百合百合特訓(同期強化)と、崩れ去る防壁(セキュリティ)
バグのない新世界。新宿の超高級タワーマンション、最上階ペントハウス。
世界一平和なこの場所で、秤珠里と真祖リリスは、広大でふかふかのベッドの上、生まれたままの姿で、真剣な表情で向き合っていた。
「……リリス様。今日こそは、今日こそは王子様との『子孫繁栄プロセス(本番)』を完遂しなければなりませんわ!」
「ええ、ジュリ。……私の真祖の本能(魂)も、彼の『熱(雄のアクセス)』を求めて狂いそうなのに。……彼が能動的に触れた瞬間、私たちの防壁がキャパオーバーを起こしてしまう……。この致命的なエラー(バグ)、今日ここで、二人で修正しましょう」
二人の目的は一つ。自分たちから仕掛けるのは無敵なのに、エンリから仕掛けられると一瞬で果ててしまう(即落ちしちゃう)という、このポンコツな仕様を克服することだ。
そのための特訓——それは、二人で互いの「物理(肉体)」と「魔法(魔力)」を限界まで高め合い、どんな過剰な快感にも耐えられる「愛の防壁」を構築することだった。
「「百合百合特訓(同期強化)——開始!!」」
二人は同時に唇を重ねた。
「ん……っ、んちゅっ♡ ……ふふっ、ジュリの唇、今日も甘くて……随分と、美味しそうね……♡」
「ぁあッ♡ リ、リリス様ッ、朝からそんなねっとりした魔力(愛撫)は……っ! ああっ、私の物理防壁が、貴女の冷たい魔力で溶かされ、あンッ♡」
リリスはジュリの豊かな胸に自身の顔を埋め、その柔らかさと体温を確かめるように、スリスリと擦り付けながら、魔力を帯びた甘い吐息を吹き込んだ。
同時に、ジュリはリリスの細い腰を抱き寄せ、そのスレンダーな肢体を自身の圧倒的な質量(胸、太もも)で包み込み、物理的な幸福感を直接脳内へと流し込む。
「ふふっ。乳牛さんの物理攻撃、間近で見ると……本当に、重苦しいわね♡ でも、この重さ……心地いいわ……♡」
「あ、あガ……っ♡ リ、リリス様ッ、そこはダメ、指先で、うなじを舐めるのは……っ! 魔力が、直接、魂を撫でる、あンッ♡」
リリスはジュリの首筋に自身の牙を立て、吸血欲求と愛欲が融合した、極上の『熱交換(愛撫)』を要求する。ジュリはだらしない嬌声を上げ、全身をビクビクと痙攣させながらも、リリスの背中に爪を立て、彼女の甘い匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
物理と魔法。
相反する二つの力が、エンリを置き去りにして、ベッドの上で濃厚に混ざり合い、同期していく。
互いの肌の質感、甘い匂い、魔力のオーラ。二人の存在が溶け合い、一つのベクトルへと収束する。
「……あ、あははッ♡ 二人なら、二人なら、この限界の快感にも耐えられる……ッ!」
「ええ、ジュリ……っ。私たちの愛の波長は、もはや完全に一つになったの……ッ! さあ、もっと、もっと高め合いましょう……ッ♡」
今まで以上に濃厚で濃密で乱れたいちゃいちゃ。二人の鼓動は完全に同期し、絶頂の波が指数関数的に押し寄せる。——だが。二人だけなら、この限界の快感にも、キャパオーバーすることなく耐えられる。
「……お前ら。何を盛大に同期るんだ」
そこへ、特訓を終え(、あるいは最中に)、古海縁理が様子を見に来た。
「「「「あガッ……!!♡♡」」」」」
「王子様!? 王子様、見てください! 私たちの愛の防壁、完璧にアップデート完了しましたわ!!」
「エンリ……♡ ねえ、私たちの特訓の成果、貴方のその『素晴らしい指先』で、直接、デバッグしてちょうだい……♡」
二人は乱れた姿で、エンリに向けて熱く濡れた瞳を向け、強気な笑みを浮かべた。二人だけなら耐えられた。なら、今の二人なら、エンリの本気の愛撫にも——。
「……ほう。なら、その特訓の成果(防壁)、僕が直接『負荷テスト(ストレステスト)』をしてやる。……逃げるなよ」
エンリは眼鏡をクイと押し上げ、ハッカーとしての冷徹な笑みを浮かべた。
そして、左右から自分にまとわりつく二人のヒロインの肩を、同時に力強く抱き寄せた。
「ひゃんッ!?」
「あンッ!?」
その瞬間。
エンリの「能動的な物理アクセス(雄の熱)」が、同期した二人の魂に直接響いた。
ガガガガガガッ、ピキィィィィンッ!!
——ものの数秒だった。
二人なら耐えられた限界の快感が、エンリの介入によって指数関数的に増幅され、二人の脳内で起こるエラー(オーバーフロー)が、一瞬にしてキャパオーバーを引き起こした。
「「ひゃああぁぁぁぁぁっ♡♡ あンッ♡♡ 無理、好き、愛してましゅ……ッ♡♡」」
バタッ。
ぷしゅぅぅゥゥ……。
ものの数十秒。
強がっていた有能秘書と、余裕ぶっていた吸血鬼の真祖は、エンリの能動的な愛撫の前にまたしても防壁を完全破壊され、だらしない嬌声を残してソファの上で仲良く気絶してしまった。
「…………え?」
静まり返ったリビング。
朝から完全に『その気』にさせられ、下半身に特大のエラー(熱)を抱え込んだまま、またしても一人取り残されたバグの王子様。
「……くそっ。お前ら、二人で濃厚に同期していたくせに、なんで僕が加わると『百合ルート』を放棄して即落ちするんだ……ッ!! ここで強制終了するとか、どんなクソ仕様だ……ッ!!」
ペントハウスの豪華なソファで、気を失って幸せそうに微笑む二人の絶世の美女。
世界の物理法則を書き換えたバグの王子様も、この二人の『愛の初期設定(即落ちポンコツ)』だけは、どんな高度なハッキングを使っても、一生デバッグできない仕様になっているようだった。




