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悪役令嬢に転生したいと願ったら悪役妃に転生してしまった件 ~マリー・アントワネット転生記~  作者: ヒロ1972
第二章 現代知識無双のはずが、全部説教で返り討ちにあう件
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第八話 ドレス着回し、まさかの国防問題

財政の危うさを知り、ついに現代知識無双を決意した妙子。


まずは身近なところから節約しようと考えますが、王太子妃のドレスはただの服ではありませんでした。


華やかな宮廷衣装の裏にある、意外すぎる仕組みを思い知ることになります。


さて。


財務長官はずいぶん言葉を濁していたけれど、わたしの直感が叫んでいる。あれは全体的にやばい。たぶん、きっと、そうだと思う。


というか、それ以前に、わたしは大事なことに気がついてしまったのだ。


そう。ここは異世界。そして、わたしには現代の知識がある。


これまでは、この世界があまりにも非常識すぎて――おまるだの、入浴禁止だの、着替え痴女プレイだの――ちょっとついていけずにいた。けど、よく考えてみれば、わたしには現代という二百五十年分のアドバンテージがあるのだ。この圧倒的な知識を駆使すれば、わたしの無双が完成するはず。


そうと決まれば、話は早い。


これが夢なのか異世界なのか、ずっとモヤモヤしていた気持ちが、晴れ渡った空のようにスッと澄んでいくのがわかった。やる気がみなぎってくる。こんな前向きな気分は、いつ以来だろう。


さて。では、手始めに。


「ねぇ侍女長。このドレス、毎日新しい新品よね? こんなに高価なドレスを一回しか着ないなんて、もったいないと思うの。だから、洗って何度か着回せないかしら?」


そう聞いたところ、侍女長は、それはもうあからさまに、アホを見るような目でこちらを見てきた。


「王太子妃様。財務長官に何を吹き込まれたのか存じませんが、いいですか。王太子妃が同じ服を着回せば、それは『王家は王太子妃に新しいドレスも与えられぬほど困窮している』と、内外に向けて大々的にアピールするようなものでございます。そうなれば、王家を快く思わぬ国内の諸侯や、我が国の領土を狙う近隣諸国が、王家を侮って攻め込んでまいります。さらには国民からも軽んじられ、税をちょろまかそうとする不届き者まで現れかねません。よろしいですか。王太子妃様のドレスは、国防であり、治安であり、内政の象徴なのです。どうか、余計なことはなさらないでくださいませ」


「服で!?」


「はい。服でございます」


「なんで服一枚で、戦争になるのよ……」


「…………そうっすか……」


言い返せない。


いや、本当にそういうものなの? 服が国防? でも、考えてみれば現代だって、要人の身なりがどうとかこうとか、ニュースでやってた気もする。国の威信がどうとか。うっ、完全には否定できない。


どうしよう。でも、このまま引き下がるのも癪に障る。


「じゃ、じゃあ。この着終わったドレスを売って、少しでも国費の足しにするっていうのはどう?」


すると。


部屋の空気が、一瞬にして凍りついた。


そして、侍女たちが一斉に、こちらをギロッと睨んでくる。


こ、こわい。なんなの。何だっていうの。


侍女長が、またしてもバカを見る目で、ため息まじりに語り出した。


「はぁ。いいですか。この着終わったドレスは、わたくしども侍女に下賜されるのです。そして、わたくしどもはそのドレスを売ったりして、生計を支えているのです。王太子妃様は、これほど一生懸命お仕えしている侍女たちの、給料を取り上げるおつもりですか?」


え。


まじで?


これってそういうシステムだったの? お古のドレスが現物支給のお給料? 物々交換で給与払ってたの? 知らんかった。労務管理の根幹に手を突っ込んでたわ、わたし。


「え、ええっと。それなら、このブローチとかは、どうかなぁ。あ、いや、その、あの……」


「そのブローチは、昨年、国王陛下から賜ったお誕生日の贈り物ですが。本当にお売りになってよろしいので? それを耳にされたら、国王陛下はどうお思いになるでしょうねぇ」


「う……ごめんなさい」


完敗である。


現代知識無双、開始三手で詰み。チートどころか、自分の首をじわじわ絞めにいっている。


「さぁ、バカなことを言ってないで、夕食のお時間です。王族の方々がお待ちですよ」


侍女長に促されるまま、わたしはとぼとぼと食堂へ向かうのだった。

お読みいただきありがとうございました。


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