第八十一話 寄付マウント、合戦
ドブレの提灯記事が世に出ると、商人たちから寄付の申し出が次々と舞い込み始めました。
しかも、新聞に名前と金額が載るたび、次の商人はそれ以上の寄付を持ってきます。
こうして慈善病院を舞台に、商人たちの寄付マウント合戦が始まりました。
それにしても。
メディアの破壊力というのは。わたしの想像を、はるかに、超えていた。
その記事が、世に出るや、否や。
連日のように。「ぜひ、うちも、寄付させてほしい」という、謁見の依頼が。殺到し始めたのである。
しかも。
金額が、なぜか。どんどん、増えていく。
最初の商人は、小ぶりな革袋だった。けれど、次の商人は、もう少し大きな袋を。その次は、もっと大きな袋を。
そして最近では。貴族や教会にも、負けないくらいの。金貨が、ぎっしり詰まった、大袋を。どん、と、持ってくる。
そして、そのたびに。寄付した商会の名前が、新聞の一面に、載る。
「あの商会は、これだけ寄付した」
「いや、うちは、それ以上だ」
どうやら、商人たちの間で。寄付の額を競う、マウント合戦が。始まっているらしい。
まさに――パワーインフレ、というやつである。
「……ぷっ」
わたしは、笑いが、止まらなかった。
そういう、マウント合戦なら。いくらでも、やってほしい。やればやるほど、うちの病院に、お金が、入ってくるのだから。毎日が、笑いが止まらない、収穫祭である。
それにしても。
まさか、あの。クソリプ髭の、おっさんが。ここまで、役に立つとは、思わなかった。
思えば、わたしは。前世で、SNSのクソリプ野郎を、ブロックせずに、我慢し続けてきた。「クソリプも、大事なフォロワーの、一人」だと。歯を食いしばって、耐えてきた。
その、涙ぐましい忍耐力が。まさか、こんなところで、花開くとは。
人生、何が、役に立つか、わからないものである。
* * *
そして。
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