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情報収集(ログ解析)と、多様化する愛のベクトル

「……それで? この渋谷のディレクトリ構造(階層)はどうなっている」


安全な瓦礫の陰に腰を下ろした古海縁理フルミ・エンリは、提供した豪華な食事を掻き込んでいる【ラスト・ワン】のリーダー、レオンに向けて問いかけた。

だが、そのエンリの姿は、どう見ても真面目に情報収集をする体勢ではなかった。


「王子様、長時間の演算で頸椎と視神経に負荷がかかっていますわ。さあ、私の大腿部の圧倒的な弾力を利用した『生体クッション(膝枕)』で姿勢を最適化してくださいませ! さらに指先で頭皮の血流をハック(マッサージ)いたしますわ!」


エンリは現在、秤珠里ハカリ・ジュリの柔らかく形の良い太ももの上に後頭部を預け、完璧な『膝枕』状態にされていた。ジュリの細く滑らかな指先がエンリのこめかみや頭皮を優しく揉み解し、極上のリラックス効果バフを与えている。


「……んッ。おいジュリ、そこは……」


「あら、乳牛さんに頭のケアを任せるなら、私は末端神経のデバッグをしてあげるわ。……ん、ちゅっ……♡」


さらにエンリの右側には真祖リリスが寝そべり、エンリの右手を両手で包み込んでいた。

彼女はエンリの指の間に自身のスレンダーな指を絡ませて『恋人繋ぎ』をすると、そのままエンリの指先を甘い唇に含み、チロチロと這わせた舌で、関節を一つ一つ丁寧に舐め上げているのだ。


「っ……!? リリス、指を舐めるな……ッ! 魔力が、直接神経に……ッ」


「ふふっ。指先に溜まった魔力のノイズを、私が直接クリーニングしてあげているのよ。……ほら、耳もとがお留守になっているわよ? ……ぁむッ」


リリスは色っぽい流し目を向けながら、今度はエンリの耳たぶを甘噛みし、魔力を帯びた吐息を鼓膜に直接吹き込んだ。


「……っ、ぁ、あガ……ッ!(CPU温度が……別のベクトルで限界突破する……ッ!)」


質量で押し潰されるのとは違う。頭皮への絶妙なマッサージと、指先や耳たぶといった『末端の敏感な神経』を執拗に攻められるピンポイントな愛撫のコンボ。

バグの王子様は、かつてないほど高度でテクニカルな「いちゃいちゃの波状攻撃」に、顔を限界まで真っ赤にして身悶えしていた。


「…………お、おい。オレは、どこを見て話せばいいんだ……?」


そのあまりにもイカれた光景(公開イチャラブ)を前に、鉄の心臓を持つはずのレオンは顔を引きつらせ、どうしていいか分からず唐揚げを持ったままフリーズしていた。


「気にするな……ッ! そのまま、インプット(説明)を続けろ……ッ」

エンリは視界をピンク色のノイズに侵食されながらも、ギリギリでハッカーとしての理性を保ち、先を促す。


「お、おう……。分かったよ、救世主サマ。……この渋谷ダンジョンは、大きく分けて二つの勢力に支配されている」


レオンは咳払いをして、真剣な表情を作った(エンリの耳たぶを舐める水音が気になって仕方ないが)。


「一つは、上層から中層を徘徊している【ホワイト・ナイト(システム保守機構)】。天使のような姿をした無感情の殺戮兵器どもだ。オレたちの仲間も、奴らの『バグ排除』って名目で何十人もデリートされた。感情がない分、情け容赦もない完全な機械プログラムだ」


「……なるほど。管理者が放ったアンチウイルスソフト(雑魚)か。……ひゃうッ!?(ジュリ、耳の後ろを撫でるな……ッ!)」


「で、問題はもう一つの勢力だ」


レオンは声を潜め、義手で自身の顔を覆うようにした。


「中層から下層にかけてのエリアは、空間じゃなく『時間』がバグってる。そこを支配しているのが【クロノス・バグ(時間逆行の狂信者)】って呼ばれるイレギュラーどもだ」


「時間逆行……?」

エンリがわずかに眉を動かす。


「あいつらは、特定の時間を永遠にループし続けているイカれた連中だ。倒しても倒しても、時間を巻き戻して復活してくる。……そして、このダンジョンの最深部——外部管理者(真の神)が引きこもっているルート階層に行くためには、あいつらのリーダーが持っている『時間鍵タイム・キー』を奪わなきゃならないんだ」


ホワイト・ナイトの包囲網を抜け、永遠に死に戻りを繰り返す狂信者たちから鍵を奪う。

それが、真の神へと至る唯一の正規ルートだった。


「なるほど、無限ループのエラーを吐いている連中から、管理者権限のパスコードをぶっこ抜く必要があるわけか」


エンリは、ジュリの太ももの上からゆっくりと身を起こした。(リリスの手は絡まったままだが)


「……不可能だ」

サラが、ボロボロのドッグタグを握りしめながら暗い声で言った。

「あいつらは『未来の私たちの攻撃』をすべて知っているの。何度挑んでも、私たちが死ぬ結果バッドエンドが最初から確定している。……物理的な力じゃ、どうにもならないわ」


「そうね。時間を巻き戻すなんて、私のような真祖の魔法でも不可能よ。……でも」

リリスが、エンリの肩にコトリと頭を乗せ、妖しく微笑んだ。


「私の王子様の『神業』なら、時間を書き換えることくらい、造作もないことよね?」


「もちろんですわ! 王子様のマルチスレッド演算にかかれば、タイムパラドックスなどただの『論理エラー』! サクッとデバッグして、私たちとの愛の時間を永遠にループさせる機能に書き換えてくださいますわ!」

ジュリも誇らしげに胸を張り、エンリの背中にピタリと張り付く。


「……お前ら、僕の能力を何だと思っているんだ。……まぁ、時間の座標データさえ特定できれば、ループの変数を固定フリーズしてハッキングすることは可能だがな」


エンリは眼鏡をクイと押し上げ、不敵な笑みを浮かべた。


「行くぞ。まずはその【クロノス・バグ】とやらが引き起こしている、タイムパラドックス(論理破綻)を修正しに行く」


神すらも恐れぬバグの王子様と、愛撫のバリエーションを増やしてさらにエンリを追い詰める正妻同盟。

彼らはレジスタンスの生存者たちを引き連れ、時間が狂い咲く中層エリアへと、絶対的なデバッグの足音を響かせるのだった。

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