第九話 現代知識無双のはずが、全部説教で返り討ち
ドレスの節約に失敗した妙子は、今度こそ現代知識で役に立とうと考えます。
目をつけたのは、毎晩のように並ぶ豪華すぎる食事。
けれど、その食卓にも彼女の知らない仕組みがありました。
食堂では、すでに王族が集まって、和やかに歓談していた。
わたしもいつも通り、いつもの席に着く。義叔母様から今日の公務についてのお話――兼、ダメ出し――を受けていると、いつも通り、食べきれないほど豪華な食事が、次から次へと食卓に並べられていく。皿、皿、皿。テーブルが料理で埋まっていく。
その光景を見た瞬間、わたしの頭に、ひらめきが走った。
そうだ。今度こそ、完璧な現代知識チートを決めてやる。
「ねぇ義叔母様。王族の食卓は、いつも食べきれないほど料理が並びますよね。しかも、どれも栄養価の高いこってりしたものばかり。これでは太ってしまいますし、何より、余った料理がもったいなさすぎます。だから、ちょうど食べきれるくらいの量に減らして、もっとさっぱりしたヘルシーな料理にしたほうが、いいと思うんです」
健康にもいい。節約にもなる。フードロスも減る。完璧な提案。現代のSDGsの精神。今度こそどうだ。
すると、義叔母様は、優しく諭すように口を開いた。
「そうね。毎日こんなにこってりした料理ばかりだと、胃にもたれてしまうわよね。でもね、マリー。この余った食事はね、わたくしたちが下げたあと、家臣たちの夕食になるのよ。だから厨房の者たちも、それを見越したうえで、ちゃんと量を整えて作っているの。あなたはこれから王妃になるのよ。自分のことだけではなく、もっと周りのことにも目を配らなければいけないわ」
「…………」
諭されてしまった。
しかも、ぐうの音も出ないほど正論で。
余った料理は、ちゃんと下々まで回る、計算され尽くしたフードシステムだった。むしろわたしの提案、家臣たちの夕食を取り上げる悪手だった。SDGsで殴りにいって、逆に持続可能性を破壊しかけた。
おかしい。
何かがおかしい。
異世界転生なら、現代知識でチート無双して、周りを「さすが王太子妃様!」とひれ伏させるはずなのに。わたしは何ひとつ成功していない。それどころか、提案するたびに完膚なきまでに論破され、毎回毎回、丁寧に説教されて返り討ちにあっている。
これじゃあ、現代知識無双どころか――中世逆チートじゃない。
向こうのほうが、よっぽど合理的で、よっぽど世の中の仕組みをわかっている。わたしの「現代知識」とやらは、この世界の前提を何ひとつ理解していない、ただの上滑りな思いつきにすぎなかったのだ。二百五十年分のアドバンテージ、まったくの無力。
くそう。
転生特典、本当にどこ行った。
女神様、出てくるなら今ですよ。
お読みいただきありがとうございました。
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