第八十話 クソリプ髭の、本領発揮
寄付された金貨を一枚ずつ数えていたドブレ。
翌朝、その商人の名前と寄付額は、称賛の言葉とともに新聞の一面を飾っていました。
これまで妙子を苦しめてきたクソリプ髭の文章力が、今度は病院のために本領を発揮します。
翌日。
いつものように、朝の新聞を、開いて。
わたしは、危うく、紅茶を、噴き出すところだった。
新聞の、一面。
でかでかと。あの商人の、商会の名前と。寄付した、金額が。丁寧に、丁寧に、記載されている。
しかも。
「我が国の未来を担う、マリー・アントワネット記念病院の崇高な理念に、いち早く賛同。まさに、商人の鑑」
そんなこと、言ったっけ?
というくらい。これでもか、と、よいしょされた、記事が。並んでいた。
いわゆる――提灯記事、というやつである。
「……これ」
わたしは、新聞を、まじまじと、見つめた。
記事の、文体。情報の、並べ方。読者の、心をくすぐる、絶妙な、煽り方。
見覚えが、ありすぎる。
これは。あの、わたしを、さんざんゴシップで叩いてきた。あの、クソリプ髭の――ドブレの、筆だ。
そういえば、昨日。あいつ、やたらと、金貨を数えて。何やら、メモを、取っていた。
まさか。
あれは。
「ちょっと、ヴァロワ。これ、どういうこと?」
わたしが、新聞を、突きつけると。ヴァロワは、しれっと、答えた。
「ドブレに、書かせました」
「やっぱり!」
「彼は、元・大手新聞社の、記者です。腕は、確かですよ。何より――」
ヴァロワは、眼鏡を、押し上げた。
「人の心を、どう動かせば、どう転ぶか。それを、熟知している」
「……」
「特ダネを嗅ぎつける、嗅覚。読者を、煽る、文章力。そして――どこの新聞社にも、属していない、フリーという、立場。これほど、使い勝手のいい、駒は、ありません」
こ、こわい。
しれっと、人を、駒呼ばわりする男である。
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