第五十二話 病院が、パンクしかけている件
仕事に生きる女になると宣言した妙子。
しかし慈善病院では、改修と評判の広がりによって患者が急増し、病床も人手も限界に近づいていました。
恋愛から逃げ込んだ先の仕事もまた、そう簡単に彼女を楽にしてはくれないようです。
「仕事に生きる」と宣言したわたしだが。
宣言したところで、宮殿にいるらしいオーストリアのスパイから、母上に「最近、王太子と王太子妃が急接近。王太子妃が王太子の工房に出入りすることも増えた」との報告が上がったらしく。
母上から、ほくほくと喜ぶメールが届いた。
おかげで、当分のあいだ、八つ裂きにされるのは保留になったようである。
……いや、待って。工房に出入りしてたのは事実だけど、今は顔を合わせるたびにお互い逃げ回ってる関係なんですけど。スパイ、そこまでは報告しなかったのね。報告の精度、ガバガバである。まぁ、命拾いしたから、よしとしよう。
ともあれ。
今日は、昼から恒例の、最高幹部会議である。
……などと言うと、なんだかすごそうだが。実態は、いつものメンバー――わたし、ヴァロワ、ロジエ、シャルティエの、四人によるチーム会議だ。
経理担当のシャルティエが、深刻な顔で切り出した。
「患者の急増で、病床がまったく足りておりません。このままでは、施設に入れない者が、大勢出てきそうです。本格的に、受け入れ制限を検討する必要があるかと」
人事担当のロジエが、それを継ぐ。
「スタッフ不足も、急務ですね。先日、出産で看護師が一人辞めてしまいまして。現場が、破綻しかけています。残った者たちの疲弊も、見るに堪えません」
うーん。
繁盛するのはいいことだけど、繁盛しすぎて回らない、というのも、それはそれで困りものである。嬉しい悲鳴、ってやつだ。いや、悲鳴の部分のほうが、だいぶ大きいけど。
「そうなのね。やっぱり、きついわね。ヴァロワ、財務局のほうはどう? 予算の増額とか、見込める可能性は、ないの?」
すると、財務局との折衝係であるヴァロワが、眼鏡を押し上げながら、首を振った。
「いえ。それどころか、財務局は、さらに危機感を強めております。現状維持ができれば、奇跡、という状況です。我々も、覚悟しなければならないときが、来るやもしれません」
うへぇ。
増額どころか、現状維持が奇跡。前途多難である。
と、そこへ。
「やはり、王族のおままごとじゃ、何も変わりませんよねぇ。はぁ、嘆かわしい」
なぜか、しれっと会議に同席していたドブレが、横から口を挟んできた。
……なんで、こいつが、しれっとこの会議に出てんのよ。いつの間に紛れ込んだの。ただ文句を言いに来るだけなら、出ていけ。
どうしたものか、と思案していると。
ヴァロワが、すっと、提案した。
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