強制シャットダウン(即落ち)と、進まないメインプロセス
バグ・ゴッドがブラックホールに飲み込まれ、完全な静寂が戻った純白のルート階層。
古海縁理は、左右から抱き着いてくる秤珠里と真祖リリスの温もりを感じながら、虚空に最後の特大コンソールを展開した。
「……さて。邪魔なウイルスも駆除したことだし、このバグだらけのOSをクリーンインストール(再構築)するとしよう」
エンリの指先が、光のキーボードを軽快に、そして優しく叩く。
「『ディレクトリ全消去』——対象:全世界のダンジョン・システム、魔獣データ、および理不尽な管理者権限のバックドア」
「『物理定義・再記述』——基本物理法則の正常化、平和な日常パッチの適用」
カタカタカタ……ッターン!
エンリがエンターキーを叩き込んだ瞬間、純白の空間が暖かな黄金色の光に包まれた。
世界のソースコードが、エンリという新しい「優しき管理者」の手によって、バグのない美しい文字列へと綺麗に書き換えられていく。
「……行くぞ、お前ら。僕たちの『新しい世界』へ」
黄金の光が三人を包み込み、そして——。
* * *
「……んッ」
エンリが目を開けると、そこは新宿の超高級タワーマンション——あの数百兆円で購入したペントハウスの、広大なキングサイズベッドの上だった。
窓の外には、赤黒いノイズの空でも、重力がおかしいビル群でもない、美しく澄み切った青空が広がっている。
ダンジョンは世界から完全に消滅した。
人々を脅かしていた魔獣も、国際ギルドの理不尽な権力も、すべてが過去のログ(記録)の彼方へ消え去ったのだ。
ただし、エンリのハッカーとしての権限、ジュリの規格外の質量、そしてリリスの真祖としての魅力だけは「エンリの特権(お気に入りデータ)」として、この新世界にもバッチリ引き継がれている。
「……ふぅ。これでようやく、静かな日常が……」
エンリが安堵の息を吐きながら眼鏡をかけようとした、その時だった。
「——おはようございます、私の神様(王子様)♡」
「——朝よ、私の愛しいデバッガー♡」
ガバッ!!
左右のシーツが同時にめくれ上がり、生まれたままの姿(テクスチャ未適用)のジュリとリリスが、凄まじい勢いでエンリに覆い被さってきた。
「なっ……!? お、お前ら、朝からなんで全裸……ッ!」
「当然ですわ! 世界のバグ(脅威)が消え去った今、私たちの最大のタスクは『王子様との合法的な子孫繁栄プロセス』に移行したのです! さあ、この平和な新世界に、私たちの愛の結晶(新データ)をアップロードいたしましょう!!」
ジュリがその圧倒的な双丘でエンリの胸板を完全にホールドし、熱く濡れた瞳で迫ってくる。
「ふふっ。ダンジョンが無くなったなら、今日からはこのベッドが私たちの『深層』よ? 誰にも邪魔されないこのセクターで、貴方の体温も、魔力も、全部ドロドロに溶かして混ざり合いましょう……♡」
リリスがスレンダーな脚をエンリの腰に絡ませ、白磁のような指先で彼の首筋をなぞりながら、甘く危険な吐息を耳に吹き込む。
「っ、ぁ、あガ……ッ! ちょ、待て、二人同時はCPUが……ッ!!」
右からは、物理的な愛の重圧。
左からは、魔法的な魂の誘惑。
世界のバグをすべて修正し、平和な新世界を構築した最強の神業使いは、ベッドの上でまたしても、二人のヒロインが仕掛ける『極上のDDoS攻撃』に処理落ち寸前となっていた。
「ダメですわ、王子様! 今日こそは強制終了(気絶)など許しませんわよ!」
「ええ、逃がさないわ。貴方の本能のソースコード、隅々まで私が書き換えてあげるんだから……んっ♡」
平和な新世界の朝。ペントハウスの広大なベッドの上で、生まれたままの姿の秤珠里と真祖リリスは、これまでにないほどの強気な態度で古海縁理にマウントを取っていた。
「……そこまで言うなら。こっちも遠慮なく、フルアクセス(本番)させてもらうぞ」
エンリは腹を括った。
もう邪魔者はいない。世界も平和だ。なら、この重すぎる愛に、男として正面から応えてやるのがデバッガー(男)の義務というものだろう。
エンリは自身に覆い被さるジュリの豊かな双丘を両手でしっかりとホールドし、同時にリリスの白磁のような首筋から背中のラインへと、熱を持った指先を深く、ねっとりと這わせた。さらに、二人の敏感な耳元へ同時に熱い吐息を吹き込む。
「さあ、お前たちのデータ、奥の奥まで暴いてやる」
「ひゃんッ!? ぁ、あ、あぁぁぁぁぁっ♡♡」
「んひぎッ……!! む、無理、エンリの熱、直接……き、きちゃ、あッ……♡♡」
ビクンッ!! ビクビクビクッ!!!
——ものの数秒だった。
自分たちから盛大に煽っておきながら、エンリからの「能動的な物理アクセス(本気の愛撫)」を受けた瞬間。
有能秘書と吸血鬼の真祖は、かつてないほどの特大の嬌声を上げ、全身をガクガクと激しく痙攣させて……そのまま白目を剥いて、同時に果ててしまったのだ。
「あぁ……っ、王子様の、熱ぅ……幸せ、でしゅ……♡」
「エンリぃ……魔力、ぜんぶ、出ちゃっ……♡」
ぷしゅぅぅゥゥ……。
完全に許容量を超えた快感により、二人の頭からポンコツな湯気が立ち上る。そのままエンリの胸板にバタッと倒れ込み、幸せそうな寝顔で完全にシャットダウン(気絶)してしまった。
「…………」
静まり返った寝室。
残されたのは、完全に『子孫繁栄プロセス(本番)』のタスクを立ち上げ、下半身に特大の熱を抱えたまま放置された、バグの王子様だけ。
「……だから言っただろ。お前らの貧弱な防壁で、メインプロセスの負荷に耐えられるわけがないって……ッ!!」
世界を意のままに書き換える無敵の神業使いは、新世界になっても自らの欲求不満(熱暴走)だけはデバッグできないまま、恨めしそうにペントハウスの天井を仰ぐのだった。




