第四十七話 案山子だと思え、という解決策
王族にだけ伝わる門外不出の方法。
その言葉に希望を抱いた妙子でしたが、国王ルイ十五世が語った解決策は、彼女の想像をはるかに超えるものでした。
悪気のない助言ほど、時に人の心を深くえぐるものです。
そうだよね。さすがに、公開○○がデフォルトとか、いくら何でもおかしいと思ってたんだよ。王族には王族の、ちゃんとした抜け道があったんだ。よかった。ほっとしたぁ。
「はい! ぜひ、お聞かせください!」
わたしは、身を乗り出した。
陛下は、ゆっくりと、わたしの耳元に顔を寄せ。
そして、囁いた。
「ベッドの周りに立っておる連中はな――案山子だと思え」
…………は?
今、こいつ、なんつった?
「か……かか、案山子?」
「うむ」
陛下は、大真面目に頷いた。
「ずらりと並んだ侍従も、貴族も、みーんな、ただの案山子だ。畑に立っとるだけの、人形よ。そう思えば、なんということはない。気にする必要など、まったくないわ」
ない。ないです。それで解決する問題じゃ、ないです。
「ど、どうした? そんな、妙な顔をして」
陛下は、きょとんとして、わたしの顔を覗き込んだ。
そして、わたしの反応が芳しくないと見るや、さらに、助け舟を出してきた。
「ふむ。案山子が嫌なら……そうだな、野菜でもよいぞ」
「やさ……?」
「きゅうりとか、ピーマンとか。ずらりと並んだ野菜だと思えばよい。なんなら、いっそ、畑の真ん中だと思うのはどうだ。広々とした畑の真ん中で、空の下、解放感に浸りながら、おおらかにやっておると思えば――うむ、それはそれで、なかなか乙なものかもしれん。今度、わしも試してみるか」
「な、ななななな、何を言ってるんですか陛下ぁぁ!!」
ついに、わたしの敬語が、崩壊した。
国王陛下に向かって叫んではいけない。いけないとわかっているのに、止まらない。だって、目の前のおじいちゃんが、にこにこしながら「きゅうりとピーマン」とか「畑の真ん中」とか言ってるんだもん。誰だって叫ぶ。
「ん? 何を怒っておるのだ?」
陛下は、本気で不思議そうな顔をしていた。
なぜ、わたしが怒っているのか、まったく、理解できていない。その澄んだ瞳には、一点の悪意もない。むしろ「良かれと思ってアドバイスしてやったのに、なぜ?」という、純粋な戸惑いだけがある。
それが、いっそう、腹立たしい。
悪気がゼロだから、怒りのぶつけ先がない。
「うーん」
陛下は、しばし考え込んだ。そして、何かを思いついたように、ぽん、と手を打った。
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