第五十七話 新聞の二段抜き、という悪魔の手口
テレーとの世間話から数日後、シャルティエが血相を変えて理事長室に飛び込んできます。
新聞の一面には、慈善病院の改名と新病棟建設の記事。
一見するとありがたい知らせのようでしたが、その次のページには、妙子を巻き込むさらに大きな火種が載っていました。
そのやり取りから、数日後のこと。
シャルティエが、血相を変えて、理事長室に飛び込んできた。
「たたたた、大変でございます、王太子妃様ーっ!!」
「そんなに慌てて、どうしたの、舎……シャルティエ」
「今朝の新聞、読まれましたか!?」
「いいえ、まだよ。この書類を書き終わったら、休憩がてら読もうと思ってたけど?」
「そ、そうですか。まだですか。じゃあ――これを、見てください!」
シャルティエが、震える手で、差し出してきた新聞。
その、一面。
でかでかと、こう書かれていた。
【王立慈善病院、名称を「マリーアントワネット記念病院」へと変更。
これに伴い、新病棟を建設、スタッフを大幅増員】
「……え?」
え?
え、聞いてない。何これ。お金は? っていうか、わたしの名前を冠した病院に、改名? 新病棟? スタッフ増員?
「聞いてないわよ、こんなの! どういうことなの!?」
「王太子妃様も、ご存じなかったので?」
「えぇ、初耳よ! ……あ、でも。そういえば、この間テレーが来て、『任せろ』とか『贈り物を用意する』とか言ってたっけ。気持ち悪かったから、適当に返事して帰したけど……これのこと?」
なるほど。「贈り物」って、これか。
豪華な病棟と、わたしの名前を冠した立派な病院。
……いやでも、ありがたい、のか? これ。お金の出どころは気になるけど、病床不足は解消するわけだし。むしろ、いいことなんじゃ――。
「そ、そうですか」シャルティエの顔は、まだ真っ青だった。「ですが、王太子妃様。驚くのは、まだ早いです。――次のページを、見てください」
言われるまま、わたしは、ページをめくった。
二面。
そこには、こう書かれていた。
【国家財政の逼迫に伴い、教会および領主に適用されてきた
課税免除特権を、大幅に見直し】
「……え。なに、これ」
教会と、貴族の。税金の、免除を。見直す。つまり、これからは、坊主や貴族からも、税を取る、ということ?
「えらく、思い切ったことをしたわね。テレーも、やるじゃない」
他人事のように、わたしは言った。
正直、ピンと来なかった。
すると、シャルティエが。
「王太子妃様……」
がっくりと、肩を落とした。
「何を、そんな、のんきなことをおっしゃってるんですか」
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