表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/92

第七十三話 希望の、象徴(言い方)

テレー前長官の計画では、妙子はただの病院理事長ではありませんでした。


王族でありながら民の現場に立つ彼女は、王室と民をつなぐ新しい象徴として利用されるはずだったのです。


ただし、ヴァロワの説明はあまりにも直球でした。


挿絵(By みてみん)

「……わたしを?」


「はい」


「なんで?」


「王族でありながら、民のいる現場に、立っているからです。普通の王族は、このような、泥臭い場所へは、来ません。周囲も、来させません。ですが――なぜか、王妃様は、ここに、いる」


「なぜかっていうか。王宮に、居場所が、なかっただけ、なんだけど……」


「理由は、どうあれ。結果が、重要です」


ひどい。


事実だけど、ひどい。


「この病院を、王都だけの、慈善施設で終わらせず。各地へ、広げる。王妃様の名を冠した、病院と、出張所を作り。王室と、民を、直接つなぐ」


「え、ちょっと待って。計画書にも、書いてあったけど。本当に、病院を、増やすの?」


「計画書上では、そうなっています」


「誰が、やるのよ」


「我々、です」


「なんで、当然みたいに、言うのよ!」


ヴァロワは、無視した。


無視して、淡々と、続ける。


「……あと。黒字化、って言ってたわよね。慈善病院、なのに。お金をとって、大丈夫なの?」


「だからこそ、この新病棟を、建てたのです。ただの慈善病院に、こんなハイテクビルは、不要です」


「……なんか、今、ものすごく、ひどいこと言ってない?」


さらに、ヴァロワは。眼鏡を、押し上げながら、言った。


「いつまでも、国の資金に、頼っていては。いつ、また、予算をカットされるか、わかりません。せっかく、チャンスをいただいた以上。政府の援助なしで、機能する組織に、再編する必要が、あります」


その言葉に。


わたしは、少しだけ、黙った。


「王妃様の、お名前を、利用して。事業の利益と、寄付だけで回る、組織にする。そうして、全国に、強固な、医療インフラを、構築し――ついでに、王家の名声も、上げてしまおう、という。一石、三鳥を、狙ったのです」


「でも」


わたしは、つい、口を、挟んでしまった。


「あいつは、わたしを。増税の、弾除けに、したじゃない。そのせいで。せっかく、軌道に乗りかけてた、募金活動が。破綻、しちゃったじゃない」


「……しました」


そこは、否定しないのね。


「ですが。捨て駒に、するつもりなら。ここまでの計画は、不要です」


ヴァロワは。計画書の表紙に、そっと、手を、置いた。


「テレー前長官は。確かに、王妃様を、利用した。ですが――同時に。王妃様に、賭けても、いたのだと、思います」


「……なんなのよ、あいつ」


本当に。なんなのよ、あいつ。


「つまり。王妃様は。政治的に、極めて、利用価値が、高い」


「言い方!」


「事実です」


「もっとこう、希望の象徴とか! 言いなさいよ!」


「それも、同じ意味です」


「同じじゃ、ないわよ!」


「でも」


わたしは、ふと、引っかかったことを、聞いた。


「だったら、なんで。自分で、企画して。自分で、つぶすような、真似したの? このトイレも、病院も。全部、あいつが、用意してたんでしょ?」


ヴァロワは。少しの間、黙った。


そして、静かに、言った。

お読みいただきありがとうございました。


本作は毎日19時40分ごろ更新予定です。

続きが気になる方は、ブックマークやページ下部の星評価で応援していただけると、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ