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1-5 とうとう学園に入学します 作戦開始!



私が学園に入学する日が近づいた。

今日はとうとう学園に向かう日。


「体を大切にするんですよ。栄養のあるものをしっかり食べて、夜更かししないで早く寝るのよ!あ~心配だわ~」


お母様は最近毎日そうこぼしている。


「大丈夫よ。好き嫌いはないし、私がいつでもどこでも眠れるのは、お母様もご存じでしょう?」


私は自慢ではないが、今まで大きな病気もしたことがない。歩く健康体なのである。


「過信するのはよくないぞ。野菜だって昨日まで元気だったものが急に病気になって全滅してしまうこともある。要は、毎日のお世話、観察が大事だ。しっかり頑張るんだぞ。」


お父様は我が領地を取り仕切る栽培の先生である。しっかり話を聞かなければ。


「分かりました。肝に銘じます!」


「姉さま、休みには必ず帰ってきてくださいね。姉さまの分まで頑張って待ってますから。」


エドワードも本当に頼もしくなったわね。


「エドワードもお父様とお母様をよろしくね。」


私は、一人一人としばしのお別れの挨拶をして、馬車に乗りこんだ。


これからの生活への期待と不安を胸にーー



~~~ ◇ ~~~



学園の寮までは、それはそれは何日もかかるほど遠かった。それでも、初めての学園生活。楽しみで仕方がなかった。

グランベル伯爵領に少しでもためになることをたくさん吸収して帰ろう。

そう誓った。


学園の寮の部屋は貴族の階級によって決まっている。

公爵家、侯爵家は一人部屋だが、それ以外は二人部屋となる。


果たしてーー


「今日からお世話になるアリシアです。よろしくお願いします。」


部屋に入って、まずは同じ部屋の子にしっかり挨拶をした。


「私は、セリーヌです。よろしく...って、あなたの制服のその刺繍。何!?」


三つ編みに眼鏡をかけたセリーヌは私の制服を見て、近づいてきた。


「いいでしょう。これね。私の領地の特産物の中でも自慢のジャガイモ、トマト、ピーマンよ。」


私は、得意になって制服の胸の辺りを指し示した。


「すごいわ。こんなにみずみずしい野菜の様子を刺繍にできるなんて。あなた、刺繍の才能があるわ。私にも教えてね。」


セリーヌは、私の手を取ってお願いしてきた。


入寮してすぐに友達ができた。

これからの学園生活がとても楽しくなりそうだ。



~~~ ◇ ~~~



入学してから数日が経った。

セリーヌも同じクラスとなり、とても楽しく学べている。

寮生活も規則正しく生活できている。

朝の仕事がないのがちょっと物足りないけど、その分寮の食堂で食事作りのお手伝いをさせていただいている。

料理も学べて、ちょっとしたお小遣いはいただけるし、一石二鳥だ。

お手伝いをしているからか、食事も少し多めにいただけるのが更にお得だ。


ただ、ちょっと不満なのが...


野菜に元気がない。張りがない。新鮮さが足りない。

領地の野菜だったら、もっと味がしっかりしているのにな~と懐かしくなってしまう。


いや、まだ始まったばかりだ。

頑張らなければ...



それにしても、ロラン様に会えない。

私は、セリーヌに相談してみた。


「私、この学園に婚約者がいるんだけど、まだ仲良くなれてないの。だから、仲良くなるために作戦を立ててきたの。私のこのリメイク技術を示して、気に入ってもらえたらと思っているの。さらに、この制服と同じ刺繍の入ったハンカチをお渡ししようと思っているんだけど、なかなか会えなくて...どうしたら会えると思う?」


私は、最近毎日すぐお渡しできるようにと準備していた刺繍の入ったハンカチを見せながら相談した。


「その方は、同じ年?それとも上級生?」


セリーヌも一生懸命考えてくれている。


「一学年上なの。授業では会えないし、学園でも見かけないし...」


私も、移動はいつも目を皿のようにして探しているけど、なかなか見つからない。


「それなら、男子寮に申請をすると談話室でお話しすることはできるはずよ。それにしても、素敵な刺繍ね。これなら、すぐに仲良くなれるんじゃないかしら...頑張ってね。」


セリーヌにも応援してもらい、俄然勇気が湧いてきた。


早速男子寮に申請に行き、明日、談話室で話ができることになった。



次の日。指示された時間に男子寮の談話室で待っていると、廊下から声が聞こえてきた。


「お前、婚約者なんていたのか?一目会わせてくれよ。」


知らない誰かの声がする。


「絶対来るなよ!来たらもうお前とは口きかないからな。部屋に戻っていろよ!」


何やら相当怒っているのが、ロラン様のようだ。


相変わらず、恥ずかしがり屋なのかな?さあ、ここから私の作戦を実行しよう。


扉がこっそりと開けられた。


ロラン様は、すっと静かに部屋に入ったと思ったら、私を見て眉間にしわを寄せる。


「なんで来た。僕はお前を婚約者とは認めないと言ったよな。それなのにこんなに堂々と。もう二度とこんなことはするな。じゃ。」


そういって、体の向きを変え、扉を開けようとする。


「待ってください。私たちは、まだお互いのことをよく知らないじゃないですか。私、ロラン様のためにハンカチに刺繍をして持ってきたんです。忙しいなら、このハンカチだけでもどうぞ。そして、またお話しする機会をください。お互いを知るために。」


私は、なるべく早口で忙しそうなロラン様に訴えた。そして、ハンカチを差し出した。


「何だよそれ。うわ~。野菜か。恥ずかしい!いらない。いいから帰れ!」


ロラン様は、それだけ言うとさっさと部屋を出て行ってしまった。


あ~作戦失敗!刺繍の柄が趣味じゃなかったのかな?残念。ちょっと悲しいけど、部屋に戻って次の作戦を考えなくては...


そう思って受付の方に断って帰ろうとしたら入り口から雨に降られたのか、びしょ濡れで入ってきた男性がいた。


「急に降ってきて、びしょぬれだ!!」


私は、その男性にさっき受け取ってもらえなかったハンカチを差し出した。


「どうぞお使いください。では。」


そういって、私は走って女子寮に戻った。領地でも急な雨の時は、いつも走って戻っていたからこれくらい慣れているものね。



驚いた顔でハンカチをもらった男性が、自分を見つめているとも気付かずに...




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