第四十九話 仕事に生きる女、宣言
前回「リア充爆ぜろ」と言ったので、ちゃんと爆ぜました。
妙子とルイ君の初々しい関係は、王宮の善意と伝統によって、今日も順調に事故っていきます。
ある日のこと。
シャルティエが理事長室に入ると、王太子妃――つまり、わたしが、こう叫んでいた。
「わたしはこれから、仕事一筋! キャリアウーマンとして生きる! 仕事が恋人! それ以外は、いらないわ!」
ぐっと拳を握りしめ、虚空を睨みながら、高らかに宣言するわたし。
シャルティエは、ぽかんとした。そして、横にいたロジエに、そっと耳打ちした。
「……ロジエさん。王太子妃様、どうされたんですか?」
「いやぁ、それが」ロジエも、困り顔で首をひねる。「朝から、ずーっと、あんな感じでして。何があったんでしょうねぇ」
二人がそろって首をかしげていると。
そこへ、ひょっこりと、ドブレが入ってきた。
しかも、なぜか、めちゃくちゃニヤニヤしている。あのうさんくさい無精ひげ面を、これ以上ないほど、いやらしく緩ませて。
「いやー、王太子妃様。このたびは、おめでとうございます。もう宮廷では、お祭り騒ぎですよ」
「うるさい、死ねッ!!」
それを聞いた瞬間、わたしは顔を真っ赤にして絶叫し、理事長室を飛び出していった。
あとに残されたのは、きょとんとしたシャルティエとロジエ、そして、にやつくドブレ。
「……あの、ドブレさん」
たまらず、シャルティエが尋ねた。
「王太子妃様に、いったい、何があったんです?」
「あぁ、それがねぇ」
ドブレは、待ってましたとばかりに、語り出した。
* * *
それは、わたしが国王陛下に突撃――もとい、謁見した、その翌日のことだった。
廊下で、ばったり、ルイ君を見つけた。
例の手を握る攻防(からの握り潰され事件)以来、なんだかんだで、わたしの中ではルイ君の株はじわじわ上がっていた。気まずさはあるけど、嫌な気まずさじゃない。むしろ、ちょっと顔を見たい、みたいな。
そこで、わたしは、努めて自然に、声をかけようとした。
「あ、ルイ君。おはよう――」
その瞬間。
ルイ君が、わたしの顔を見るなり。
「……っ!!」
顔を、ひきつらせた。
そして、回れ右をして、ものすごい速さで、逃げていった。
……え。
え、なに?
何があったの? わたし、なにかした?
呆然と立ち尽くしていると、その一部始終を見ていた義叔母様が、近くにいた。
口元を手で押さえ、お腹を抱えて、ぷるぷると震えている。今にも吹き出しそうな、限界ギリギリの顔で。
「あの、義叔母様? 何か、あったんですか?」
そう尋ねると、義叔母様は、もう笑いを堪えきれない、という様子で。
今朝あったことを、教えてくれた。
お読みいただきありがとうございました。
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