に殺到する。強そうな技だけど、そういえば俺ってこの体になってから、ひとつもダメージを負ったことがないんだよな。どうせ今回も同じ結末になるだろう。
「この技は光属性の魔法よ! 悪魔のあんたには相性最悪でしょ!」
しまった! すっかり忘れていた。そもそも悪魔城にいた奴らも、光のレーザーで瞬殺だった。
油断。光の剣は目の前まで迫ってきている。回避はできない。創生スキルを使う暇もない。
俺は光魔法をまともに喰らった。やられた、と思った。
「やったか」
アリスはそう言った。俺は無傷で立っていた。だからフラグを立てるのはだめだって。
「そ、そんな! なんで! わたしの光魔法を喰らって、なんで無事でいられるの!」
知らん。さすがの俺も、今回はやばいと思った。今度、バリアとかをとっさに出せるようにしておこう。
アリスは顔面を蒼白にして、足も震えている。戦意喪失状態なのかな。
俺はまだ攻撃してないけど、彼女はすべての切り札を出し切った感じか。ここは最後のダメ押しといくか。
俺はレーザーをアリスに放つ。反応できない速度で打ち出されたレーザーは、アリスの頬をかする。
わざと狙いをずらして、力の差を見せつけた。殺すのにはもったいないくらいの美少女だからね。
「悪魔が、光魔法を……ありえない……。光耐性を持っているなんて……勝てるわけない……」
アリスはそう言ってへたり込んだ。決着はついたようだ。
俺はアリスを殺す気はない。それどころか側に置いておきたいと考えている。
でも出会いは最悪だったし、素直に応じてくれるとは思っていない。俺はアリスに近づいて行った。
「う……ああ……来ないで……来ないでぇ……」
アリスは泣きべそをかいて、後ろに後ずさる。
あーやばい。そそるわ。美少女の泣き顔ってめっちゃいいな。
俺ってこんな性癖があったんだな。初めての発見だ。自分で自分にちょっと引いてしまうが、渦巻く欲望は収まらない。
俺は創生スキルを使用する。
イメージは首輪。
アリスの首元に首輪が巻き付く。俺の手元には手綱があり、首輪とつながっている。
アリスを思い通りにしたくて首輪をイメージしたが、このままだと無理やり引っ張っていくことになりそうだな。そう思っていたが、俺が歩くと彼女は四つん這いで俺の後ろをついてくる。
なるほど、創生スキルで発揮した効果は思い通りになる部分であって、首輪はその形を成したにすぎないのか。俺は一つ、創生スキルの特徴を学んだ。
さて、とりあえず当初の目的通り、王様に会って正当防衛である旨を伝えに行くとするか。
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俺はアリスを伴って王宮に出向いた。アリスはここまで無言だ。すべてを諦めたかのような、絶望的な表情をしている。
中に入っていくと、俺の姿を見た人たちが逃げ散っていく。外から見た感じ、この王宮は二階建てではなかった。王様のいる部屋は奥のほうにあるんだろうか。
俺は奥までずんずんと進んでいく。そこに大きな扉があった。俺は扉を開けて中に入る。
「まさかアリス殿が敵の手に落ちるとは」
「終わりだ。この国の、いや、この世界の終わりだ」
俺とアリスが入った部屋は大きな広間だった。中では大臣らしき人達が、悲観した声でうめいていた。彼らは俺に気づくと、情けない声を上げながら壁際に寄っていった。
あ、部屋の隅に王冠をかぶった人がいる。他の人たちと比べてひと際太っているし、一番裕福そうだ。あの人が王様だな。
「お、おおお、お前が都を滅ぼした悪魔だな。の、のの望みはなんだ。よ、よよよ、余が望みを叶えてやろう」
「そ、そうだとも! こ、この方はこの国で一番偉いのだ。わ、我々と敵対するより、よほど利口であるぞ」
あ、なんか話をわかってくれそうな人たちだな。いきなり兵士に襲われたから正当防衛なんだよ。だから問題ないよね。
「そ、そうか。よ、余の兵士が早まってしまったようだな」
「お、お詫びと言ってはなんだが、お主に進呈したいものがある。い、いい一歩こちらへ近寄ってはいただけないか」
おー、太っ腹だな。貰えるものは貰っておこう。そう思って、彼らの言う通りに近寄ったのだが。
「バカめ! この瞬間を待っていた! 破魔の剣の威力を思い知れ!」
そう言って、天井から一人の兵士が降ってきた。剣を持って俺を貫こうとする。
なるほど、俺をこの場所に誘導するために近寄れと言ったのか。舐めてるな。
俺は上から降ってきた兵士を、大剣で真っ二つにする。この大剣はアリスが持っていたものだ。広間に鮮血が降りそそぐ。
「そんな! 騎士カマーセの奇襲を防ぐなんて!」
「破魔の剣すら通用しないとは……っ」
この場にいる奴は皆殺し決定だ。お馴染みとなったレーザーで、一人一人の頭に穴をあけていく。
残ったのは王様と数人の取り巻きだけだ。
「ま、ままま待て! そうだ、王位、王位を譲ろう! そこの勇者も好きにしていい!」
「そ、そうだ! 役立たずの勇者などどうでもいい!」
「だから、命だけは助けてくれ!」
えー、アリスって君たちのために戦ってたんじゃないの? ちょっとアリスのことが可哀そうになっちゃったな。まあ、手放す気はないけど。
俺は同じように、レーザーで王様たちの頭をぶち抜いた。
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さて、とりあえず王様に会って話をするという目的は達成したわけだ。次は、俺の名前をコケにしたアリスにお仕置きしないとな。




