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1-8 最後の手段 あなたに尽くすけなげな女大作戦!


私が静かに部屋に戻ると...


今日もセリーヌが待っていてくれた。


私が泣いているのを見ると、何も言わず抱きしめてくれた。


そうしてしばらくたった頃。


「ご報告します。メロメロ作戦失敗しました。また、私は同じ過ちを犯しました。先生が、あれほど、相手のことを見なさいと教えてくれていたのに...無念です。」


私は、正直に先生に告白した。


「何があったの?詳しく話して!」


セリーヌ先生も優しく聞いてくれる。


「先生!やはり敗因は肉でした!野菜じゃなかったんです!私は本当に自分勝手な女です。私は知らず知らずのうちに自分の好きな野菜の方を選んでしまったのです!」


私は悔しさに思わず唇をかんだ。


「アリシアさん。まだ、ゲームは終わっていないわ。最後まで戦うのよ。先生は最後まで応援するから。諦めないで!諦めたらすべて終わりよ。」


セリーヌ先生が優しく私の手を握ってくれた。


「はい。まだ、諦めません。もう少しだけ、頑張ってみます。先生が一緒だから...」


私は先生の手を握り返し、目を見て力強くうなずいた。


「それなら、奥の手を授けよう。ロマンス小説では、男性は二人の女性に声をかけられた時には、最後には自分にとことん尽くしてくれるような優しい女性を選ぶんだよ。だから、尽くして尽くして相手に選ばせるんだ。けなげな君を。名付けてーー『あなたに尽くすけなげな女大作戦』」


セリーヌ先生がとうとうとっておきの作戦を伝授してくださった。


「先生、本当にこれが最後なんですね。今までの数々の作戦になかった『大』の文字がとうとうついてしまいました。死ぬ覚悟で行ってきます。やるからには最後には華々しく散ってきましょう!」


もう私も覚悟を決めた。先生も出してくれた最後の大作戦。これを完遂しなければ。私たちに明るい未来は見えてこない!


それから、任務完遂に向け、私の過酷なトレーニングがスタートした。

どんなことを言われても、いつも答えは「イエッサー!」

いつも笑顔で、後ろをついて歩く。

相手の望むことを前もって予想して行動する。


これがどれだけ難しいことか...


私のトレーニングは、どんどん過酷なものとなっていった。


どうにか思い通りに動けるようになったのは、あれから六か月がたった頃だった。


もう私は、男子寮の談話室を予約しに行ったりしない。


なぜなら、月に一度必ず通っていた私のことを覚えてくれていて、その日は無条件に私が行ってもいい日と決まっていたから...


私が音もなく、静かに部屋でイメージトレーニングをしていると...


「なんか最近、婚約者ちゃん来ていないんじゃない?とうとう振られたか?俺に会わせてくれないから罰が当たったんじゃないか?」


「うるさい!あいつはきっと来る!そういう奴だ!怖いくらいに感じる。今日は来る!」


「え~。以心伝心?全くのろけかよ。あ~ごちそうさま。」


「そんなわけあるか!?いいからお前あっちいけ!」


「はい、はい。」


なんだか懐かしい声が聞こえた。

と思ったらいつものように部屋にそっと入ってきたのに、私を見つけて自分でぎょっとしている。


「本当にいた。こわ~!」


そう言って腕をさすり始めたロラン様を見て、私はさっとロラン様に長袖のシャツを差し出した。

これぞ訓練の成果!

寒いと思った瞬間に服を差し出す。けなげな女である。


「何だよ。服なんていらないよ。それより宿題で忙しいんだよ。用件があるなら早くしてくれよ。」


ロラン様は、面倒そうに口を尖らせた。


「宿題なら、やっておきました。」


私は即座に反応する。けなげな女。


「はぁ~?何をやっておいたんだよ?」


「ですから、ロラン様の宿題を前もってここに書いて準備しておきました!名前ももちろんロラン様にしてあります。ご安心ください。」


私は、ひざまずいて私が作った宿題を献上した。けなげな女。


「うわ~。いつやったんだよ。こんなの。」


「昨晩、寝ないで頑張りました。ロラン様が困らないように。」


私が笑顔で答える。けなげな女。


「まあそこまで言うならもらってやってもいいけど。あと、用事がないならもう来ないでくれ。そうだ。二度と来なくていい。なんなら、婚約も白紙にしようぜ。」


ロラン様は、だんだん気持ちが大きくなってきたのかそんなことを言いだした。


「分かりました。私はもう顔を見せません。婚約についてもロラン様のお好きなようになさってくださって結構です。」


笑顔で答えるけなげな私。


私は、つい...


...けなげな女の作戦通りに答えてしまった。


ロラン様は、ちょっとびっくりした顔をしたけれど、その後嬉しそうに部屋をこそっと出ていった。


やはり、出ていくときもこそっと出ていく。

ぶれないロラン様だった。



私は、ぼーっとしたまま部屋を出る。


なんか、頭がぐるぐると回ってきた。


二年生の宿題は思った以上に難しくて、一睡もしていないからか?


私は、談話室の廊下に出たところから記憶がない。



バタッ!


かなり大きな音がした。


一人の女性が談話室を出たところに倒れている。


しかも、頭を打ってしまったのか意識もない。


すぐさま男子寮が騒然となってしまった。


そして、倒れたアリシアを女子寮に届けてくれたのはーー


野菜クッキーを唯一もらってくれた男性だった。




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