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悪役令嬢に転生したいと願ったら悪役妃に転生してしまった件 ~マリー・アントワネット転生記~  作者: ヒロ1972
第二章 現代知識無双のはずが、全部説教で返り討ちにあう件
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第五話 ニコニコ顔面の維持という名の、拷問

第五話です。


今日から公務復帰。


優雅な宮廷生活が始まる……はずだった妙子ですが、待っていたのは華やかさとは少し違う、現代人にはかなりきつい王宮の常識でした。


今回は、ドレスと伝統とニコニコ顔面維持のお話です。

挿絵(By みてみん)

さて、今日から公務復帰である。


朝、目を覚ますと、ちょうど侍女たちがぞろぞろと、それも何十人も部屋に入ってきて、ドレスの用意を始めるところだった。朝っぱらから大行列。通勤ラッシュかと思った。


「王太子妃様、お目覚めですか? お早いですね」


「あ、おはよう」


「早速ですが、今日から公務がございます。ドレスにお着替え願えますか」


「わかりました」


そう言ってベッドから起き上がると、部屋の真ん中へと通された。


そして――いきなり、服を引っぺがされた。


大勢が見ている中で、わたしは真っ裸にされてしまった。


「なにすんの!?」

挿絵(By みてみん)

あまりのことに驚いて、思わず侍女から脱がされた服を奪い取ってしまった。


奪い取られた侍女は、恐怖で今にも泣きそうな顔をしている。横で見ていた侍女長は、怒りで般若のような形相になり、ワナワナと震えていた。


なんか、やばい。


「王太子妃様、何をやられているのですか!」


「何って、いきなりみんなの前で裸にされて、おまけにこんなに寒いのに……」


「何度申し上げればおわかりいただけるのですか? これは王宮で古くから続く、格式ある伝統でございます。王太子妃様は真ん中にお立ちになり、堂々と下々の者の働きを見下ろすのが習わしなのです」


……そんな痴女プレイみたいな伝統が、あってたまるか。


広くて寒い部屋の真ん中で、数十人の注目を浴びながら、裸でガタガタ震えるわたし。


なんなのこれ。いじめ? いじめなの? 侍女をいじめるのは悪役令嬢の役目でしょ。なんで悪役妃のわたしが、侍女に公開処刑されてんのよ。役割が完全に逆転してる。


おまけに目の前にドレスがあるのに、侍女たちはなぜかバケツリレー方式でドレスを運んでいる。手から手へ、リレーで。そして一番手前の侍女は、受け取ったドレスを「まぁ、素敵」とうっとり眺めている。眺めてないで、とっとと渡しなさいよ。


「あの。ドレス、目の前にあるんだし、直接渡してくれれば自分で着ますけど?」


「何をおっしゃっているのですか?」侍女長が眉をひそめる。「彼女たちは幼き頃より修行を重ね、その一族は代々王家に忠誠を示してまいりました。その忠義によって、今この場で王太子妃様にお召し物を着せ申し上げるという、何よりの名誉に与っているのです。王太子妃様のわがままで、この権利を奪うことは許されません」


ううう。


理不尽な理由で、また怒られた。着替えを手伝うのが名誉。手伝わせないのは権利の剥奪。理屈が、わたしの常識と根本から違う。


寒いよう。恥ずかしいよう。


こうして、意味不明な痴女プレイ(公式名称・由緒正しき伝統儀式)が終わり、軽い朝食を済ませると、いよいよ公務である。


公務は、だいたい三種類。


一つ、ダンスの練習。


二つ、オーストリア訛りを矯正するための語学のお勉強。


三つ、義叔母様の横に座って、お茶会や面会のあいだ、黙ってニコニコ頷いていること。


字面だけ見ると、とっても簡単なお仕事である。


ダンスはまあ、体を動かすのは好きなので悪くない。語学も、面白くはないけど許容範囲。問題は三つ目、黙ってニコニコ座っているだけ、というやつだ。これが、正直いちばんきつい。


考えてもみてほしい。なんだか難しい政治の話や、まったく知らない誰かさんの噂話を、延々と聞かされ続けるのだ。あくびひとつできない。眠くても寝られない。スマホもいじれない。気になって口を挟もうものなら、あとで間違いなくお説教である。常に秘書官がそばに控えていて、わたしが何を喋ったかを一言一句記録しているからだ。発言は全部、議事録行き。


正直、拷問である。にこやかな顔面の維持って、こんなに重労働だったのか。

お読みいただきありがとうございました。


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