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1-7 手作りお菓子メロメロ作戦


「ただいま~」


お化粧道具を片付けて部屋で待っていてくれたセリーヌに私は嬉しくて抱きついた。


「お帰り!その反応は、うまくいったのね。」


早速セリーヌ先生と反省会が開かれる。


「やりました!先生!次のデートの約束を取り付けました!しかも、素顔の方が好きだから化粧をしないで来てほしいなんて...」


私は恥ずかしくて、頬に両手を添えて話す。


「百点!大変よくできました。私は、君のような素晴らしい生徒を持って鼻が高いよ。」


セリーヌ先生に褒められてうれしくなる。


「では、次の段階に進もう!ステップアップだ。」


「はい!どこまでもついていきます!」


そして、次のデートの時の作戦を考え始めた。


「ロラン様は、次に会うときに化粧をしなければ、少し話してくれると言っていました。これでやっと、恋人同士の語らいが始まるんですね。何を話したらいいでしょうか?」


私は、領民以外の異性とお話したことはない。どんな会話をしたらいいのかも全くわからない。


「アリシアはまだロラン様のことを知らないと言っていたでしょう?だったらロラン様のことを知ることとアリシアのことを知ってもらうことが大事でしょう?」


「セリーヌ先生、天才!さすがです。そこには気づきませんでした。そうでした。私のことを知ってもらうために私の得意なことを示すんでした。う~ん。何がいいかな?」


私が、得意なことって何だろう?


「アリシアって食堂で毎日お手伝いをしているんでしょう?だったら、手作りお菓子なんてどう?ロマンス小説にもあったわ。男を虜にするにはまずは、胃袋をつかめって!」


セリーヌがぐっと握りこぶしをつくる。


「先生!勉強になります!お菓子作りなら得意よ。そうだわ。私らしく野菜を入れたクッキーなんてどうかしら?」


私もどんどんアイデアが止まらない。


「いいわね!これでロラン様の胃袋をつかんじゃって!ついでにあなたのハートも盗んじゃうぞ。な~んてね。」


セリーヌにも後押しされて、私も勢いづく。


「何と女子力が高い!では、今回は名付けて『手作りお菓子メロメロ作戦』で行かせていただきます!」


それから、私は食堂の時間の空いているときにお願いして野菜の入ったクッキーを作り始めた。

野菜をどう生かしたら、見た目もよくおいしくできるか試行錯誤を繰り返した。

私は、その研究に心血を注いでいそしんだ。

長い闘いの日々だった。

数々の試行錯誤の末に生まれたクッキーは、食堂の夜食のお供として出されていたことに...

ーー気づいた人はいなかった。


そして、ようやく満足できるものが作れるようになった。


恒例の男子寮の予約がとれたのが、前回の作戦から一か月経っていた。



私が談話室でドキドキしながら待っていると...


「ほんとにお前たち仲いいな~毎月恒例のデートを見せびらかしてくれちゃって。今日こそは、会わせてくれよな?」


「何言っているのかまるで分からない!お前本当についてくるなって!いいから、戻れって!ついてくるならもうお前に女の子の友達紹介してやらないぞ!」


「はい!分かりました!」


なんか聞こえてきたけど、すぐに静かになった。

そして、すぐに扉が小さく開き、気づいたらロラン様が目の前に立っていた。

会うたびに扉の開き具合が小さくなっているのに、入るスピードが速くなっている。

すごい!尊敬します!


「今日は何だよ。」


ロラン様が、立ったまま目を細めて私を見ている。


「会いに来るのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。研究に研究を重ねていた結果、とうとう今日という日を迎えることができました。どうぞ。これが私が作った野菜クッキーです。最高傑作をもってきました。緑のものがホウレンソウで、赤いのがニンジン。黄色いものがかぼちゃです。」


私は、それはもう誇らしげに出来上がったクッキーを両手でロラン様に献上した。


「うへ~。僕野菜苦手。それになんか色が不気味!いらない!用事がそれだけなら、もう終わりな。もう来なくていいぞ。」


なんと、ロラン様は私の最高傑作を要らないとおっしゃった。

やはり、肉だったか?

また、私は同じ失敗を...


そんなことを考えているうちにロラン様は部屋を出て行って私一人になっていた。


ロラン様にはもう来なくていいって言われちゃったな。

今度は、ロラン様から来てくれるってことかな?


でも、最高傑作のクッキーを食べてもらえなかったのはやっぱり悲しいな。

ちょっと涙も出てきた。


私は、静かに部屋を出て、下を向きながら廊下を歩いた。


「君は?」


そんな時、一人の男性から声がかかった。

そっと顔を上げると、前回扉をぶつけてしまった人だった。


「大丈夫かい?泣いているじゃないか?どこか痛いのか?」


その男性は、心配して私の顔を覗き込む。


「あの。ご親切にありがとうございます。私は大丈夫です。ちょっと婚約者の方とお話していただけですから...あ!先日は扉をぶつけてしまい申し訳ありませんでした。」


私は、真摯に謝った。


「えっ。あ~あの時の子は君だったのか?今日とあまりに違うから分からなかったよ。」


「お詫びと言っては失礼ですが、私が作ったクッキーです。よろしかったらどうぞ。」


私は、悲しみのあまり、そう言ってクッキーを渡してそそくさと男子寮を後にした。



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